京大と府市 連携協定を締結 「包括」は初、詳細は今後協議へ
2025.04.01

会見で締結書を手にし、撮影に応じる三者。左から順に湊総長、西脇知事、松井市長
三者は協定に基づき、主に博士課程以上を修了した研究者を対象に、京都の歴史的建築物や研究施設の見学会を実施して、京都と京大の魅力を共同で発信する。特に留学生や外国人研究者に対しては、円滑な受け入れを目指し、オンラインでの行政手続きや生活情報などの案内を行う「ウェルカムパッケージ」を新設する。また、京都への定着を狙い、京都にある他大学と協力して、留学生らが地域住民や企業と交流する場を設けるという。
三者は他にも、特定の科学技術で社会課題の解決を図る企業の創出や育成で連携する。具体的には、国内外の金融機関や投資家から資金を集めつつ、起業家らを対象に、研究場所を提供したり、支援者との交流機会を拡大したりするという。加えて、医療や半導体といった府市が注力する産業分野の振興においても連携を強化する。
協定は3年間を期限とし、特段の申し出が無ければ継続する。この協定により、世界から集まった多様な人材による技術の創造や、国際的な学術都市の形成を目指すという。
会見で京大の担当者は、今回の協定は京大が呼びかけたと説明。一大学では地球規模の課題解決には限界があること、さらに、三者とも将来に向けた変革期を迎えていることを挙げ、「これからの時代を切り拓いていく思いで一致した」と明かした。具体的な取り組みに関しては、今後、1、2カ月に一度ほどの頻度で協議を行い、確定していくという。
西脇知事は「京都の産業振興を考えるうえで、京大の存在は非常に大きい」と話し、今回の締結を「大変嬉しい」と述べた。
これまでの府市との協定
京大と府、もしくは京大と市が、個々の事業で協定を結ぶケースは以前にも存在した。2017年には、百万遍に留学生用の宿舎を新設する事業で、京大と府が協定を結んだ。
内容が多岐に及ぶ包括的な連携協定の前例としては、07年に市教委と締結したものが挙げられる。その際には、教育学研究科の駒込武准教授(当時)が本紙に寄稿。ある事業への個人の協力は「事業の性格にしたがって是々非々で判断すればよい」としつつも、包括的な協定締結には疑問を呈し、「市教委による事業の適切さを学問的に評価し、場合によっては批判する作業が萎縮してしまわないか」と主張していた。今回の締結でも同様の懸念が考えられる。