企画

学部自治会特集

2013.02.16

京大には「学部自治会」と総称される組織がいくつかある。学部ごとに設置されている生徒会のようなもの、と言えば受験生の皆さんにもわかりやすいだろうか。ただ、高校までの生徒会と違うところがある。生徒会は基本的に学校の教員の指導の下で学生が活動する(させられる)ものだが、学部自治会は学生の自発的な意思にもとづいて運営や活動が行われるのだ。

大学の運営に関する法的な決定権は、総長や副学長といったいわゆる「お偉いさん」にある。学生の生の声や意見の多くはしばしば無視され、都合の良い意見だけが「学生のニーズ」というフレーズとともに取り上げられる。でも、大学という場のいち構成員である学生の意見は、もっと大学の運営に反映されても良いはずだ。

そんな無視されがちな「小さな」意見を吸い上げて、「学部生の意見」として大学に伝え、必要に応じて交渉を行うなどするのが学部自治会の役目の一つだ。またそれ以外にも学部自治会はそれぞれ特有の仕事を抱えており、学部自治会の委員会の人たちは日々の活動に苦労している。

今回、学部自治会に寄稿をお願いし、活動の一端を紹介してもらった。受験生の皆さんも、京大に合格したあかつきにはぜひ学部自治会の活動に参加・応援してほしい。(編集部)

文学部学友会

はじめまして。学友会は、文学部の学生自治会です。

基本的には、文学部の学生生活をいまよりちょっといい感じにするために、あれやこれやしています。具体的には、4月の新入生ガイダンスをしたり、文学部の教室を使いたい! というひとのために文学部当局との仲介をしたり、文学部生を含む団体の自主ゼミや研究会への補助を行ったり、文学部中間実としてNF)京大の学祭です)へ企画を出したり、1回生のクラス企画に補助金を出したりしています。

うーん、これだけだとなんだかお堅い上になぜこんなことをしているかよく分からないですね。学友会の基本理念は、学生という、大学の中で大きな比率を占めているにも関わらず、大学が何か大きな方向転換をするときに無視されがちな立場の人間が集まって、なんとか意見を言ったり話し合いをしたりというときに、その主体(の一つ)として機能する、ということです。2012年度に問題になった国際高等教育院(仮称)の件は、皆さんの記憶にも新しいかもしれません。こうしたとき、職員や教授などとは別に、学生の組織があったら、学生の意見を吸い上げて、なおかつ大学側にガンガン意見を行っていく、提案していく、というのが割合スムーズに行えるわけです。その他、キャンパス内では種々のハラスメントが起こる可能性があります(あなたや周りのひとが被害にあう可能性も有ります)が、こうした際にも、なかなか主張しにくい権利をきちんと行使したりするために、学部と交渉する主体ともなります。学友会は文学部の公認団体でもあるので、ひとりで言いに行くより言いやすかったり、圧力を感じにくいという利点も有り。

さらにさらに、大学内にはいろいろな自治管理空間というのがありますが、文学部には「文学部東館学生控室(通称:ブンピカ)」というのがあります。ここはブンピカを使用するひとたち自身で使い方を決め、ルールを作って運用しています。教室を借りると21時で追い出されてしまったりしますが、ここは24時間使用することが出来ます。そもそも、勉強や活動が21時で終わるなんてことは無いはずで、きちんと自分たちの手で運用することが出来れば問題はありません。ところが治安だとかなんだとかを理由に最近の大学では夜中に構内をうろうろすることが禁じられたり(京都大学ではまだですが、そうした流れにあることは間違いないでしょう)、まったくつまらない場所になっていってしまっています。そうした流れの中で、なんとか楽しく自由な場所を残す、そんなことも考えていけたらいいなあと思ってい
ます。

法学部学生自治会

京都大学法学部学生自治会は、京都大学法学部生全員から構成される学部自治会であり、多くの京大生から「J自」という愛称で呼ばれております。主な活動内容としては、4月の法学部入学式後のオリエンテーションや、11月祭(京都大学学園祭)でのイベント開催、過去問題集の製作・販売、法経本館(法学部棟の一つ)地下の自主管理の第一責任者としての役割があります。今回は、以下2点についてとりわけお話しさせてもらいます。

