色褪せぬ物語を味わう 春秋講義「古典の世界」(2021.03.16)

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1月13日から、春季の春秋講義のオンデマンド配信が開始された。今回は「古典の世界」をテーマとして、数ある古典文学の中でも『三国志』、『源氏物語』、そしてシェイクスピアの作品に関する3つの講義が配信されている。

京大名誉教授の金文京氏は、正式な歴史書である『三国志』と、小説の『三国志演義』を通して、中国の三国時代について考察した。両者とも魏、呉、蜀という三つの国について描いたものだが、『三国志』では魏を、『三国志演義』では蜀を正統な王朝だとみなす点が異なっている。この場合の「正統」とは古代中国の世界観に基づいた見方だ。当時は、天の命令で中国とその周辺世界を統治する皇帝は、ひとりだけだと考えられていた。三国時代のように、複数の国が並び立った場合は、正統な皇帝を除いた他の皇帝たちは偽物だとみなされる。これは外交の根底にもある考え方で、周辺諸国の王は、中国の皇帝によって現地の支配権を「認められる」関係だった。こうした世界観は現代中国の政策などにも影響を与えており、三国時代には、中国をめぐる社会問題を考えるためのヒントがあると金氏は述べた。

文学研究科教授の金光桂子氏は、『源氏物語』がのちの時代の物語に与えた影響について講義を行った。具体的には、『狭衣物語』『浜松中納言物語』『とりかへばや物語』の中で、『源氏物語』の前半部分と共通する要素に注目した。中でも特徴的なのは、源氏以前の物語には存在しない、「密通による子の誕生」という要素だ。『源氏物語』の主人公・光源氏が、父である桐壷帝の妃、藤壺との間に子を設けてしまうように、三つの物語すべてにおいて、秘密の男女関係が成立し子供が生まれている。特に『狭衣物語』では、主人公の狭衣が、臣下に下った天皇の孫という身分から、最終的に天皇にまで昇り詰める。この構造は、光源氏が天皇の息子として生まれ臣下に下るも、最後には上皇に準ずる準太上天皇の位につく『源氏』の流れに非常に近い。この類似は、『狭衣』の作者が『源氏』のストーリーの意外性に魅力を感じていたことを示しているという。

最後に、文学研究科教授の廣田篤彦氏は、シェイクスピアと古典の関係を二点に分けて論じた。ひとつはシェイクスピアにとっての古典という視点で、当時はラテン語やギリシア語の文献が古典とみなされていた。シェイクスピア自身は学校でラテン語の文法を学んでいたため、ある程度ラテン語を読むことができたと考えられる。そして作品の中には、古典文学を題材にしたものが数多くあるという。例として、『タイタス・アンドロニカス』という作品では、古代ローマの詩人・オウィディウスの『変身物語』がせりふの下敷きとなるだけでなく、本そのものが、小道具として舞台上で使用されていた。もうひとつの視点は、シェイクスピアの作品が古典作品とみなされていく過程だ。彼の戯曲集は大判の二つ折り本で出版されるようになり、上演に使用される台本から蔵書へと変化した。さらに、イギリスの植民地拡大と、現代に至るまでの英語の普及に伴い、イギリスを代表する文化的財産に位置づけられていったという。

春秋講義は、京都大学が蓄積した研究成果を一般の市民と共有するため、毎年春と秋に開講されている。今回のオンデマンド配信は、3月26日まで申し込みを受け付けており、同日17時まで公開予定である。(凡)

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