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思修館 修士に学位授与へ 当初の制度を変更

2016.07.01

6月3日の役員会において、総合生存学館で修士の学位授与が可能になることが決まった。総合生存学館はこれまで、5年一貫博士課程という特徴を強調して修士学位を与えていなかったものの、学生の進路に応じて修士学位を与える必要があると判断し当初の制度を変更した。早ければ今年度末にも修士学位の授与が始まる。

通則の第55条第2項と学位規程の第3条が改正され、修士相当の課程を修了した学生のうち希望者には、審査のうえで「総合学術修士」が授与されることになった。第一次QE(解説参照)に合格したうえで、提出した博士論文の草稿を加筆訂正して修士論文の形式で再構成し、審査を通過すれば、修士の学位が認められるという。
総合生存学館が制度変更に踏み切ったのは、一貫博士課程であっても修士学位が必要だという声が学館内から挙がったためだ。インターンの応募や課程途中での就職といったケースで修士学位が強みになるという意見が出たという。 審査の内容や日程は今後検討される。総合生存学館の惣脇宏・教務委員会委員長は、「早ければ今年度末にも審査を実施する」と話した。

総合生存学館では当初、修士学位の授与を制度に組み込んでいなかった。2011年、文部科学省が実施するリーディングプログラム(解説参照)に学位プログラム「京都大学大学院思修館」が採択される。続けて13年に、思修館を実施する部局として総合生存学館が設置された。思修館は、ほかのリーディングプログラムと同じく5年一貫博士課程である。文部科学省の学位規則では、5年一貫博士課程でも修士課程相当を修了した学生に修士の学位を与えることは認められている。しかし、思修館はプログラム開始時に、5年一貫課程である特徴を前面に押し出すため、あえて修士で学位を与えない方針をとっていた。

〈用語解説〉
第一次QE QEは、Qualifying-Examinationの略称で、博士論文作成に必要な基礎知識や語学力などを習得しているか審査する。第一次QEは2年次に実施され、合格すると3年次に進級できる。合格のためには、TOEFL‐iBT80点以上と30単位以上の取得という条件を満たし、博士論文草稿の審査に通過することが必要だ。論文草稿の審査では、論文を書く能力が備わっているかが問われる。修士論文作成の負担軽減と幅広い学習の促進を目指して導入された。

リーディングプログラム グローバルリーダーを養成する文部科学省実施の事業で、専門分野の枠を超えた5年一貫博士課程の学位プログラムを展開する。2011年からプログラムの採用が始まり、15年までに696億円の予算が投入された。