消費税増税と最低賃金改定 京大周辺から影響を探る(2019.10.16)

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10月1日から生活にまつわる金銭関係の制度について2つ変化があった。1つは税の公平な負担をうたう消費税の税率引き上げ、もう1つは毎年10月に行われる最低賃金の改定だ。どちらも前回の変更が記憶に新しく真新しさを感じないかもしれない。ただもうそろそろ、値札や給与明細など、日々の生活の中でどこか変化していることに気付かされる頃だろう。これらお金にまつわる変化が学生にどのような影響を与えるのか、京大周辺から探ってみた。(編集部)

今回の消費税増税のポイント


10月1日に消費税率が8%から10%に引き上げられた。今回の増税で新設されたのは軽減税率とポイント還元制度だ。

軽減税率は食料品など一部の物品に課される消費税を、増税前と同じ8%に据え置く制度。食料品は原則、食品表示法に定められた「人の飲用または食用に供されるもの」で、お菓子類や清涼飲料も対象になる。

個別の法律が設けられる酒類や医薬品は対象にならない。同じ栄養剤でも、健康食品と医薬部外品では税率が異なる。

また、提供された店でそのまま食べる「外食」が対象外になるほか、食玩など食品ではないものと抱き合わせで売られるものについては価格で対象になるかが決まるなど、煩雑さが指摘されている。

軽減税率と同時に新設されたのがポイント還元制度だ。クレジットカードやQRコードなどでキャッシュレス決済をしたとき、税率の一定額をポイントとして還元する制度だ。中小企業の店舗で決済すれば5%分が戻ってくる。また大手企業でも、別会社に自社と同一のブランドの使用権を与えて運営させる、フランチャイズ経営の店舗であれば2%還元される。コンビニなど一見、直営とフランチャイズの判別が難しい業界では、会社が持ち出す形で直営店舗でも同額をキャッシュバックする動きもみられる。

これら新設された措置は、消費税増税の影響を低めるため例外として定められたとされる。ポイント還元制度は来年6月までが期限と定められているが、軽減税率については現時点で言及はない。

消費税の税率引き上げは今回で4回目になる。商品やサービスに広く課税するこの制度は、1970年代前半から検討され、2度の取り消しを経て1989年に税率3%から出発した。当初引き上げないとされた税率は、1997年地方自治体が直接税を課すことができる「地方消費税」が盛り込まれ5%となる。その後財政の健全化をうたう国際合意を受け、最終的に10%への引き上げを念頭にした税法制が2011年に決定、2014年には税率が8%へ引き上げられた。

今回の最低賃金改定のポイント


10月1日に京都府の最低賃金が909円に改定された。27円の上昇で、約3%値上げされた。今回の改定で引き上げ対象になる労働者の割合(影響率)は京都府で18・1%だ。

例年、最低賃金は東京都が最も高額になるが、地域ごとで最低賃金の差がどの程度大きくなるかが注目されてきた。今回東京都は最低賃金が1013円で、京都府より104円高い。東京都と京都府の最低賃金の差は前回の改定からプラス1円、10年前の改定から42円大きくなった。

最低賃金の金額は厚生労働省の審議会が毎年会議を開いて決める。かつては日給と時給の両方が定められていた。消費税が設けられた1989年の金額は京都府南部で日給4057円、時給508円。また京都府の影響率は1992年に1・7%だった。

近年、年ごとの最低賃金の上昇額は20円台で、前年比3%前後で変化している。これは過去20年間で高水準だ。要因としては、少子高齢化で人手が不足し、賃金が高くなりやすいことや、政府が年3%程度の引き上げを求めていることなどが挙げられている。ただ近年の物価上昇が年1%ほどであり、取引する金額が大手企業に比べて相対的に少ない中小事業者では、賃金の上昇に収益が追い付かず年々支出の額が大きくなることもあるという。

最低賃金については、使用者が最低賃金額以上の給与を支払うよう法律で定められている。最低賃金未満の賃金が労働契約で定められていた場合は、法的に最低賃金と同額の賃金が支払われるよう契約が結ばれたものとみなされる。また実際に最低賃金未満の賃金が支払われた場合は、被用者は使用者に最低賃金との差額を法的に請求することができる。

京大周辺では?