1点目は、学部自治会の存在意義についてです。皆さんはおそらく、学生が寄り合わさったような学生団体では学部当局におよそ力が及ばないのでは、と思われるかもしれません。確かにすべての要求を認めさせたような「実績」はございませんし、およそ自分たちの要求だけを押し通すようなこともいたしてきておりません。(例を挙げますと、24時までの校舎開放は実現できませんでしたが、一方で、深夜遅くまで開けろともこれまで主張いたしませんでした。)しかし、法経本館地下の空間の自主管理を委ねられていること、校舎の利用時間をめぐって学部当局と話し合いを行えること一つをとってみても、高校の時とは比べ物にならないほどの「対等」な関係を生み出しています。また、法学部のユニークな取り組みの一つなのですが、法学部生から特に人気があるテーマを次年度の講義として学部当局が提供する制度を過去に提案したところ、現在では採用されるまでに至っております。さらに、印刷機や学部生用ロッカーの提供・整備等を自治会が担うことで、より便利な教学環境・福利厚生の改善に取りくんでおります。このように、学生の真のニーズをくみ取り反映させることこそ、学部自治会の存在意義そのものであり、私たちにしかできないことなのです。

2点目は、学部自治会の限界についてです。そもそも学部自治会がなければ何も始まらないのですが、私達のような学部自治会があることを前提にしても、過去の先輩方も含め、私たちは幾度も限界を目の当たりにしてきました。大きく分けると、人的側面、金銭的側面、他団体との関係に振り分けられます。

人的側面としては、学部自治会そのものを最前線で運営するスタッフが不足する傾向にあることです。「自治会」というイメージが良くないからなのかも知れませんが、少なくとも積極的に係わってくれる方が集まりにくいのが現状となっていて、クラスの後輩に仕事のお願いをするようなことも多々あります。対策として、法学部の各クラスから2~3名ずつ選出された「自治委員」に自治活動を担ってもらう制度を数年前から導入いたしましたが、人数が多いためか、積極的なメンバーが集まらない状況は改善されておりません。「京大らしい」制度ではなかったのでしょうか?

金銭的側面としては、老朽化、または鍵の紛失のために使用が困難となった学部生用ロッカーの修繕が出来ずにいること、老朽化が非常に進んでいる印刷機を数年以内に新しく更新せざるを得ない状況であることが挙げられます。私たちの予算が入学の際にお支払いいただく自治会費(年あたり100円)ならびに、過去問題集の販売費で賄われていることもあり、大掛かりなことが出来ないでいるのです。

他団体との関係では、文学部学友会などの学部自治会をはじめ、京都大学新聞社、京都アカデメイア、大阪府立大学キャンパスフォーラム等とも連携をとってきています。連携を模索する理由は、最近問題となっている大学の「管理化」(大学当局による過度の規制強化)に対抗すべく、諸団体間で情報を共有し、学生の利益を代表するための行動を一致団結して取り組む必要があるためです。ですが、人的側面でも述べましたが、人数が集まらない傾向はおそらくすべての学部自治会に共通することであり、共同案を取りまとめる作業一つをとっても容易なことではありませんし、法学部に関することに比べて十分な議論を確保することが出来ないでいます。

最後に、ご存知かもしれませんが、京都大学はトップダウン型でいわゆる「入試改革」と「全学共通教育」の大規模改革を行おうとしております。我々は「トップダウン型」が京都大学全体や学部自治会等にもたらす負の影響についてとりわけ問題視しております。その理由は、これまで学部自治会が大学当局との間で築き上げてきた「対話を重んじる」関係が失われてしまうからです。また、京都大学が本当に改革を徹底させたいのであれば、それは学生や教員をも巻き込んだ「ボトムアップ型」しか成しえないのではないでしょうか?心強いことに、大きな影響を被る可能性のある総合人間学部に自治会を作る動きが出てきておりますが、法学部学生自治会としても微力ながらの協力をさせていただく所存であります。皆様にも、自治会の存在意義について改めて考えていただき、なおかつ、自分の所属する学部自治会等でご協力くださいましたら幸いです。

農学部学生自治会

農学部学生自治会は、自治会BOXというすばらしい部屋を持っている。この部屋にはインターネットに接続できるパソコンもあれば、本も漫画も格安印刷機もあり、さらには流し台や冷蔵庫まであって、毎週金曜日の夜には「A自Bar」なるものが開かれる。さらにこの部屋の立地は、講義室や研究室と同じ農学部総合館内にあるという好条件である。しかし、残念なことに自治会BOXを利用する人の数は少ない。2013年度からは、自治会BOXにもっと多くの人の出入があるようにしていく方法を考えたい。

