100年の伝統をつなぐ「使命」 交響楽団 2年ぶりコンサートへ(2021.12.16)

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京都大学交響楽団は、「京大オケ」の名称で親しまれる京大唯一の公認オーケストラだ。団員数は200人を超え、コロナ禍以前は年2回の定期演奏会のほか、演奏旅行や卒業式・入学式での演奏など盛んな音楽活動を行っていた。しかし、新型コロナの影響で昨年春に活動停止を余儀なくされ、1916年の創設以来初となる演奏会の開催中止を決断した。現在は、12月21日・23日に約2年ぶりとなる定期演奏会開催を控えている。コロナ禍の活動と演奏会開催への思いについて、代表の今城有香子さん(理・3回)とホルン奏者の鳥海奏子さん(法・2回)に話を聞いた。(桃)・(航)

コロナ禍での活動

昨年4月に課外活動が全面停止を余儀なくされてから約1年間、団体としての活動は停止し、集会所外での個人練習しかできない状況が続いた。一定の条件のもとで集会所が利用可能になった時期もあったが、その間も活動に参加できるのは京大生に限定されており、「他大生と一緒でないと活動しない」という当時の代表の方針で、団体としての活動は行わなかったという。今年7月に団体練習の再開を決断してからも、練習場所の利用時間や収容人数に制限が課され、思い通りに練習できない状態が続いた。

7月に代表に就任した今城さんは、練習環境を改善するため大学へ要望書を提出した。それにより人数や時間の制限が緩和され、現在は1人あたり6時間・団体としては集会所が開いている朝9時から夜8時半まで練習場所を利用することができる。しかし、コロナ以前と比べると、それでも満足な練習時間が確保されているとは言い難いそうだ。

練習再開に当たって「感染症対策係」を設置し、大学に提出する要望書の作成や練習場所の割り振りなどを行っている。また、ヤマハや東京都交響楽団が示した実証実験をもとに、「弦楽器は1㍍、管楽器は1・5㍍」という奏者間の距離の目安を定めた。フルート奏者の口元にプラスチックのガードを取り付けたり、管楽器奏者が演奏していない間はこまめにマスクを装着したりといった飛沫対策も実施している。

京大生のみでの開催

京大オケは、現役団員(3回生以下)の約4分の1を他大生が占めている。しかし、大学から他大生を含めた活動許可が下りない現状を踏まえ、今回の演奏会は京大生のみで開催することを決定した。団員に対しては、その旨を決定事項として伝達したという。決断の背景について、今城さんは、「今回が京大オケの伝統を引き継ぐ最後のチャンスと考えたことが大きい」と話す。この演奏会を中止にすると現役団員に演奏会経験者がいなくなり、事務方の作業だけでなく、京大オケが守り引き継いできた音楽への姿勢を継承することも難しくなるという。

一方で、他大生が参加できないことによる影響は大きい。今城さんは、他大生の京大オケへの帰属意識が低下することに強い危機感を抱いている。また、演奏会に参加する京大生も、技術のある他大生に代わって経験の浅い団員を登用することへの不安を抱えるほか、人手が減り1人が演奏する曲数が増えて負担が増加している。他大生からの団費の回収がなくなったことなどによる財源不足の問題もある。演奏会開催に向け、運営・演奏面で様々に尽力する団員たちへは感謝の念も口にした。

他大生に関する方針については、上回生と下回生の間で意識の隔たりも感じるそうだ。今城さんによれば、「京大オケとしての活動期間が短い1、2回生の中には、団体への帰属意識より他大生との個人的な繋がりを強く感じ、他大生と一緒でなければ演奏会を開きたくないと考える人が多いように思う」という。加えて、練習内外で共有する時間が短いことで、厳しい練習もいとわず音楽の質を追求する京大オケの姿勢やそこから生まれる魅力を下回生に伝えきれていないことも懸念している。今回の演奏会は、下回生にそれらを伝え、団員としての意識を共有する意義もあると考えているそうだ。

奏者の声

ホルンを担当する鳥海さんは、1日6時間という現行の利用制限について「できればもっと使いたい」と話す。1年間に渡り団体としての練習ができなかったブランクを埋めるため、今まで以上の練習時間を必要としているそうだ。今の限られた練習環境でこれまでの演奏レベルを保つことができるのか不安も感じているという。

京大生のみでの演奏会開催に踏み切ったことについては、伝統をひきつぐための瀬戸際の判断であったことに理解を示しつつも、「今後の京大オケのことを考えると他大生と一緒にやりたかった」と歯がゆさをにじませた。京大生だけで演奏会を作り上げるなかで、多様な背景を持つ他大生から受ける刺激や学びの重要性を実感しているという。今後については「先を見据えつつその時々でベストな判断をしていくしかない」と述べた。

鳥海さんは、今回の演奏会を開催にこぎつけられたのは上回生の努力あってのことであり、今できる最大限であったと考えている。「演奏会を開く以上は、お客様に楽しんでもらえるだけの音楽を提供したい。妥協はしたくない」と意気込みを語った。

今後について

演奏会実施に加え、大学から来年春の卒業式・入学式での演奏依頼が入るなど、オーケストラとしての活動の幅は少しづつ広がってきている。他方、他大生の参加について先が見えない状況で、演奏会の形式や練習体制については引き続き検討していく必要があるという。

今城さんは、演奏会開催により「ひとまず伝統を繋ぐことができた」と安心感を口にしたうえで、「頑張ろう楽しもうというよりも、使命感が強い。京大オケの伝統をつなげるのと同時に、芸術文化活動としての音楽を団員や世の中に伝えていければいいと思う」と率直な思いを語った。

演奏会は21日京都・23日大阪の会場で開かれる。対面では観客を入れず、オンラインのライブ配信を行う予定だ。オンラインチケットは京大オケのホームページから購入することができる。開演時間は19時、購入期限は演奏会当日の18時まで。

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