企画

〈帰省企画〉お土産送ったら帰省した気ぃせえへん?

2020.05.14

新型コロナウイルスの収束に向け、地元に戻らず家族にも会えないまま、実感の乏しい連休を終えた読者は少なくないだろう。そこで、せめてお土産をやりとりすることで、気分だけでも帰省を満喫できないかと、3人の編集員が模索した。連休を過ぎた今からでもできることはある。参考になれば幸いだ。(編集部)

支倉焼

当初私は、連休を利用した帰省を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行を考えて取りやめることにした。京都にいながら、帰省気分を少しでも味わうために、地元である宮城県に戻ったときにいつも食べている支倉焼を取り寄せてみた。

支倉焼は、クルミが入った白あんが皮の中に包まれている和菓子である。宮城県の名産やお土産品として全国的な知名度がある牛タンや萩の月に比べると、あまり有名ではないが、地元では多くの人々に親しまれている。「支倉」とは、17世紀前半に、伊達政宗の命令を受けて、通商交渉のためスペインに渡航した支倉常長のことだとされる。

近年のウイルス感染症の世界的流行に関して、世界中を人々が行き来するようになったことが理由の1つであると、しばしば指摘される。支倉常長は、日本の大使として初めて太平洋を横断したとされる人物であり、このコロナ禍の中で支倉焼を食べることで、若干複雑な気持ちになった。しかし、久しぶりに食べるその味は、甘く、文句なしにおいしかった。新型コロナウイルス感染症の流行が収束し、夏休みには安心して地元でこのお菓子が食べられるよう強く願った。(凜)

懐紙マスク

京都からお土産を送るのもいい。おすすめは懐紙で作るマスクだ。懐紙は、主に茶席で茶菓子を置いたり指をふいたりするのに使われるほか、ティッシュやメモ用紙、ポチ袋のような役目も果たす。着物で過ごすのが一般的だった頃には、多くの人々が懐(ふところ)に入れて携帯していたという。そんな懐紙の新しい使い方として、左京区岡崎に店を構える懐紙の専門店「辻徳」が、4月末から手作りマスクキットを販売している。

手頃な価格のお試しキットを取り寄せてみたところ、簡単に作ることができた。キットには大小3枚ずつの懐紙に加え、耳かけのゴムと鼻の部分に入れるラッピングタイそれぞれ3セット分が入っている。懐紙にうっすらと書かれた線に沿って折り進め、両側をテープで止めれば、一般的な使い捨てマスクと比べても遜色ない見た目に仕上がった。つけてみると、隙間のできにくい設計で顔にしっかり密着する。素材が和紙なので息苦しさを心配したが、呼吸に支障はない。これがあればマスク不足をしのげるだろう。

辻徳は1910年に辻商店として創業し、京都で製紙業を営んできた。様々な色や模様の懐紙のほか、複雑に織り込まれていて形を自由に変えられる紙皿や、手織りの紙布を用いたアクセサリーなどを販売している。当面の間は店舗での販売を休止し、通販のみで営業している。(村)

◆商品情報
辻徳「懐紙で作るマスク」
お試しキット(大小3枚ずつ)…330円
小キット(30枚)…1100円
大キット(30枚)…1320円
※付属のゴムとラッピングタイを使い回し、懐紙を交換する。大・小キットには紙テープもついている。
※サイズのイメージは、大>市販の使い捨てマスク>小。

抹茶カプチーノ

せっかくだから懐紙と一緒にお茶も送りたい。そこで、北大路にある山本園茶舗の「抹茶カプチーノ」を取り寄せてみた。宇治茶専門店の山本園茶舗が、「簡単に作れる本物の味」をコンセプトに、厳選した茶葉を使ってカプチーノに仕上げたという。

作り方は粉末にお湯を注いで混ぜるだけ。まさかそんな回転寿司の緑茶みたいに、と疑いつつかき混ぜるうちに、お茶席でいただく抹茶のような泡がたってきた。実際に飲んでみるとまろやかで、あの苦みが苦手な人でも飲みやすい。一方で、抹茶の味もしっかり出ていて飲みごたえがある。

山本園茶舗は1859年の創業以来、宇治茶を作り続けてきた。こちらも当面の間、店舗での営業を見合わせており、通販のみ対応している。抹茶カプチーノ以外に、ほうじ茶カプチーノのほか、煎茶などの茶葉や濃茶用の抹茶もオンラインショップで販売している。(村)

◆商品情報
山本園茶舗「抹茶カプチーノ」
6本入り…540円+送料
12本入り…1495円(送料込みのセット料金)
※スティック1本で1杯分

京大新聞 バックナンバー

今年のゴールデンウィークは帰省ができなかった。本当であれば、神奈川の実家に帰って両親に顔を見せ、「元気にやってるよ」と安心させてあげたい。しかし、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の状況を見れば、この状況で帰省するのはよくないだろうと思う。京都から神奈川に帰るだけでも感染リスクは高まるし、自分が感染していた場合、ウイルスをほかの人に移してしまうかもしれない。なにより怖いのは、実家の両親や兄弟を感染させてしまうことだ。
そういった理由もあり、今年は帰省を見送った。だが、やはり家族に自分が元気に過ごしているのだということを伝え、安心させてあげたい。電話をかけようかとも思ったが、どこか恥ずかしくてそれもできなかった。そこで、実家に贈り物をしてみたらよいのではないか、と考えた。しかし、贈り物と言っても貧乏学生の私には高級なお菓子など買って送ることはできない。

そんなとき、とても良い考えが私の頭に浮かんだ。
「そうだ、京大新聞を送ろう。」
私がこの状況の中でも元気に取り組んでいることの一つ、それが京大新聞の作業だ。課外活動の自粛要請を受け、対面活動が必要となる紙面での発行は休止しているものの、オンラインでの記事の配信・会議は続けている。実家の家族にも自分の書いた記事を読んでもらい、元気を出してもらいたい!

早速、私は直近で自分が書いた記事のURLをラインで母に送った。返事は・・・、「既読無視」であった。(濁)

―――――
何を送るかは様々な選択肢がある。品物の形でのお土産に関しては、受け取る側だけでなく、営業の縮小を余儀なくされている店舗の助けにもなる。一方で、オンラインでの買い物の増加により、宅配業者への負荷が懸念される。その兼ね合いは悩ましいが、帰省という特別な機会に絞ったうえでなら、贈り物のやりとりは前向きに捉えられるだろう。地元から取り寄せるもよし、こちらから送るもよし、無視を恐れずメッセージを送るもよし、読者のみなさんも帰省の気分を味わう方法を考えてみてはいかがだろうか。

5月14日8時配信