公開セミナー 象牙問題の現場から語る 日本人に問われる自覚(2017.12.01)

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11月20日、京都大学東一条館で全学公開セミナー「地球規模の複合的課題解決に挑む」が開かれた。講師は、中部アフリカで20年以上にわたって自然環境の保全に携わってきた西原智昭氏。ゾウの密猟を中心に、日本も深く関わる中部アフリカの問題について語った。

西原氏は、野生生物の保全を進めるNGO「Wildlife Conservation Society(WCS)」に身を置き、中部アフリカの熱帯林で調査研究を進めてきた。その道に入ったきっかけは、京大の研究員としてフィールドワークをしていた際にWCS職員から言われた言葉――「日本もゾウ問題と深く関わっているのに、君はどうして保全活動をしないんだ」。何となくしか知らなかったゾウと日本の関係を、保全活動の現場で考えさせられたという。

ゾウと日本をめぐる問題といえば、日本国内における象牙取引の市場が密猟や密売を招いている可能性がある。世界的には、たとえ国内市場における合法な取引であっても禁じるべきとの声が強い。ところが日本は印鑑や楽器における最高の素材として象牙が欲しいため、今後も取引を続ける構えでいる。もちろん国は管理体制を強める方針を打ち出してはいるが、それでも国内にある象牙すべての動きを把握することは難しい。

西原氏によると、特に上質な象牙を持つとされるのがアフリカの森林部に棲むシンリンゾウ(マルミミゾウ)だ。しかし、2006年から2011年の間でコンゴ共和国北部に棲む個体の半数にあたる5000頭が姿を消しており、生息域も狭まりつつあるという。さらに死体の検分によって、多くの死因は病気などではなく密猟である線が濃いと分かっている。

日本の国内市場が密猟を招いているかもしれない以上、日本はこの問題と無関係ではいられない。そもそも、シンリンゾウが数を減らすことで熱帯林の生態系が崩れ、豊かな森を保ち続けることができなくなれば、日本を含む地球全体の気候に影響が出てくる。その点から考えても、やはり日本は保全に向けて動かなければならないと氏は指摘する。

保全に取り組む際に最も重要なのは、関係者各位による「対話」だという。保全に向けて動く科学者や愛護団体、生活の困窮から密猟に走る住民、汚職の少なくない現地政府、伝統音楽の演奏者に代表される日本における象牙の消費者、国内市場を密輸の温床にしてしまっているかもしれない日本政府など――各者が互いの事情を考えつつ、それぞれの主張を折衷できるよう対話を交わす方向に動かなければならない。それすらできていない現状を打開するにあたって、自分たちにもできることを考えていく必要があると氏は訴えた。

本セミナーは京都大学大学院・総合生存学館「思修館」が主催する「国際教育セミナー」の一環。これまで学館生のみに向けて開いていたものを、今年度より全学にも公開した。今後も国際的に活躍する人物を招いて京大生に向け講演を開く。(賀)

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