文化

百万遍カレー戦争!!~京都のカレーはカルチャーだ~

2008.02.16

受験生の皆さん、お疲れー様です。試験で頭を使った後はお腹がすきますね。お昼何食べましょう?あ、あれ食べよ!……ラーメン?おばんざい?ちがいます。カレーです。あまり知られていませんが、吉田キャンパス周辺、とりわけ百万遍はカレー激戦区なのです。個性的なカレー屋さんたちが、スパイスの調合という魔術を操り、日々京大生の舌をめぐって攻防を繰り広げているのです。星○監督も言ってます。「カレーを食べて元気に行こうじゃないか!」と。さあみなさん、カレーを食べにいきましょう。今日はカレー曜日です。

スパイシー 嗚呼、ニッポンの洋食

「この店で一番の人気メニューを」「かしこまりました」注文して間もなく現われたのは「にっぽんの洋食」ロースカツカレー(680円)。正と奇を自在に繰り出す豊富なカレーメニューの中でも、人気は絶対にハズレのない王道メニューのようだ。

かぎ慣れたあの匂いをまとい皿がテーブルに置かれる。いますぐルウの湖面にダイブしたいところをグッと我慢、今日は取材に来たのだ。カメラでカレーを撮影。うーむどのアングルからでも美しい。今すぐ君を食べてしまいたい!フラッシュを焚くと湖面が眩く照り返す。ルウがとても澄んでいるのだ。

鼻腔を刺激する香りと黄金色のロースカツが36種類目のスパイス“空腹”を生成する。「いただきます」触覚をスプーンの先端と同調しルウのとろみを測量(一流はさらにこの時味覚とも同調し辛さをも感じるそうである)。普通よりさらっとしているだろうか。小麦粉は控えめで、たまねぎをしっかり煮込んでとろみをつけているようだ。いわば「滑らかなとろみ」。ご飯とよく絡む。

中辛の5倍という大辛を注文したのだが、なかなか辛い。通にはたまらない辛さだ。確かに辛いのだが、野菜や果物をしっかり煮込んだ味で、マイルドでもある。いうなれば「静かなる激辛」。このようにカレーとは一見矛盾するような表現を許容してしまう世界がある。

カレーハウス・スパイシーは1950年、四条河原町に創業した洋食店がその前身である。50年の経験と35種類のオリジナルブレンドスパイスが一皿のカレーに煮詰められている。百万遍店は約20年前に開店、ながいあいだ京大生においしいカレーを提供してきた。ちなみに尾池総長も召し上がったことがあるそうだ(敵情視察だろうか)。にわかにライバル店が出店してもその安定した味は揺るがない。店長ははにかみながら、豊富なカレーメニューと、大盛りやW大盛りといった学生にうれしいサービスが売りだと語ってくれた。

供されるカレーは日本人の舌によくなじむ“あの”カレーである。定番ゆえに飽きないカレー。スパイシーは今後も京大生御用達の座を守っていくだろう。(秀)

こあの助 吹き抜けるメコンの風

そもそもタイカレーとは何か。タイカレーとはタイのカレーのことである。

タイの料理というのは往々にして辛い。中でもカレーとなるとその辛さは想像を絶するのではないかと想像するかも知れない。しかし、それは半分しか当たっていない。

確かに辛さはある。だが、単なる激辛カレーではないのだ。辛さの中にもコクがある。繊細微妙な刺激、爽やかさえある。コクを出すのはココナッツミルク、爽やかさを演出するのはハーブ、スパイスが味に深みを作り出す。タイカレーがそんなカレーであることを教えてくれるのが「こあの助」だ。

百万遍の北西、レブン書房の右隣のビル2階に「こあの助」はある。オープンしてまもなく1年を迎える程度だが、早くも京大関係者の胃袋を握りつつある。魅力は味と価格だ。

こあの助の看板メニューは特製の「グリーンカレー」と「イエローカレー」。どちらも20種類以上のスパイスと良質のココナッツミルクを使い、具材はジャガイモやタケノコ、シメジなどに日本人になじみの深いものを使用している。ココナッツミルクのまろやかさのなかにスパイスが絶妙にきいており、具との相性もばっちりである。

さらに、辛いものが好きな人にうれしいサービスがある。グリーン、イエローともに辛さを3段階で調節できるのだ。特にレベル3ではタイからわざわざ取り寄せた激辛ピッキーヌ唐辛子があなたの汗腺を刺激する。

また価格設定も良心的だ。基本のメニューを600円台に抑え、気軽にタイカレーを味わえるようになっている。さらに、小食の人にはライス小を50円引きで、大食の人にはライス大を50円増しで提供している。ルーの大盛りや具のトッピング追加もある。好みに合わせて食べられるのがうれしい。

店長の万木さんは、以前は喫茶店を経営していたがタイカレーのおいしさに魅了され、多くの人にも食べてもらいたい、と店を出すまでに至った熱い方だ。タイカレーの普及の「核」になりたいという思いで「『こあ』の助」と名付けたという。今後、百万遍からタイカレーの爆発的人気が始まるはずだ。(ぞ)

ラジュ これぞ、本場インド流!

