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琉球民族遺骨の所蔵認める 京大総博、衆院議員の質問書に回答

2017.11.01

京都帝大教員が持ち出し

京都大学総合博物館は、1928年から29年にかけて京都帝国大学医学部の金関丈夫助教授が持ち出した琉球民族の遺骨について、2017年現在も所蔵していることを認めた。衆院議員の照屋寛徳氏が琉球民族の遺骨について文科省に問い合わせたことがきっかけとなった。これまで京大は、遺骨の有無について明らかにしていなかった。

博物館によると、遺骨は現在、プラスチック製の箱に収納され、収蔵室で保管されているという。目録は作成しておらず、現在調査を進めているところだとしている。

遺骨は、金関氏が1928年から29年にかけて行った発掘調査で沖縄県今帰仁村の百按司墓などから持ち出した。金関氏は「人骨標本」として59体分の遺骨を持ち出し、のちに、26体を京都帝大へ、残り33体を台北帝大に寄贈した。

京大博物館が所蔵を認めたのは、照屋氏が文科省に問い合わせたことが契機となった。照屋氏は8月29日、国政調査権を用いて、京大博物館の琉球民族遺骨に関する情報の開示を文科省に求めた。文科省は京大へ調査をして回答書をまとめて9月15日に照屋氏に提出した。この調査で京大は当該遺骨の保管を認めた。これまでは、遺骨保管の有無を明らかにしてこなかった。8月23日には市民団体の「琉球民族遺骨返還研究会」が京大に公開質問書を出し、遺骨の保管について尋ねたが、「個別の問い合わせには応じかねる」と回答を拒否していた。今回初めて回答した理由について京大博物館は、「文科省から回答を求められたため、国立大学法人として答える義務があった」と、本紙の取材に対して説明した。個別の問合せには今後も応じないという。

京大同様に金関氏の持ち出した遺骨が寄贈された台湾大学(旧台北帝大)は17年8月、遺骨の保有を認め、沖縄側に返還する意向を示した。台湾大の意向を受け、今帰仁村教育委員会と沖縄県教育委員会は返還に向けて大学との話し合いを始めている。一方で京大は、今後返還に応じるかを明らかにしていない。今帰仁村教育委員会は本紙の取材に対し、「いずれ京大とも話し合いをしたい」と話している。