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修士論文の廃止を提言 中教審が設置基準の改定案示す

2011.12.01

文部科学省の詰問機関である中央教育審議会は、10月26日、今年1月23日に出した答申「グローバル化社会の大学院教育」に基づき、博士課程前期において修士論文に代る新しい質保障のプログラム「博士論文基礎力審査(Qualifying Examination)」を導入できるよう、来春をめどに大学院設置基準を改正する方向性を打ち出した。

従来の大学院教育博士課程は、前期(いわゆる修士課程)2年と後期3年に区分する区分制博士課程と5年一貫制の博士課程が混在しており、前者が主流となっている。前期の終了にあたっては修士論文や課題研究の審査が課程修了の要件となっている。

審議会の資料等によると、今後は5年一貫の教育プログラムを重視。中でも前期課程を「専攻や関連する分野の幅広い科目履修を通じて、専門的知識の基礎を修得し、後期課程で論文研究を行える能力を養う場」と位置づけ、そうした「基礎的能力」の質を審査する仕組みとして、課程修了時に博士論文基礎力審査を導入することが必要なのだという。

この「審査」について、具体的にはアメリカの大学院教育で導入されているQualifying Examinationを参考とし、①博士論文で研究する学術分野および関連分野の専門的知識及び能力を評価するための筆記試験、②研究分野についての背景知識の蓄積や、研究能力を測る口頭試問、が想定されている。

また前期課程終了時で就職や他大学院進学により、当該大学院教育を離れる院生については、修士論文・課題研究を残すという。

同審議会では、今年1月31日付けで答申「グローバル化社会の大学院教育~世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために~」を発表。博士号取得者が産官学の中核的人材としてグローバルに活躍できるような、質の保障された大学院教育体制の確立が必要である、としていた。その後26日まで数回にわたって「博士論文基礎審査」のシステム設計について議論を進めていた。

京大の松本紘総長は、10月27日の記者向け懇談会で、この件について「報道で初めて知ったこと」とコメント。各研究科についても、現時点でこの措置を受けた具体的なカリキュラム変更の動きは発表されていない。