企画

自炊への第一歩 ~一人飯特集~

2019.09.16

もうすぐ夏休みが終わろうとしている。この春から一人暮らしを始めた新入生の皆さんは、どのような食生活を送っているだろうか。勉強やサークル活動に追われて、ついコンビニ弁当やファストフードで済ませてしまう、という方も多いだろう。今回は、一人暮らしを始めたばかりの編集員2人でいくつか料理を作ってみた。この暑い季節でもお手軽に作れるレシピを紹介するので、これをきっかけにぜひ自炊に取り組んでみてほしい。(編集部)

【内容】

今回は、暑い季節であることを考慮して、なるべく火を使わずにすみ、材料も少なく、短時間で作れる料理を3品紹介する。
ちなみに、この3品に共通して使われている食材がある。豆腐だ。豆腐は伝統的な健康食品である。骨粗鬆症やガンの予防、ボケ防止などさまざまな効果を持つ。大豆由来のタンパク質を豊富に含み、同じタンパク源である肉に比べて安いので節約にも役立つ。消化吸収もよく栄養を効率的に摂取することができる。タンパク質の次に多く含まれている植物性の脂肪も、生活習慣病の原因となるコレステロールを減らす働きを持つ。このため豆腐は近年、海外でも肥満予防につながるとして注目されている。また、豆腐に含まれるカルシウムやビタミンB類には気持ちを落ち着かせる効果がある。新学期で何かと落ち着かない学生にはぜひとも食べてほしい食材といえる。
普段自炊をしていないという人は、ここで紹介した料理を試しに作ってみてほしい。きっとそれが自炊への大きな一歩となるはずである。

編集員の食生活

京大には一人暮らしの学生が多いが、下宿生のうち自炊を毎日しているのは2割にも満たないというデータもある。では実際、京大生はどのような食生活を送っているのだろうか。今回は日常的に自炊をしている編集員とめったに自炊をしない編集員が、1日の食生活を紹介する。

事例1 自炊上級者の例

私は毎日自炊をしている。食費は酒類を含み月2万円ほど。もちろん、毎日手の込んだ料理を何品も作ることは大変で非現実的である。私は面倒な時はうどんを茹で、九条ネギとゆで卵とポン酢で頂く。15 分もかからないうえ腹持ちがいい。通常時の私の食事は、お米、焼き魚かお肉、お味噌汁である。調理時間は20 分ほど。魚はホイルを敷いて火にかけるだけ。お肉は調味料を混ぜて焼くだけの生姜焼きか、それすら面倒なら焼き肉のたれを混ぜて焼くだけでも美味しい。お味噌汁は、野菜不足を補うため具沢山にしてもよし、鯖缶を混ぜるとボリュームとコクが出る。出汁からとるのが一番美味しい。大学に入るまでは包丁を殆ど握ったことがない私だが、今では自炊が日常になっている。簡単、安価、美味、そしてコンビニ飯では得られない心の満足感。自炊を躊躇っている君も、いったん始めてしまえばその魅力に気づくことを保証しよう。(竹)

事例2 自炊初心者の例 私はいつも午前10 時過ぎに起きている。朝食をとるには遅すぎる時間だが、空腹感はあるので、コンビニでパンを買って食べる。ほとんどの日がチョコスティックパンだ。寝起きにご飯を作るのは面倒なので、自分で作ることはない。朝食をとるのが遅いので、基本的に昼食は食べず、夕方、お腹がすいてきたころに、コンビニで買ったパンを食べる。夕方から夜にかけてはサークル活動があるので、それが終わった深夜12 時から1時にかけて、ラーメン屋に行ったり、コンビニで買った弁当を食べたりする。そのあとは、大体テレビを見ながらコンビニで買ったお菓子を食べる。このような食生活を送っていることに後ろめたさを感じつつも、自炊をする気はなかなか起きない。 (濁)

レンジで簡単 豆腐ハンバーグ

材料(2人前)

・合挽肉………………………………100㌘
・木綿豆腐…………………………約150㌘
・玉ねぎ………………………………1/2個
・卵…………………………………………1個
・しょうゆ……………………………小さじ2
・コンソメ………………………小さじ1/2
・パン粉………………………………大さじ5
・こしょう…………………………………適量

作り方

主菜としてレンジで作れる豆腐ハンバーグのレシピを紹介する。豆腐ハンバーグは、挽肉に豆腐を混ぜてかさましし、油分の多いハンバーグをヘルシーにしたものである。自炊初心者にも作りやすいように、ここでは火は使わずレンジだけで作れるレシピを考えた。ちなみに挽肉はどの種類でもよい。
下準備として、玉ねぎ2分の1個をみじん切りにする。
次に玉ねぎはひき肉に比べて火が通りにくいので、耐熱容器(ジップロックのタッパーや深さのある皿など)に平らに入れ、600㍗のレンジで1分加熱する。加熱した玉ねぎが半透明になったら、同じ容器にそのほかの材料を全て入れてスプーンかさいばしで混ぜる。
その次に混ぜた材料が入った容器を容器ごと電子レンジに入れて、600㍗で6分加熱する。ここでできあがるハンバーグは、楕円に形成して両面をフライパンで焼くような一般的なハンバーグとはかなり違った外観になる。しかし味は本格的でさっぱりしているので、ぜひ試してみてほしい。また、レシピは料理研究家の五十嵐ゆかりさんのものを参考にさせていただいた。

調理した感想

・普通のハンバーグに比べてカロリーも低そうで、味もシンプルでおいしかった。ポン酢などの調味料があると、さらに良かったかもしれない。肉をこねる作業、それに伴う洗い物が少し面倒だった。

