文化

杉山弘教授 最終講義 核酸化学を研究

2022.04.16

3月末で定年退職した杉山弘・理学研究科教授は3月11日、「核酸のケミカルバイオロジー」と題し、最終講義をオンラインで行った。講義内容は、化学の道に入った理由から始まり、DNAの化学反応性やDNAオリガミ、遺伝子スイッチといった自身の研究の詳細に及んだ。

杉山氏が化学の道に興味を持ったきっかけは、中学校1年生のときに、上智大卒の理科教員の紹介で、同大学で1週間ガラス細工の練習をしたことだという。その際にガラス器具が並ぶ実験室を見て憧れを持ったと述べた。当時は化学の研究にガラス細工が必須だとされており、その後も家で器具を揃えて練習したと話した。京大に入学後、1回生時の化学の講義が面白いと感じられず、研究室の門を叩き、実験に精力的に取り組んだ。3回生の時には最初の論文を出したという。

杉山氏は、DNAオリガミの研究についても紹介した。DNAオリガミとは2006年にカリフォルニア工科大学のポール・ロスムンド氏が開発した技術である。長い一本鎖DNAに短い相補的DNA鎖を混ぜて加熱や冷却を行い、長鎖を一筆書き状に折りたたんで短い相補鎖で固定することで、あらかじめ設計したDNAナノ構造体と同じ構造を作成できる。この技術で、長方形、スマイルマークなどの形を自在に作ることが可能だ。

杉山氏は、「DNAフレーム」と呼ぶ額縁のようなものを作成し、その中心部にある取り替え可能な橋で酵素反応やDNAの構造変化を起こして観察したという。例えば、DNAフレームを用いたメチル基転移酵素の解析では、張った状態の64塩基対と緩んだ状態の74塩基対を導入し、74塩基対の配列がよりメチル化されやすいことが判明した。杉山氏は、「このような実験系でないと調べにくいことが、明らかになった」と述べた。他にも、組み換え反応の1分子観察の研究、4つのヌクレオソームをDNAフレームに入れた上でその相互作用を解析した研究などについて解説した。

杉山氏は講義の最後に、視聴者へのメッセージとして「少年老い易く学成り難し」という言葉を紹介した。「皆さんの支えがあって研究が続けられた」と述べて、講義を締めくくった。

杉山氏は、核酸化学が専門。京大工学部を卒業し、米ヴァージニア大学博士研究員、東京医科歯科大学教授などを経て、2003年から京大理学研究科教授に着任した。人工遺伝子スイッチの創成、DNAオリガミによる1分子の可視化の研究で知られる。当日は、約200名がオンラインで視聴した。(凜)