企画

勝手にお薦め 第二外国語

2008.03.16

人生は選択の連続である。京都大学という選択を確定した新入生が、まずしなくてはならない選択、それはおそらく第二外国語の選択であろう。多くの選択には、どれも選ばないという選択が残されているが、ここでその選択肢をとることは、大学を卒業できないことを意味する。おそらく、多くの人にとってそれは本意ではないだろう。要するに第二外国語選択は否応なく迫られる選択である。そういった選択には積極的に選ぶ理由がないことが多い。どれでもいい、ということほど決めるのが難しい選択もない。そんな第二外国語の選択において、積極的に選ぶ理由を少しでも見いだせてもらえれば、と思い思いの表現で編集員が第二外国語の魅力を書かせていただいた。(編集部)

◇フランス語

フランス語は発音するのが楽しい。「ボンジュール」という誰でも知っているなんでもない言葉でも、日本語とも英語ともちがう鼻にかかる感じがいかにもフランス語。この言葉のとき、もっとも難しいのは「ル(r)」の発音。日本語で「ル」と書いているが、とても「ル」なんて日本語で表せる音ではない。音の面白さだけでも、学習意欲をかきたてるのに十分だ。

授業は当然文法中心だが、規則性が高いし、語彙に英語との類似性が高いものが多いので、英語を一定レベルまで学習した新入生にとって、それほど困難は感じないだろう。とにかく動詞の活用を覚えてしまえば、英語の学習とそう変わらない要領で臨むことができるはずだ。

◇朝鮮語

数年前のTBS系昼ドラ「ヤ・ク・ソ・ク」。日本語と朝鮮語での発音が等しい「約束」という言葉を要に、日本人の人妻が年下の韓国人男性と恋をする物語であった。その他にも日本語と朝鮮語で発音が類似しているものが多く、語順もほぼ同じなので理解しやすい。ちなみにフジテレビ系ドラマ「東京湾景」でも「ヤクソク」が鍵になっていた。勉強しやすいうえ、その多様な共通点からラブストーリーを紡ぎやすい言語である。

◇ドイツ語

ドイツ語(独語)は英語などと同様にインド・ヨーロッパ語族に属する言語であり、ドイツやオーストリア、スイスなどで公用語とされている。語順は比較的制限が少なく、動詞の位置以外はほぼ日本語の語順に等しい。ただ、名詞に男性・女性・中性の区別があり、さらに名詞や動詞が4つの格変化をするなど、習いたての頃はパズルでも解いているかのような煩雑さを感じる。以前は医学書などに広く使われていたが、現在その立場を英語に取って代わられつつある。しかし、ドイツを「ドイちゅ」と発音するなど、憎めない言語なのだ。

◇イタリア語

私にとってのイタリア語との接点は何といっても映画で、特にフェリーニ作品が好きだった。ジュリエッタ・マシーナのオーバー・アクションが、イタリア人のイメージ。ドイツではイタリア人のオーバーさがネタになるほどだという。ほんとうにそうなのかと思っていると、テレビのどっきりにひっかかったイタリア人サッカー選手の動きが、まさに映画のままだった。言葉もまた同様。どこかパフォーマンス的なところがある。イタリア語は男性・女性、単数・複数を語尾変化で表すが、そのことで生まれる韻のリズムと巻き舌が、耳にとても心地よく響く。

◇スペイン語

スペイン語が話されているのはイベリア半島のスペイン本国+南米諸国、いわゆるラテン系の国々です。スペインはシチリア島のように、イスラム文化とキリスト文化が混ぜ合わさったミステリアスな魅力をもった国で、グラナダにあるアルハンブラ宮殿に代表されるように、アラビアンナイトな雰囲気が至るところに漂っているそうです。人々はシェスタというながーいお昼寝をとり、ゆったりと暮らしているみたいなので、せかせかと生き急ぎがちな人は、スペイン語マスターになって一度訪れてみるといいのではないでしょうか。

言語としてのスペイン語の特徴は(多分に又聞きですが)、基本ローマ字読みなので、英語を学んできた学生にとっては発音が分かりやすい(巻き舌は必要)という点、また、母音が5つと日本語と同じなので、日本人にとっては習得しやすい、とのことです。



◇ロシア語

ロシア語を勉強する動機をいくつか提示しよう。
(1)ドストエフスキー等ロシアの文豪の作品を原書で読む。
(2)ロシアに行って天然ガス事業で一儲け。
(3)シャラポワとしゃべりたい。

