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京大病院 薬剤誤投与で患者死亡 病院長 謝罪「ミス重なった」

2019.12.01

京大医学部附属病院は11月19日に記者会見を行い、薬剤の誤投与により入院患者が死亡したと発表した。本来の6・7倍となる濃度の炭酸水素ナトリウムを過剰に投与したという。さらに、患者が痛みを訴えても医師が診察しなかったことや、心停止後に必要な薬剤の投与が遅れたことも明らかになった。宮本亨・病院長は「二重三重のミスが重なり、最悪の事態を招いた」と述べて謝罪した。

京大病院によると、亡くなった患者は心不全のため入院していた成人男性で腎機能障害を患っていた。CT検査の際、腎臓への副作用を抑える目的で炭酸水素ナトリウムを投与することになったが、担当医が誤って本来の6・7倍となる濃度の製剤を発注した。量についても誤って全量投与と指示したため、検査後1時間の点滴で終了するべきところを3時間にわたって投与が続けられた。

投与中、患者は血管の痛みを訴えて医師を呼ぶよう看護師に求めた。しかし担当医は手術中で、代わりに応じた医師が看護師に様子を観察するよう指示して診療を行わなかったところ、CT検査から3時間後、患者は心停止に陥った。駆けつけた医師が蘇生処置を施したが、心臓マッサージが原因とみられる肺からの出血が確認された。この際、患者が服用していた抗凝固薬の作用を抑える薬剤の投与が必要だったが、それに気づくのが遅れたという。6日後、患者は出血性ショックによる多臓器不全で死亡した。

宮本院長は「二重三重のミスが重なり、患者の訴えを的確に受け止めることができず、最悪の事態を招いた。期待を裏切る結果となり申し訳ない」と述べた。再発防止策として京大病院はマニュアルを改定したほか、薬剤の発注システムに警告が表示されるよう改めたという。このほか、患者からの訴えがあれば対応を慎重に見直すよう徹底するとしている。

なお、事故が発生した時期や患者と担当医の年齢などについて京大病院は、遺族の意向を受けて公表していない。事故直後に調査委員会を設置し、調査の終了を受けて今回発表に至ったという。京大病院では昨年、手術中の誤対応で患者が死亡し、2017年には薬剤の過量投与による死者が出た。対策は十分かと記者から問われた宮本院長は「度重なっていることは申し訳ない」と謝罪し、「事例を共有して反省する場を設け、連携を強化して安全な治療に努める」とした。