文化

不安定な私を規定する同一性 三菱商事プレゼンツFMフェスティバル「未来授業」

2012.11.01

10月29日、三菱商事プレゼンツFMフェスティバル「未来授業」が京都大学医学部芝蘭会館で開催された。FMフェスティバルは毎年1回、JFN加盟全局で同時ネットワーク開催される特別番組。2010年以降は各専門分野で活躍する有名講師を招き、大学生と直接議論を交わす「未来授業」を各局が開講している。今回開催された「未来授業」はFM大阪が主催するプログラムで、分子生物学者で青山学院大学教授の福岡伸一氏が講演を行った。講演テーマは「アナタはご本人様でいらっしゃいますか~動的平衡の中で考える」。会場は京都大学の学生をはじめ、京都市内外の大学生で満員となった。

講演は福岡氏と大学生のディスカッション形式で行われた。はじめに福岡氏が「日本人を規定するものは何か」と問いかけると、学生達は普段意識しない難問に悩みながらも自分の意見を福岡氏にぶつけ、議論を白熱させた。

1時間に及ぶ議論の中で、福岡氏は生物学的に見れば人種問題は極めて曖昧な問題であり、それどころか「私」を規定する記憶や身体さえ不安定なものだと語った。身体を構成する細胞は、他の細胞との関係の中で役割を分担し不確定に変化するという。

議論の最後に福岡氏は、「私」も「人種」も身体の内部に同一性を担保するものはなく、あくまで社会など外部にある関係性の中で構築される流動的なものであると結論した。

講演が終わった後も学生の質問は止む事はなく、「未来授業」は大盛況のうちに幕を閉じた。なお、この講演の模様は、11月23日の15時から18時と同月24日の22時から22時55分にかけて茂木健一郎氏を司会に迎えてJFN38局で放送される。(羊)