お勧めは3だ。1も2もそれなりのやる気は引き起こすが3には遠く及ばない。シャラポワと仲良くおしゃべりしている様子を想像しつづければ容易にロシア語は習得できる。

さて、シャラポワとおしゃべりするためにまずキリル文字を覚えないといけない。ロシア語周辺の言語が採用しているアルファベット表記である。ЯとかЮとかЙとかである。別に会話だけできればいいから文字は要らんというかもしれない。だが母語以外の言語を文字を使わず習得するのは至難の技だ。シャラポワに自分の住所を書いて伝える際にも必要になってくる。

それから、これはもう大雑把に表現するしかないのだが、かなり多くの活用形を覚えなくてはならない。ロシア語は人称も動詞も名詞も変化するから。だがこれもシャラポワと話すことを思えば、朝飯前である。

最後にシャラポワに愛の告白をする際のフレーズ。Я тебя люблю

念願かなってロシア語を覚えたときには彼女にこうささやきに行けばよい。

◇中国語

中国語は世界で最も多くの人が話す言語とされています。いわずもがな、人口13億の大国チャイナの母国語なのだから当然といえるでしょう。しかし、中国内の方言は差が激しく、例えば北京語と広東語がまったく異なっていたりします。そのため大学で中国語を習得しても13億人と会話できるわけではありません、あしからず。この点が履修者のやる気を削ぐ結果となっているのかもしれません。

漢字を使用しておりますが、読み方は日本のそれとはまったく異なり、1回生の授業は大抵の場合発音練習から始めます。中国語の特徴は四声です。文字で表すのは至難のわざですが、とにかく上がり調子、下がり調子、押さえ調子、などによって、同じ読み方でも意味が違ってくる、というやつです。語順は英語と似ているとよくいわれますが、実はもっと複雑です。

チャイ転といわれるほどに、楽な二外の代名詞みたくなっていますが、あまくみているといたい目に逢うことになるアルヨ。

◇アラビア語

せっかく大学生になったのだから、今まで学んだものとは全く違う言語を学びたい。そう思ってアラビア語を選択した。昨年、インドに旅行した際、ムスリムの女の子に一目惚れした。学んだアラビア語で必死にコミュニケーションをとろうとしたが、彼女は首をかしげるばかりだった。どうやら私はまだまだアラビア語を学ばなければいけないらしい。

◇日本語

外国の人が日本語の勉強を始める動機について。私の自国オランダでは以前から日本の映画の人気があり、黒沢明や小津安二郎が有名でした。しかし最近、それとは関係なく大学で日本語を勉強する学生の数が五倍ぐらい増えました。これはアニメ、マンガ、任天堂のDSやWiiの普及によって、多くの若者が日本に興味を持つようになったためだと思います。さらに、村上春樹がオランダでも人気作家になりつつあります。日本語を学ぶのは、こうしたモダンカルチャーによるところが大きいのではないでしょうか。もちろんモダンカルチャーに興味がない学生も少数ながらいて、太宰治などの小説、切腹や春画から生け花まで幅広い興味から日本語を勉強しているようです。

◇再履修のススメ

再履修クラスというと、初年度で60点すら取れなかった京大生の落ちこぼれの集まりである、と考える人もいるかもしれないが、必ずしもそうではない。再履修クラスの半数以上は、何かしらの都合で、指定された授業に出なかった者だ。ようやく受験から解放された1回生時は、いろいろな学生活動を通して、自身のエネルギーを発散させるべきであるし、学部から指定される時間割に縛られることで、それらを諦める必要は全くない。

まず、少しだけ技術的な話をする。先輩から、語学だけはちゃんと取得しておきなさい、とアドバイスされた経験が皆さんにもあるだろう。特に初年度の語学は通年科目であり、落とすと再履修でも追加1年分が確定してしまうのが、主な理由だ。ドイツ語などの第二外国語に関しては、実際に1年間、同じクラスでの再履修が必要になるので、出来るならばきっちり取っておきたい。ただ英語に関しては、2回生の再履修登録時に授業1単位+CALL1単位と取れば、前期のみで比較的簡単に挽回できる。この手の話は、実際に再履修をした先輩から直接情報を得るのが望ましい。

再履修の最たるメリットは、時間割と教師を選べることだ。自身の大学生活スタイルに合った時間割を選べることも魅力だが、通し1年間もウマの合わない教師と付き合うくらいなら、すっぱり諦めて再履修しよう、と考えるのもアリだ。学問とは結局、自分のやる気であり、その意欲が湧かないまま無理に続けても、フラストレーションがたまってしまう。ガマンできない現代人よ、ガマンすることなかれ、語学がどうしても嫌いな人は、採点の甘そうな教員の授業を選べば、モチベーションが上がるでしょう。失礼。

再履修は「しないほうが望ましい」ものではあるが、必ずしも「してはならない」ものではない。意図せずとも、長期にわたり語学と接する機会とポジティブに考えよう。