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関東大震災フィルム 京大書庫で確認

2014.07.01

昨年10月、京都大学工学研究科建築系図書室の貴重書庫に保管されていた映像フィルムが、1923年9月に発生した関東大震災の被災状況を鮮明に記録していたことが判明した。

建築系図書室の担当者によると、このフィルムの存在は以前より確認されていたが、一部が溶け出すなどフィルムの劣化が進み、中身の映像が分からずにいた。そのため昨年10月から専門の設備を持つ京都文化博物館にフィルムの修復を依頼し、調査を進めていたという。

調査の結果、約12分間の映像が確認され、火災で燃える家屋や、避難してきた人々によって埋め尽くされる広場、焼け跡となった市街地の様子などが収められていることがわかった。映像は非常に鮮明であり、関東大震災の様子を収めた映像フィルムのうち、同程度の鮮明さをもつ映像フィルムは全国で他に十数本しか確認されていない。また、当時の日本としては異例の高層建築物であり、震災により半壊した12階建ての浅草・凌雲閣が爆破処理される様子など、既存のフィルムには収録されていない場面も含まれていることなどから、担当者は資料的価値が高いとしている。

フィルムのタイトルから、当時の大阪毎日新聞社が京都帝国大学に寄贈したものであると分かるが、どのような目的で寄贈したのかなど不明な点もある。「京都帝国大学に工学部建築学科を創設し、時計台の設計でも知られる武田五一教授は大阪毎日新聞社と深くかかわりをもっていた。記録が残っていないので類推の域を出ないが、武田教授がこのフィルムの寄贈と何らかの関係があるのかもしれない」と担当者は話している。

映像はデジタル化され、京都大学研究資源アーカイブのウェブページ(http://www.rra.museum.kyoto-u.ac.jp/activity/application/digital-collection/)で一般公開されるほか、同アーカイブの映像ステーションにて閲覧可能となる予定だ。フィルム本体は自然発火する恐れがあり、京大内では保管することができないため先月、東京国立近代美術館に寄贈された。