編集員の感想

・味は悪くないが、ベタッとしていてハンバーグらしさが少ない。フライパンで表面に焼き色をつけ、ソースなどを工夫したら、かなり豪華になって満足感も増すはず。
・だいぶ薄味だが、豆腐の味が感じられたのはよかった。

万願寺とうがらしの肉炒め

材料(2人前)

・万願寺とうがらし………………………5本
・木綿豆腐…………………………約150㌘
・豚バラ………………………………100㌘
・料理酒………………………………大さじ1
・しょうゆ…………………大さじ1と1/2
・さとう…………………………小さじ1/2
・かつおぶし………………………………適量

作り方

次に材料も少なくさっと作れる炒め物を紹介する。今回使用した万願寺とうがらしとは、夏が旬の京野菜である。とうがらしと名はついているものの、それほど辛みはなく甘くてジューシーな野菜だ。大抵のスーパーに売られているので、入手は特に難しくない。
まず、万願寺とうがらしのヘタを取り、縦に半分に切って中の種を取り除く。これはピーマンの種の取り方とほとんど同じである。その後3㌢幅に切る。また豆腐を丸ごと容器から取り出してキッチンペーパーで包み、600㍗の電子レンジで1分加熱して水切りをする。その後一口大に切る。水切りを行うことで豆腐のうまみが凝縮され、形も崩れにくくなるので、炒め物で豆腐を使う際にはぜひやってみてほしい。
次に強火で豆腐に焼き色をつける。いったん豆腐を取り出し、中火にして豚バラを炒める。火が通ったら、万願寺とうがらしと豆腐を入れる。全体的に火が通ったら、調味料を混ぜてさっと炒め、最後にかつおぶしをまぶして完成である。ちなみに、万願寺とうがらしはピーマンやゴーヤでも代用できるので、旬が過ぎてもぜひ作ってみてほしい。

調理した感想

・唐辛子を切るのに苦戦した。普段料理をしないので、種を取るという作業がかなり面倒に感じた。また、先に調味料を混ぜ合わせておかなければならないのを忘れてしまい、豚バラ肉を炒めている最中にそれをすることになって、慌ててしまった。
・自炊をしていないと、唐辛子を食べる機会はあまりないので、本当においしいのだろうかと疑問だったが、実際に食べてみるととてもおいしかった。また作ってみたいと思える味だった。
・作り方自体はシンプルでやりやすい。肉を切るのを忘れた。

編集員の感想

・かなりおいしかった。万願寺とうがらしの緑が鮮やかで見た目も味も良い。
・おいしかった。下宿メシの定番という感じで、お手軽そうだ。

やみつき ツナマヨチーズ丼

材料(2人前)

・ツナ………………………………………1缶
・絹ごし豆腐………………………約150㌘
・とろけるスライスチーズ………………1枚
・ごはん……………………………茶碗1杯分
・マヨネーズ…………………………大さじ2

作り方

主食に包丁も火も使わないで作れる丼物を紹介する。
まずはどんぶりに盛ったごはんの上に豆腐を水切りせずにのせ、箸で崩しながらよく混ぜる。マヨネーズも大さじ1だけ加えてまんべんなく混ぜる。豆腐をごはんに混ぜ込むことで栄養が豊富になり、かさも増す。
次にツナに残りのマヨネーズ大さじ1を混ぜてツナマヨを作る。脂っこいものが好きな人はツナの油を残し、苦手な人は油を切るのがいいだろう。
最後に電子レンジで加熱調理をする。豆腐とごはんを混ぜたものの上にツナマヨをのせとろけるチーズをちぎって散らす。600㍗のレンジで4分加熱して完成だ。

調理した感想

・簡単に作ることができた。混ぜるだけ、レンジでチンするだけ、というのは自炊をしない人にとってはかなり手が出しやすい。こういった料理から徐々に自炊を始めるといいなと思った。
・食べてみると、結構病みつきになる味で、箸が進んだ。

編集員の感想

・白ご飯が好きなので、ぼくは白ご飯のまま食べます。
・見た目はちょっと悪かった。
・忙しい時でも簡単に作れそう。

編集後記

今回の企画を思いついたのは、企画者自身一人暮らしを始めたもののなかなか自炊らしい自炊ができず焦っていたからだった。調味料や調理道具をそろえるのが面倒だったうえに、学食のメニューやコンビニの商品が思いのほか充実しており、入学後しばらくは自炊の必要性を感じていなかった。しかし、ある時1週間同じ食材を食べ続けた結果、体調を崩したので、このままではいけないと思うようになった。同じころ、外食ばかりしているせいでお金が足りていないことにも気づいた。そこで栄養の偏りが少なく健康的な料理を自力で少しでも安く作りたいと考えたのである。また企画者と同じような境遇で食生活に不安を抱えている京大生も多いはずである。そのような人たちの一助になればと自炊企画を考えた。
企画を通して自炊にはいくつかのポイントがあるのではないかと感じた。まず調味料が全くない状態で自炊をするのは難しい。包丁やまな板がないと自炊をするハードルはさらに上がる。近所にスーパーがあるかどうかも自炊のしやすさに影響する。また周囲の自炊ができる人を観察すると家族が料理上手でよく料理するのを見ていた、あるいは手伝っていたという人が多かった。結局のところ料理は人から教わるのが一番なのかもしれない。
自炊のしやすさには様々な要因が影響するが、自炊を始めるのに遅すぎるということはない。この企画が自炊に目を向けるきっかけになれば幸いだ。