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月と火星への移住に向けて 京大・鹿島の共同研究

2022.07.16

京大の総合生存学館SIC有人宇宙研究センターと鹿島建設は5日、月・火星での居住の実現を目的とした共同研究を始めると発表した。地球環境と同程度の重力を発生させる「人工重力」の技術を利用し、生活の基盤となる居住施設や、惑星間を移動するための交通システムの構築を目指す。

人類が宇宙で生活するうえでの課題として、重力の低さが及ぼす子どもの誕生・発育への影響が指摘されていた。その対策として居住施設「ルナグラス」「マーズグラス」をそれぞれ月と火星に建設し、地球と同程度の重力空間で生活することで、地球に帰還可能な身体機能の維持を可能にする構想を打ち出した。回転による遠心力と天体の重力を利用するため、施設は建設する天体によって形状が異なるという。

同施設内には、気温や水を人工的に管理し地球の生態系を再現する「コアバイオーム」を構築する。また、地球・月・火星の間は交通システム「ヘキサトラック」で移動する。新幹線程度の大きさの鉄道車両「スペースエクスプレス」が、各惑星の衛星に設置した拠点駅、そして月・火星上にある拠点都市を結ぶという。地球から月への移動には約4日、月または地球から火星への移動には約6か月を要することから、鉄道に連結するカプセルは居住施設と同様に地球と同じ重力を保ち、防御壁を設けて宇宙放射線の影響を抑えるとした。

鹿島建設は有人宇宙研究センターの「宇宙居住研究」分野における協力企業である。21世紀後半に移住を実現することを想定したうえで、今後は施設の具体的な内容や、宇宙社会における法制度のあり方について検討していく予定だという。