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人環・総人教員有志が反対運動 「理念なき改革 学部自治の破壊」 問われる京大当局の対応

2012.11.16

11月12日の昼休み、吉田南構内総合人間学部棟前の広場で、人間・環境学研究科および総合人間学部の教員有志が「国際高等教育院」構想に反対するための運動を展開した。開始から徐々に、授業を終えた学生らが集まり、多い時には約70人が広場を囲った。教員有志は広場を通る学生らに声明ビラを配布。また交代で演説を行った。反対運動は今後も続けられるという 

現在、全学共通教育の企画責任は高等教育研究開発推進機構が担っており、一方でその実施については人間・環境学研究科と理学研究科が責任を持っている。京大当局はこの現状を改め、企画から実施までの責任を一元的に担う「国際高等教育院」を設置しようとしている。これを「国際高等教育院」構想と呼ぶ。

この構想は、各研究科から国際高等教育院へ一定数の教員が移籍(もしくは兼任)することを含んでいる。その中で、人環は全教員の70パーセント以上に当たる約100人の移籍を求められている。また、国際高等教育院には教授会に当たるものが存在せず、一部の企画責任者によって決められた教養教育が実施されるという。

京大当局のこうした構想は、多くの教員らの知らないところで進んでいた。構想が浮上してから早急に検討が進み、来年4月にも教育院の設置が目指されている。「国際高等教育院」構想を受けて人間・環境学研究科および総合人間学部では、9月27日に開かれた教授会で、「国際高等教育院」構想を同教授会の同意なく決定することに反対する決議を上げた。

さらに、11月8日の教授会で、人環・総人の一部教員が教員有志の会を結成。「国際高等教育院」構想に反対を表明し、同構想の撤回を求める運動をはじめた。その一環で、11月12日の昼休み、総人棟前広場にて街宣が実施された。

その場で教員有志らは以下のような演説を行った――教育現場を知らず、また知ろうともしない一部の人達によって、理念・理想のない場当たり的な改革が断行されようとしている。人環・総人教員が反対しているにも関わらず、当事者である教員が不在のまま国際高等教育院の設置を推し進めようとする当局の姿勢は、人事権を基礎とする「学部自治」に対する重大な侵害だ。また、京大の「自由の学風」の一つと言える、多様な教養科目の展開は、第一線の研究を担う教員だからこそ可能なものであり、国際高等教育院のような教育専門の教員にできるものではない。現在の教養教育が完璧とは言えないが、第三高等学校時代から受け継がれてきた京大の教養教育の伝統を破壊する、「国際高等教育院」構想なる愚策は阻止しなければならない。

いま、思修館が本格的に始動しようとしている。思修館の学生は、年間で約300万円の金銭的援助を受ける。これだけの資金があれば、優秀な非常勤講師を何人か雇うことができる。お金の使い道が違うのではないか――

こうした面から、「国際高等教育院」構想の方向性が誤りだと指摘する教員有志もいた。そのほか、大学の主役は学生だと述べ、学生が主体的に大学のことを考えてゆく大切さを訴える声もあがった。

現在、約35名(日々拡大中)の人環・総人教員が有志として活動している。13日以降は毎日、昼休みに吉田食堂前で街宣を実施している。ビラ配布や演説のほか、署名活動も行っている。この活動はしばらく続き、いつまで続けるかは決まっていない。

また11月14日、人間・環境学研究科棟に折田先生が登場した。折田先生は「理念なきトップダウン改革から自由の学風は生まれない。どうか、国際高等教育院をつくらないでください」と訴えかけている。