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J地下夜間使用 午後9時過ぎまで開錠 J自・法サ連は引き続き協議へ

2013.03.16

昨夏以来少なからぬ法学部生の関心事だった、法経本館西ウイング地下(以下、J地下)の夜間休日使用をめぐる問題に、一定の「進展」があった。学部当局による一方的な使用制限の実施から今に至る経緯を振り返る。

2月5日(火)、法学部当局は、J地下を開錠する時間(平日)を昨年6月27日以来の午前7時半~午後8時から、午前7時半~午後9時(過ぎ)に変更とした。土曜日(法学部図書室が開館されている日に限る)に関しては、法学部教員のサインをもらったうえで、法学部教務課に事前申請すれば、法経北館の演習室を9時~午後5時において利用できるとしたこれまでの慣例を踏襲した。

法経本館は時計台百周年記念館裏にある建物。法学部と経済学部が共同で利用し、授業の教室や研究室があるために多くの学生・教職員が出入りする。また、地下がサークル活動や勉強会などの、学生の課外活動スペースとなっているのが特徴だ。東ウイングの地下がE地下、西ウイングの地下がJ地下と呼ばれている。以前は一部の出入り口が無施錠だったが、2010年4月から電子錠による夜間施錠が行われ、学生証の認証によって法・経済学部の関係者のみが夜間に利用可能な状態となっていた。

ところが2012年6月25日、同月27日から法経本館の管理方法を変更することを法学部当局が発表、実施した。これによって学生が法経本館の西ウイングに入館できるのは平日の午前7時半から午後8時までの間に限られ、それまで可能だった法学部生・法科大学院生の学生証の認証による入館も不可能になった。

施錠措置開始当時、法学部が弊紙の取材に答えたところによると、2012年4月以降、飲酒した学生が夜間に徘徊する、掲示物や施設などに落書きがされるなどといったことが連続して発生した。そのため、学生・教員の身体と財産の安全を守り、教育・研究活動の円滑な遂行を確保するためには緊急の対応が必要だと判断したという。

ただこの措置に関して法学部当局は学生らと折衝などを行わず発表の当日に説明会を開いたのみだったため、学生側が不信の声を上げた。

J地下を管理している法学部学生自治会(以下J自)と法学部サークル連合(以下法サ連)は、自治会会員である法学部生の意見を求めるために7月9日から24日にかけて、自治会規約第14条に基づく学生投票を行った。投票は投票数が定足数の総会員(全法学部生)の10分の3を超え成立し、①今回の措置が一方的なものであり、法学部生・院生に過度な不利益を与えるものとして強く抗議する②法経本館の終日利用が認められるよう、J自が法サ連と連携して法学部と交渉することに賛同する③J自と法サ連が防犯問題に対処するための代替案を提示すること、ならびにそれに協力することに賛成する、以上3議案について投票数517票のうち9割以上の賛成ですべてが可決された(詳細な投票結果については、文末に記載)。

J自が学生投票を実施したのは02年以来10年ぶりのことだった。学部自治会による学生大会、学生投票の実施自体が近年の京大では絶えて久しく、それが実施・成立したという事実からも、この問題が多くの法学部生の関心を集めていたことが分かる。

この決議をもとにJ自は法学部当局に要望書を提出するとともに、2012年9月25日に交渉が実際に行われた際には、代替案として法経本館南側の小扉を閉鎖すること、学生証の認証によって夜間も学生が利用可能にすること、J自がピロティ空間における事前予約制を徹底すること、J地下についてはJ自が基本的に管理することを主張し規制の緩和を求めた。

法学部当局の回答は以下の通り事実上のゼロ回答で、学生による課外学術活動の意義を著しく軽視するものだった。
(a) 要望書への回答
・要望書は詳細に検討したが、現段階で措置を緩和することはできない。
(b) (a)の理由
・そもそもこれまで、J地下が、管理者がいないのにも拘わらず24時間開放されている状態が異常であったのであり、以前の環境を当たり前のように捉えてもらっては困る。
・休日は用務員がおらず、平日は用務員が22時前に就寝するため、管理者がいない時間帯に学生を建物の中に入れるわけにはいかない。
・サークル活動は時間制限の中で効率的に行う努力をすべきだし、個人の勉強は図書館や自宅などで行えば良い。
(c)「今後、どのようにすれば措置緩和を実現できるか」との質問への回答
・日曜日に関しては、措置の緩和は完全に不可能と考えられる。(上記(b)二つ目の理由による)
・土曜日に関してもほとんど不可能である。ただ、土曜日は用務員が正式にはいないとはいえ、ロースクールの授業やイベントなどで教員がいることが多いため、そのあたりの教員が何らかの役割分担をできれば、日曜日よりは措置緩和の可能性はほんの少しは高いと言える。
・平日は、絶対的必要性が証明されれば、22時少し前までの延長は検討を始めても良いかもしれないと考えている。(あくまでも現時点では検討すらしていない。)以前提出した意見書では、これまでの活動のあり方が説明されていたが、それでは活動形態を工夫しさえすれば、午後8時までに終わることも可能のように見受けられるので不十分である。
・絶対的必要性を示すためには、6月のJ地下夜間休日封鎖後、活動形態を変更するあらゆる工夫を行ったが、それでも22時では著しい支障がでる、ということを説得的に文書で示してもう一度提出してほしい。また、1、2団体ではなく、大多数の団体が、活動に支障がでていることを証明することが必要である。

法学部当局からの回答を受けて、J自・法サ連は、平日は開放時間を午後10時まで延長すること、ならびに休日土曜日については、法学部図書館の開館時間に合わせるような形での開放、難しい場合は、法経北館演習室エリアの同時間帯での開放を求めることを決定。引き続き法学部当局との交渉を続けることとした。

措置の緩和を求めるにあたって時間延長の絶対的必要性を証明するため、前回提出した意見書の内容を修正し、午後8時までではどのように工夫しても本来の活動が大きく制限されてしまうこと、午後10時までの延長と、土曜日の開放が不可欠であることを10月中に文書にまとめ法学部当局に提出した。 法学部当局との交渉のなかでJ自・法サ連は、用務員の実情に配慮したうえで、5限終了後もゼミが延長して行われ夜間まで及ぶため、午後8時の施錠は使用当事者の実状と合致していないと主張。附属図書館の閉館時間まで勉強する法学部生もいることもあって、法学部生による法経本館への午後10時までの自由な入館を求めた。

これに対し法学部当局は、午後8時の施錠はあくまで目安に過ぎず変更可能なものだとした従来の見解を踏襲したうえで、平日は午後9時過ぎに用務員が法経本館南扉を施錠しに来るためその際に法経本館全体の施錠も行うことでどうかと「現実的」な妥協案を提示。J自・法サ連はその案を実行することを承認したうえで、今後も引き続き交渉することを法学部当局と確認した。

※法学部学生投票の結果

 会員総数 1569名(2012年7月23日現在)、投票総数 517票 (必要投票数471票、無効票5票は除く)
・第1号議案「今回の法経本館の管理方法に対する抗議声明について」(記事中の①にあたる)
賛成476票、反対2票、保留31票、無回答8票
・第2号議案「J地下利用者一同と法学部当局との交渉について」(記事中の②にあたる)
賛成498票、反対1票、保留10票、無回答8票
・第3号議案「法学部当局との交渉の際に代替案を提示すること、ならびに法学部生全員に利用の度合いに応じた負担を求めることについて」(記事中の③にあたる)
賛成490票、反対2票、保留17票、無回答8票
いずれの議案についても、賛成数が過半数を越えたことにより可決された。