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京大病院 暴行被害の相談を放置 京都労働局より行政指導

2007.10.01

京都大学附属病院に勤務していた元看護士の女性(31歳)が昨秋、「医師から性的暴行を受けた」と相談窓口に訴えていたにもかかわらず、病院側が迅速な対応を怠っていたとして、京都労働局が同病院を行政指導していたことが分かった。今年4月に施行された改正男女雇用機会均等法の第11条が今回の指導の根拠となっている。

女性の訴えによると、昨年10月にあった職場の宴会から帰る途中、同じ病棟に勤務している脳神経外科の医師から性的暴行を受けたという。同月中に女性は病院内に設けられたハラスメント相談窓口に被害を申告。しかし、事実関係を調査するなど、病院側は適切な対応を一切取らなかった。今年に入った1月、女性は再度訴えを起こしたが、病院側は今も女性から事情を聴いていない。

病院側は、既に女性が弁護士に相談し、示談交渉を一任していたことや、京都府警にも被害を訴え、1月下旬には強姦容疑で告訴していたことなどから、独自に調査をする必要はないと判断。京都労働局・雇用均等室から行政指導を受けるまで、事実上訴えを放置していた。

今回指導を受けた同病院人権委員会は、9月中に調査結果をまとめ、女性に報告するとしていた。しかし、「もう女性に報告をしたのか」という本紙の質問に対し、同病院の広報課は「プライバシーに関わることなので一切教えられない」。「事実関係は現在警察が調査中だが、事件性はなかったものと考えている」とコメントしている。2月に病院を退職した女性は「勇気を出して相談したのに病院の対応が不十分で、仕事ができなくなるほど追い込まれた。病院自体が調査をしなければ、被害は減らない」と話している。一方、書類送検された医師は現在も病院に勤務している。

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京都大学新聞社では、今回、病院に行政指導を行った京都労働局・雇用均等室に電話取材を行なった。対応した担当者は「労働局として個別の案件に対する問い合わせには答えられない」と前置きした上で、今回のような行政指導が行われる実態を次のように説明した。「働く女性から『職場でセクハラを受けた』という相談があって調査に訪れると、実際に(セクハラ対策に関して)不十分な点が確認される、というケースが非常に多い」。

また、今回の指導の根拠となった男女雇用機会均等法・第11条は、事業主にセクハラ防止の義務を課している。具体的には事業主に▼相談窓口を設ける▼あらかじめ懲戒規定を設けておく▼実際にセクハラをした者が居れば、規定に沿って処分を下す、ことなどを義務付けている。京大病院は女性職員からの相談を放置し、事実関係の調査を怠っていたため同法律に抵触。行政指導を受けることとなった。