ニュース

「楽しさ」を学生から高齢者へ 理・修士2年山本さん 「whicker」起業

2022.08.01

「一緒にいて楽しい」を提供する。この理念を掲げ、学生ヘルパーが高齢者の生活を支援する会社「whicker」が2月に誕生した。登録した学生が「まごとも」として家や施設に赴き、身の回りの手伝いやスマホの練習といった多様なサービスを提供する。設立したのは理学研究科・修士2年の山本智一さんだ。

「まごとも」とは「孫世代の友達」のこと。特別養護老人ホームでのアルバイトを通して、「孫」世代にあたる学生に対し、高齢者がより素直に接することができると学んだという。登録した「まごとも」は30人ほどだ。京都府と滋賀県の一部で対応しており、現在まで約50件の依頼を受けつけた。

提供するサービスは、片付けや草むしりから一緒の食事や散歩まで様々で、単発の利用は30分1500円から。「介護保険は最低限の生活を保つための仕組み。それで対応できない部分をカバーできる」。施設でイベントを行うこともあり、催しを考案する余裕がない施設にとっての助けとなるほか、普段は縁が薄い学生と関わる際に、高齢者が抱く不安を払拭することにも繋がるという。一方で学生に対しても、多様な価値観を受け入れる、ものごとを前向きに考えるといった強みを得てほしいと語る。「高齢者の方との関わりを通して、学生の引き出しを増やしたい」という思いを強調した。

山本さんは立命館大学薬学部を卒業。在学中の就職活動で、企業や公務員への就職を目指すよりも、「(自分の気持ちに)素直に行動できるほうが結果を出せる」と起業を決めた。院に進学後、起業を志す学生が集まる「京大起業部」や、大学が主催するイベントに出演し人脈を広げた。

今後はサービスの全国展開を目指しており、マッチングのシステムを効率化するためアプリ開発を進めているという。また、インスタグラムやティックトックなどのSNSを運用し、whickerとそのサービスについて周知を図る方針だ。「まずは京都で広げていくことを目指したい」と目標を語った。

yamamotosan2.png

【「whicker」代表取締役の山本智一さん】