京大

京大は10月1日から施設費用や附属病院の診察料などを改定した。今回の改定については消費税増税などが要因だという。

京大病院は「諸料金規程」を改定した。診察料に関する規程について、これまで消費税の税率が変わるごとに改定していたが、今回「消費税相当額」を診察料に加算するよう変更した。この規程は10月1日から適用される。また、各病院の診察を確定する「病理診断」を受諾する費用についても同様に規程が改定された。

京大は外国籍研究者や留学生が居住する国際交流会館について「諸料金」を改定した。水道代やインターネット利用費などに関わる費用として徴収していたもので、今回の改定で約2%値上げされた。また、施設を立ち退く際の清掃費についても同様に値上げされた。

京大は10月1日の最低賃金改定により、新しい最低賃金を下回る額で雇用されていた労働者に対し、労働単価を改定した。時給や日給など時間給で雇用されている労働者は全学で8667名という。

京大生協

京大生協は10月1日の消費税増税にあたり、原則増税分を値上げした。軽減税率についても、店舗で購入する食料品などで適用しているという。コピー機の料金については今回の増税を受けて、コピーカードの価格を値上げした(1度数約9・6円など)ものの、電子マネー(白黒1枚9円)や現金(同10円)で支払う場合の料金は据え置いたため、一回の印刷あたりで電子マネーでの支払いがよりお得になった。

ポイント還元については、生協の電子マネーのみ対応している。京大生協によると、今後各種クレジットカードにも対応する予定だが時期は未定という。

また、ポイント還元制度については時計台1階の「京大ショップ」以外で対応している。「京大ショップ」以外の店舗ではキャッシュレスに対応する機材がすでに置かれており、ポイント還元に対応できた。「京大ショップ」では学外者の利用が多く、キャッシュレス対応の機材を置いておらず、今後も設置の予定はないという。

また、京大生協は10月1日から学生アルバイトの時給を引き上げた。10月からの時給は、販売や事務にあたる学生が910円、食堂などで勤務する学生は915円となり、それぞれ10円の引き上げとなる。社会人アルバイトの時間給は変更されなかった。生協担当者は「労働市場や労働単価を見て賃金を決めている」と説明した。

喫茶店

東一条通りのある喫茶店では、増税分に加え10月から一部の商品の本体価格も値上げした。20年以上据え置きだったが、原材料費の高騰や大手資本との競争激化が原因で値上げに踏み切った。

この店は家族経営で、最低賃金値上げによる賃上げは行わなかった。店員は、スタッフとして働く家族の年齢を考え「アルバイトの雇用も検討しなければ」と話しており、今回の価格改定にはこうした将来の投資に備える一面があることも覗かせた。

また、この喫茶店では飲食品のテイクアウトを設けているが、「来てくださる方を第一に考えている」ことから、本体価格を調整しイートインの場合と同額で販売している。

ポイント還元は、現在キャッシュレスに対応していないため実施していない。利便性の面から導入の準備を進めているが、クレジットカードや電子マネーを持っていない客がいることを考えると不公平感はぬぐえないという。店員は「学生街にある安い喫茶店という理想と現実のギャップに悩んでいる」と複雑な心境を語った。

定食屋

鞠小路通りのある定食屋では、客へのサービスのため、酒類も含め10月から値上げはしなかった。魚料理を売りにする店舗だが、それぞれの魚が高騰したときにも値上げしてこなかった。客からは「値上げしなくてありがとう」と言われたこともあったそうだ。店主は「最近はアルバイトを雇わないで、夫婦の家族経営を続けてきたからこそ持ちこたえられているのでは」と話した。

またこの店舗ではキャッシュレス決済に対応した機材がないため、ポイント還元も行わない。理由にはキャッシュレス導入の負担が重いことや、システムの安全性に対する不安を挙げた。

10月に入ってからの変化については「京大の秋学期が始まり一時的に忙しくなるのは例年のことなので、それが終わってみないと分からない」という。

銭湯

京大近くのある銭湯では10月から入浴料金が450円になった。この銭湯は京都府の浴場組合に加入しており、同組合が決めた統一価格の改定に合わせてのものだ。
また、この銭湯では、飲料品や理容用品を販売しているが、価格は増税前から据え置き、イートインと持ち帰りの区別もしていないという。番台は「消費税制度やキャッシュレス決済に反対しているから」という。

この番台に消費税増税の影響を聞くと、入浴料金が上がって空いている日が増えたという。番台は「銭湯の数もかなり減ったが、これ以上行き控えが続けば廃業する店も出るのではないか」と話した。

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