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教員免許更新制度に「不安」 高校教員・学生にアンケート 教育学の研究生

2008.04.01

2009年4月より導入される教員免許更新制度について、文部科学省や教育委員会、高校教員や教職AC課程の大学生などに対して実施されたアンケート調査の結果が発表された。アンケートを実施したのは京都大学教育学研究科の研究生で静岡県立浜北西高校教諭でもある佐藤利幸氏。教育学研究科では毎年現場の教員を研究生として受け入れる試みを行っている。

高校教員・大学生に対する調査は昨年秋に行われ、26府県67校の1643名の高校教員および、関西の5大学(京大、京都産業大、大阪府立大、大阪教育大、兵庫教育大)の491名の学生から回答を得た。

高校教員に対する調査では「免許更新制についてどのように考えるか」(図下)との質問に対し、反対が59%、賛成26%のうち23%は「課題はある」としており、多くの現場教員が更新制に課題があると見ていることがわかった。

反対の理由について一番聞かれた声は、この制度が免許の「更新」のためのもので、「向上」につながらない可能性がある、というものだったと佐藤氏は話す。

また、大学生に対する調査では、同じ質問に対して反対を示したのは26%だったが、「免許の失効(=失職)に対して不安があるか」(図上)という質問に対しては68%が不安だと答えた。調査時の段階で教員になる意志が未定の学生ほど、不安・反対傾向が高いことも調査で判明しており、佐藤氏は更新制導入により教員志望者減少に拍車がかかるのではないかと懸念を示した。

なお、その他の質問「10年間という有効期間をどう思うか」「30時間の更新講習をどう思うか」に対しては半数以上の学生は適当と答えており、もっと短くするべきと答えたのはそれぞれに対し30%、40%ほどだった。

佐藤氏は更新制度に関して、講習が教員にとって大きな負担となることは避けるべきで、費用面で充分な支援を行い、内容の質も担保しなければならないと話す。また、更新講習は大学で行われる予定であるため、講習を現役教員と学生の交流の場とするのが望ましいと提案した。教員を目指す学生が広く知識と情報を得る機会とし、免許更新講習を教職課程の単位にも適用できる制度を実現してほしいとも話す。

アンケート結果は調査に協力した教育委員会など各機関に提出される。

佐藤氏は「制度は導入が決定しているが課題も残っている。決まった以上は前向きに検討して欲しいので、現場の声を多く反映したこの結果を参考にしてもらいたい」と述べた。

《本紙にグラフ掲載》