企画

京都の秋をめぐる

2016.12.01

昨年の紅葉は色づきが悪かったともっぱら評判だ。今年はどうなのか。また不作なのではないかと心配する声もあるが、行ってみなければ分からない。編集員が京都市各地の紅葉スポットに赴いた。今回は特別にカラー紙面でお送りする。(化・賀)

真如堂 京大近くの穴場スポット

京大吉田キャンパスから東に自転車で10分、白川通にある市バス錦林車庫のそばに真如堂はある。あまり有名ではないかもしれないが、京大の近くということもあり、授業の空きコマに足を延ばす京大生も少なくない。

真如堂は正式には真正極楽寺といい、比叡山延暦寺を本山とする天台宗のお寺である。普段は静かで落ち着きのあるお寺であるが、紅葉シーズンになると多くの人が訪れる。私が訪れた22日は平日だったので、大混雑というほどではなかったが、それでも団体のツアー客でにぎわっていた。

境内は広く、あちこちにもみじの木がある。境内の紅葉を順番に撮って回っていると、気が付けば1時間半ほど経ってしまっていた。メインの建物には本堂と三重塔の2つがあり、三重塔と紅葉を一緒に収めた写真がネット上でよくみられる。訪れた時は天気がよく、太陽に照らされた紅葉がきれいな赤色をしていた。とはいえ、境内の全てのもみじの木が同時に赤く色づくことはない。私が訪れた時は紅葉シーズンの終盤ということもあって、三重塔周辺のもみじはすでに散っていたが、散ったもみじでできた赤い絨毯はかなり見応えがあった。

最寄りは市バス「真如堂前」または「錦林車庫前」、そこから徒歩8分。銀閣寺や哲学の道からも徒歩圏内である。拝観料は大人500円、高校生300円、中学生200円、小学生以下無料。なお、拝観料は本堂や庭園に入る際に必要で、境内の紅葉を楽しむだけであれば不要だ。

沢ノ池 人知れず水面に揺れる秋の色

国道162号線から北山に入ってすぐ、右手に見える山を沢山(さわやま)という。その麓に沿ってしばらく行ったところで東海自然歩道に入り、沢山の中心部に向かうこと数十分――「沢ノ池」が姿を現す。

広々とした水面に、淡く色づいた山並みと空が映りこむ。赤とんぼが岸辺を飛び交い、時折遠くからトビの鳴き声が響いてくる。街の喧騒と無縁な沢ノ池では、そんな風景を心静かに味わうことができる。市街地から車で小一時間のところにある、ちょっとした秘境だ。

人足を遠ざけている要因は悪路にあるに違いない。愚かにもロードバイクに乗っていった私は、国道を外れた途端にそれを痛感した。隆起しヒビ割れたアスファルト、散乱する砂利石、車1台通るのがやっとの狭い道幅。時期によっては倒木や崖崩れにも気を付けなければならない。車なら車幅の小さいもの、自転車ならマウンテンバイクを選ぶのが賢明だ。

しかし、道中には魅力もたくさんある。国道162号線沿いには綺麗に紅葉した木々が立ち並んでおり、中でも市バス「高雄」停留所北側の駐車場に立つ大きな一本もみじには一見の価値がある。さらに見逃せないのが「菩提の滝」だ。東海自然歩道に沿って流れる菩提川に形成された滝で、落差約10㍍とけっこうなもの。「菩提の滝」とある標識を目印に自然歩道を外れて小道を歩き、途中を流れる小川を岩や丸太伝いに渡りつつ数分進めば拝むことができる。薄暗いなかに白く輝く滝と、澄んだ水に満たされた滝壺が美しい。

道端の紅葉や滝を見て周りつつ、最後は沢ノ池でゆるりと心身を休める。どこもかしこも混雑しがちな京都市にいながら、優雅な秋の一日を過ごせるだろう。

貴船神社 道中にあふれる紅葉

京都市の中心部から離れ、北の静かな山の中にあるのが貴船神社だ。京都では有名な観光地のひとつであり、1年を通して訪れる観光客は多い。全国に約450社ある貴船神社の総本社であり、縁結びの神社としても有名である。

私は夕方に貴船神社へと向かった。叡山電鉄出町柳駅から30分ほどで最寄り駅である貴船口駅に着く。途中、市原駅~二ノ瀬駅間には約250㍍のもみじのトンネルがあり、速度を落とした電車の左右の車窓から紅葉を見ることができた。夜にはライトアップされ、また昼間とは違った風景を楽しむことができる。貴船口駅に着くとさっそく小さな駅を取り囲む紅葉に迎えられる。見事な赤色をしていて、こちらも夜にはライトアップされる。駅から貴船神社まではそれなりに距離があり、バスで約5分、徒歩で約30分かかる。時間には余裕があったので、徒歩で向かうことにした。駅から神社までの道沿いには川が流れており、静かで涼しく、空気がおいしい。そして、道中至るところできれいに色付いた紅葉を見ることができる。時間があるならば、片道はバスを利用せず徒歩移動をおすすめしたい。神社に近づいてくると、道路の左右に旅館や料亭が並ぶ。このあたりの紅葉もきれいで、貴船神社に着くまでにも十分紅葉を楽しめる。

貴船神社の鳥居をくぐると、有名な灯篭の並ぶ階段が出迎えてくれる。ここでは多くの人が足を止め写真を撮っていた。そして紅葉だが、神社までの道中とは異なり、期待していたほど色づきがよくなかったというのが本音だ。夜になると貴船神社ももちろんライトアップされる。多くの神社では三脚の使用が禁止されているが、貴船神社では2016年秋の時点では禁止されておらず、長時間露光できれいな写真を撮ることができる。

西本願寺 黄金に輝く大銀杏

秋といえばもちろんもみじであるが、それだけではない。イチョウも秋の名物である。秋になれば街路樹や京大の北部構内でもきれいな黄色に色付いたイチョウを見ることができる。中でも有名なのが世界遺産にも登録されている西本願寺のイチョウである。

堀川通に面した御影堂門から入ると、2つの大きなイチョウの木を見ることができる。門を入って右に見えるのが写真のイチョウの木だ。かなり大きいという印象を受ける。そして、正面に見えるのが「大銀杏」と呼ばれるイチョウの木である。こちらは右に見えるものほど大きくはないが形が特徴的だ。木の低い位置から各方向に水平枝や斜上枝が伸びており、まるで根っこを天に広げたような形から「逆さ銀杏」とも呼ばれている。樹齢は約400年にもなり、京都市の天然記念物に指定されている。私が訪れた時はまだ色付いていない部分もあったが、それでもこの大きさからくる迫力には驚かされる。

世界遺産というだけあって、平日でも人は多い。最寄りは市バス「西本願寺前」。イチョウの木を見るだけであれば拝観料はかからない。