さて、来年度の目標を述べたところで、現在の自治会がどのような活動をしているのかを説明する。日常的な活動としては、バーベキューセットや工具などのイベント用物品の貸し出し、印刷機の運用、講義室利用申請の取りまとめなどを行っている。これらを利用したいときは、自治会のメールアドレス(ajichikai@yahoo.co.jp)に連絡をすれば、常任委員が対応し、簡単な手続きを経て利用することができる。常任委員とは自治会の運営を主に担っている役員であり、先に挙げた活動のほかにも、過去には学生の自習室の不足や農学研究科付属農場の移転、授業カリキュラム改変といった、一人の学生の力では取り組むのが難しい問題について、農学研究科教務との交渉を中心的に担ってきた。また、自治会として企画する恒例のイベントとして、4月の新歓茶話会や、11月の北部祭典がある。

自治会の活動内容は、農学部生ならだれでも参加できる会議の中で決められる。この会議は「自治委員会」と言い、半年に一度開かれる。つまり、自治会の活動に関心や意見があれば、だれでも自治会の運営に関わり、自分の考えを活動に反映させていくことができるのである。自治会が活発で有意義な活動をしていくためには、より多くの人が運営に関わるようになることが望ましい。

そのために重要なことは、自治会をもっと親しみの持てるものにすることだろう。はじめに来年度の目標として掲げたように、自治会BOXの利用者を増やすことができれば、自主ゼミで部屋を使うだとか、授業の合間に昼寝するだとか、自分にとって必要な有益なものとして自治会を認識することができるのではないか。そうして、自治会BOXに集まった人たちの中から、「自治会としてこんなことをしたらよい」「こんなことをしたら面白い」という話が出てきて、具体的な活動につながっていくのではないか。自治会は、学生が大学のあり方について考え、それを実現させていくためにあると思う。自治会BOXが自然と人の集まる場になって、そういう議論が生まれてくる場になったらよいと考えている。

理学部学生自治会

理学部学生自治会は理学部生全員で構成される自治会で、略してS自といいます。そしてS自の活動を中心的に担う組織をとくに評議会と呼びます。毎年4月に新入生から各クラス1~2人の評議員を選出して評議会のメンバーに加わります。評議会とは他の自治会でいう常任委員会に当たるものです。

普段行っている活動としては、S自BOXの管理などがあります。S自BOXは北部構内理学研究科1号館の中庭に設置されているプレハブで、主に学生の自主ゼミに使われたりしています。評議会の会議も毎週ここで行っています。24時間利用可能で、エアコンやパソコンなどの設備が整っています。ただし、夜間は理学研究科の建物が閉まるため、近くにトイレがないことがちょっとした難点です。こんな感じのS自BOXですが、利用してみたい方(理学部生以外もOK)がいましたら気軽に評議会(kusjihyou@gmail.com)までご連絡ください。評議会の活動に興味のある方も歓迎します。

こうした活動のほか、時には学内問題への取組みも行っています。今年度の例では、全学共通教育の再編に対する活動があります。これは全学共通教育のカリキュラム改革(科目群の再編成など)とともに、実施体制を改組するもの(「国際高等教育院(仮称)」の新設)です。この再編に対して、評議会は始めに理学部当局へ説明会の開催を要求しました。その結果、学部レベルでの説明会は1度実現しました。しかし、その後文学部学友会、農学部学生自治会、法学部学生自治会と共に行った全学レベルでの説明要求、特に総長による説明会は未だ実現しておりません。何にしても、評議会では、今回の問題について今後も考えていくつもりです。 

最後に、今年度を振り返るとともに、これからの目標を少し話そうと思います。先程触れた全学共通教育再編のことになりますが、これは学生の立場について考えさせられる機会だったと感じています。評議会が卒業要件の変更について説明を求めると、変更の適用は来年度の「新入生」からであって「在学生」には関係ないと当局からは返ってきます。在学生には説明さえありません。一方で新入生に対してはきっと、これが卒業要件だと当然のことのように説明するのでしょう。そうなるとなんだか、学生は言われるままにしろと言われているような気がします。学生は単なる管理対象なのでしょうか。

学生というのはたぶん、人生のなかでも自由に考える時間が一番豊富な時期だと思います。こういう時期だからこそ、自分の置かれている立場を、その上で自分がどうすべきかを考えて欲しいと思っています。そして、そんな学生が少しずつ増えることを願っています。いつかは学生の立場を少しでも変えていきたいところです。