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理学研 元研究員の不正認定 図や画像を加工 結論に影響なし

2022.07.16

京大は6月24日、理学研究科に在籍していたLianwei Peng元特別研究員が、2008年から12年にかけて発表した複数の論文について、不正行為を認定したと発表した。指摘を受けた大学が昨年2月から調査を進めていた。7月11日時点で京大は、執筆者に論文の撤回を勧告し、関係者2名の処分を検討しているという。

不正行為を認定したのは、元研究員が京大在籍中に発表した論文のうち5編。おもに植物のタンパク質複合体に関する研究成果をあらわしたもので、解析結果を示す図や画像11点について改ざん・ねつ造にあたる加工が認められた。不正行為はいずれも元研究員が単独で行い、共同執筆者の関与はない。京大によれば、加工は見ばえをよくするなどの意図でなされており、論文全体の結論や学術研究の進展に影響する可能性は低いという。

2020年10月、米国の学術誌「PLOS Biology」が、同誌で掲載した元研究員の論文1編について、画像の加工を指摘。同年11月には京大に通報が寄せられた。これを受けて大学は学外者を含む調査委員会を昨年1月に設置し、通報を受けた論文以外も対象として、内容の精査や聞き取りを実施した。調査は今年2月まで行われた。

不正の要因として調査委は、研究公正についての誤認と確認の不備を挙げた。元研究員は調査委の聞き取りに対し、画像の加工を「悪いこととは思っていなかった」と証言。実験の詳細な記録を怠るなど、研究データを適切に管理していなかったことも明らかになった。

責任著者である同研究所の鹿内教授は、研究員の不正は念頭になく、確認作業が不十分であったことを認めているという。不正行為を受け大学は学術マナーについて啓発を強化し、全学をあげて再発防止につとめる方針を示している。