昨年11月、百万遍から今出川通りの北側を東に入ったところに、インド料理のラジュがオープンした。5年前、草津で開業してから早くも9店舗目という人気店だ。

店に入ると、インディアン・ポップというのかいわないのかは知らないが、インドの歌謡曲がきこえてくる。エキゾチックな刺繍をつかった装飾は、まさにインド料理の店といった印象。二階席、カウンター席もあり、一人でも大人数でも大丈夫だ。

調理するのは、みな本場で修行したインド人コック。店主のラジャスさんみずからインドカルカッタのホテルから引き抜いているのだという。そのため、日本人の口にあうように油と辛さを抑えつつ、それ以外はインドのレストランで出されているものと同じという「本場のインドカレー」がラジュ自慢の味だ。

百万遍店では、学生向けに他店舗よりも値段が抑えられており、ランチセットは700円から。カレーにナンとライスが両方つき、肉料理、サラダ、スープ、チャイorコーヒーでボリュームは十分。単品で頼んでも、ナン・ライスがおかわり自由だから、おなかいっぱい食べることができる。

おすすめのカレーをいただいた。ビーフサワグラは、緑色のほうれん草ベースのとろとろのルウのなかに、ステーキのような大きめの牛肉をやわらかく煮込んであって、とてもまろやかな味わい。もうひとつのチキンティッカマサラは、対照的に酸味の利いたトマトベースのカレー。チキンは、丁寧にひとつひとつ炭火で焼かれているそうで、単独でも出せそうなぐらいすみずみまで風味がついていた。これをライスでいただく。黄色い色をしたサフランライスだ。サフランライスのぱらぱらした食感が、ルウによく合っていた。

今回いただいたカレーは、もっとも辛さの低い1辛だったこともあり、辛いというよりも甘くこくがあって、シチューのようだった。辛さは5段階。ラジャスさんいわく、もっとも辛い5辛は、「それより辛くするとお客さんの体調に責任がもてない」辛さとのこと。辛さ自慢は、ぜひこの限界ぎりぎりの辛さに挑戦してほしい。(鮭)

総長カレー 総長を、いただきます

ご飯とルウをさじでかきまわし、口に運ぶ。カレーを食べるさまは、幼き日の砂遊びに似ている。子どもは砂を盛り、上から水を注ぐ。乾いた砂のいろが黒く沈んでいく。まもなくして砂山は崩れ去り、子どもは濡れた砂塊から新たな建築物をこしらえたり、団子にしたりする。砂が作り出す造形に魅せられ、服が汚れるのもお構いなしだ。

尾池総長がカレー好きだというのは有名な話だ。地震学者だから土や砂が好きで、だから砂遊びが好きで、だからカレーが好きだ、などと推測してみよう。まあ、それは憶測というものか。

さて、噂の総長カレーである。この珍妙なるカレーが誕生した経緯を簡単に紹介しよう。カンフォーラの月間企画として、5種類の総長カレーを尾池総長プロデュースで提供したのが始まり。好評につき、シーフード・ビーフ・ステーキの3種類で定番メニュー化。去年の秋にはレトルトにもなり、大人気。人気の理由は、「京大総長を身近に感じられるから」だという。カンフォーラで総長カレーを食べる客層も観光客が多い。靖国に行って○○○まんじゅうを買う参拝客よろしく、時計台の前で総長カレーを食べることが、一つの京大観光のスタンダードなのかもしれない。

ともかく食べてみよう。頼んだメニューはステーキカレー。ご飯は白米と五穀ご飯から選べるので、五穀を選択。小麦粉はいっさい使用していないという。さらっとしたカレーだ。辛さと甘みが控え目で、マイルドで食べやすいカレー。量が少ないのがもの足りないが、客層を考えるとこれでよいのだろう。

ところで、肝心の総長は総長カレーを食べにくるのか。カンフォーラの副店長の飯塚さんによれば「お忙しいのでなかなか来店されませんが、来店されたときには、(総長カレーを)食べていますよ」。どうやら律儀に食べているらしい。

残念ながら尾池総長は今年で任期が終わる。総長カレーは、今年いっぱいで一つの区切りを迎えることになりそうだ。その後どうなるかはまだ決まっていないという。総長が代替わりすれば、また新たなメニューができるのだろうか。

ここで一句。 

くすのきを 黄色く染める カレーかな

句集出せるかなあ。 (ち)