文化

性的マイノリティへの対応を考える 文学部校舎に学生と教員ら集う

2022.07.01

文学部校舎第4講義室で6月24日、約30人の学生と教員らが集まり、京大での性的マイノリティを取り巻く問題を共有した。この「京大の性的マイノリティへの対応を変えるための集会」は、5月26日に開催された集会に続くものだ。

集会の司会を務めたのは、文学部社会学専修4回生の中村萌愛さんだ。中村さんは生まれた時に割り当てられた性別と性自認が異なるトランスジェンダーであり、男女二元論にとらわれないノンバイナリーであることをオープンにしている。学生と教員が京大の性的マイノリティへの対応の問題に取り組む必要があると考え、4月から呼びかけ、5月26日に集会を初めて開いた。

中村さんは、「京大では性的マイノリティへの対応がなされていないに等しい」と語り、特に、トランスジェンダーの排除の言説が日々再生産されていると訴える。

まず京大では、ジェンダー・セクシュアリティに関する窓口と性的マイノリティへの対応をまとめたガイドラインが存在していないことが問題だと指摘する。現状では各種制度の使用に際して手探りで質問項目を作成して教務掛や学生意見箱宛に送り、関係各所からの回答を待たなくてはならないが、回答を得られたとしても不安が尽きないという。中村さんは「これらは、本当に当事者が払わなくてはならない労力なのか」と疑問を投げかけた。

他方、多くの大学ではジェンダー・セクシュアリティに関わる窓口が存在し、大学当局や性的マイノリティを支援するサークルが、ガイドラインを作成していることも紹介した。参加者の立木康介・人文科学研究所教授は、早稲田大学のGSセンターが公開している「セクシュアルマイノリティ学生への配慮・対応ガイド(教職員向け)」を見ると「自分の配慮が不十分なことに気づき、ドキッとする」と語った。その上で、ガイド中の「その場にセクシュアルマイノリティがいることを前提として接する」という方針は「大学に多様性を根付かせようと本気で考えるなら、特に、肝に銘じておく必要があると思う」と強調した。

また中村さんは、トランスジェンダーの学生が、戸籍名ではない通称名を使うためには、「性同一性障害」の診断書を提出する必要があることも問題として挙げる。「男女二元論」を保持している「性同一性障害」の診断に依拠した京大の制度は、自由と調和を基礎とする基本理念に反するのではないかと主張する。

さらに、教員による「さん」と「くん」の恣意的な呼び分けも問題であると指摘した。中村さんは、そのような教員こそがトランスジェンダーの排除の言説を再生産している主体であると非難する。

その他にも、性的マイノリティや女性を取り巻く問題として、中村さんは▼同意なく他人の性のあり方を暴露する「アウティング」▼女性教員の割合の低さも、看過できないとして、「こうした問題にも向き合っていく」と宣言した。

中村さんは集会の途中で、「当初は一人で活動していると感じていたが、集会を開いたことによって仲間がいることがわかって嬉しかった」と語った。また、組織として当事者に寄り添ったガイドラインの原案を作成し大学当局に提出する意欲を示す。

集会の最後には、組織の名称や運営方針などについて、参加者間で活発な意見交換がなされた。次回の集会は7月8日に開かれ、組織の名称を決定する。当事者が安心して話せる場所を提供しつつ、問題の本質を共有する啓発活動を通じて当事者と非当事者の垣根を越えた連帯の輪を広げ、京大の制度を変えることを目指すという。(岡)

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【司会の中村萌愛さん(参加者提供)】