複眼時評

久保田信 フィールド科学教育研究センター教授「生物学で人生設計の基礎を、最後にベニクラゲの夢の実現」

2016.10.16

あなたは人生設計をなし終えていますか?  それでも生物学を真剣に学べば、きっと、もっといい人生設計が出来ます。自身の大切な命の基礎を知れます。遺伝子から社会性まで可能です。人は生き物で、動物の一員だからです。現代人は動物界の最たる変わり物で、人工の叡智で文明をつくりあげ伝承していきます。その中に生物学もあって、動物としての基礎も学びとれ、終には、他の生命をあれこれ思いやれる人間に進化出来ます。だんだんそうなってゆくうちに、生命に畏敬の念を抱き、感謝し、一つの命さえも心から大切にする人間になれます。環境もいとおしくなり、本当の地球愛を育めます。地球が平和になるでしょう。

人は大にも小にも自分の大きさを越えた生物の世界をもっと知ることで、さらに大きくなれます。大木からバクテリアまで、種類も大きさも多さも違う、無数・∞とも思える生き物たちが、互いに影響しあってこの地球を生かしてきたことが理解できるのです。今や人間世界のものさしだけで世界をみて生きていくことは狭すぎます。むしろ彼らをまきぞえにし、ともだおれにする懸念さえあります。しかし、生物の世界は未知の要素でみちみちていますので、本当に真剣に生物学から命の基礎と応用を学んだ人間は、“真人類”に進化できるでしょう。

生涯学習できるわたしたち個人は、お母さんの卵が受精し、胚になり、赤ちゃんとして産んでもらい、少年少女を経て、青年となり、成人し、やがて子供も残し、老化して個人は死んでゆく唯一無二の存在です。しかし、いにしえから個人の一生はあまりに短すぎます。各人がどの道を選び、生き甲斐のある人生を送れても、夢も希望もどんなにたくさんあってもです。広大無辺の宇宙で、地球時間で瞬間的に生きることのつらさは、人だけがわかります。しかし、人間の夢を実現していた動物が今や存在していることが分ったのです。ベニクラゲです。若返るのです。まるで蝶が芋虫に戻るように…! とってもちっちゃな可愛らしい、人を刺さないクラゲです。暖かい海なら世界中に居ます。ベニクラゲは若返りを繰り返し、永遠に生き続けます(厳しい自然の食物網の掟の中で、捕食者に喰われたら死んでしまいますが、ベニクラゲはクローン生物なので、どこかにコピーが残っているでしょう)。この様なベニクラゲの動物界最大の生き方に、人間の素晴らしい未来が投影されていたのです。不死鳥の様なベニクラゲの若返りの秘密の解明は、今始まったばかりです。しかし、きっと人間の究極の夢をかなえてくれる時が到来するでしょう。

末筆ながら、以下の拙著(紀南出版の電子書籍)の読破をお勧めします:1・「永久に、そして永遠に -海に住むこの小さく繊細な生き物が不死の秘密を解き明かすのか?」 ナサニエル・リッチ著 原田百聞 訳(New York Times 2012年12月号の翻訳);2・「若返るベニクラゲとその人類進化への寄与」;3・「この子誰の子 地球の住民たち:動物の幼生編」;4・「地球の住民たち 動物編 ミラクル・アニマル・アース」 附録:地球の住民~世界の動物40門 DVD・CD(加えて、歌も是非お聞き下さい:「生命(いのち)の星」;「永遠(とわ)の命」) 中北音楽研究所制作。なお、「探検!京都大学 京大先生図鑑」にもアクセスして下さい。