生態研 サルの腸内細菌 食物の季節性に適応 冬に葉の発酵能力が向上
2025.10.01
京大生態学研究センターの半谷吾郎准教授、Lee Wanyi特定助教らの研究グループは、ニホンザルの腸内細菌叢の種の構成と発酵機能が、季節による食物の種類の変化に応じて柔軟に変化することを発見した。特に、果実や種子の得にくい冬に、葉を発酵させる能力が向上することがわかった。季節により変動する栄養環境に適応するうえで腸内細菌叢が果たす役割について理解が進み、野生動物の保全や飼育動物の健康管理に資することが期待される。
ニホンザルは果実や種子を主食とするが、それらが利用できない季節には、代わりに葉や樹皮など栄養価は低いが手に入りやすい資源を食料とする。葉や樹皮の繊維質はサル自身の酵素では分解できないため、腸内細菌が発酵により繊維質を分解し、エネルギー産生を担っている。これまで霊長類を含む多くの動物で、腸内細菌叢の種構成が食性の季節変化に応じて変化することは知られていたが、種構成の変化と発酵機能・エネルギー産生との関係はわかっていなかった。
研究グループは、屋久島に生息するニホンザルを対象に、1年間にわたって糞試料の採取と行動観察を行った。糞に含まれる腸内細菌叢の種構成を遺伝子解析により調べ、行動観察ではサルが食べる食物の種類、量、食べる時期を記録した。また、腸内細菌の発酵能力を評価するため、生きた腸内細菌を含む糞試料に、消化しにくい葉と消化しやすいサル用エサを加えて試験管内で混合し、発酵過程で産生されるガスやエネルギー源である短鎖脂肪酸の量を測定した。
その結果、冬の低栄養期には、葉を効率よく発酵できる腸内細菌の割合が増えた一方、果実や種子は季節を通じて多様な細菌により発酵されることがわかった。サルの腸内細菌叢は、消化しやすい食物に対する発酵能力を常に維持しながら、それらの食物を得にくい時期には葉の発酵能力を高めてエネルギーの不足を補うことが示唆された。
本研究により、腸内細菌叢が宿主の食性の季節変化に応じて種構成を変え、季節ごとの食性に合った消化能力をもつことで、栄養環境の大きな変化に宿主が適応しやすくなることが明らかになった。このように野生動物の腸内細菌叢についての知見が蓄積されることで、たとえば飼育下の動物が野生個体に近い腸内細菌叢をもつことを可能にする方法が考案・改良され、野生復帰の成功率が上がることなどが期待される。
本研究成果は、9月1日に国際学術誌「Ecology and Evolution」にオンライン掲載された。
ニホンザルは果実や種子を主食とするが、それらが利用できない季節には、代わりに葉や樹皮など栄養価は低いが手に入りやすい資源を食料とする。葉や樹皮の繊維質はサル自身の酵素では分解できないため、腸内細菌が発酵により繊維質を分解し、エネルギー産生を担っている。これまで霊長類を含む多くの動物で、腸内細菌叢の種構成が食性の季節変化に応じて変化することは知られていたが、種構成の変化と発酵機能・エネルギー産生との関係はわかっていなかった。
研究グループは、屋久島に生息するニホンザルを対象に、1年間にわたって糞試料の採取と行動観察を行った。糞に含まれる腸内細菌叢の種構成を遺伝子解析により調べ、行動観察ではサルが食べる食物の種類、量、食べる時期を記録した。また、腸内細菌の発酵能力を評価するため、生きた腸内細菌を含む糞試料に、消化しにくい葉と消化しやすいサル用エサを加えて試験管内で混合し、発酵過程で産生されるガスやエネルギー源である短鎖脂肪酸の量を測定した。
その結果、冬の低栄養期には、葉を効率よく発酵できる腸内細菌の割合が増えた一方、果実や種子は季節を通じて多様な細菌により発酵されることがわかった。サルの腸内細菌叢は、消化しやすい食物に対する発酵能力を常に維持しながら、それらの食物を得にくい時期には葉の発酵能力を高めてエネルギーの不足を補うことが示唆された。
本研究により、腸内細菌叢が宿主の食性の季節変化に応じて種構成を変え、季節ごとの食性に合った消化能力をもつことで、栄養環境の大きな変化に宿主が適応しやすくなることが明らかになった。このように野生動物の腸内細菌叢についての知見が蓄積されることで、たとえば飼育下の動物が野生個体に近い腸内細菌叢をもつことを可能にする方法が考案・改良され、野生復帰の成功率が上がることなどが期待される。
本研究成果は、9月1日に国際学術誌「Ecology and Evolution」にオンライン掲載された。
