本当の平和構築と日本の役割 連続セミナー「平和構築とは何かを考える」(2017.07.16)

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6月30日、人文研アカデミー連続セミナー「2017年の論点――沖縄、子どもの貧困、地方消滅、南スーダン」の第4回「平和構築とは何かを考える――自衛隊のPKO派遣と南スーダン」が開催された。大阪大学大学院人間科学研究科の栗本英世教授が、自衛隊も派遣された南スーダンでのPKOを例に、平和構築に必要なことや、日本の役割について語った。
 
平和構築とは、国連の定義によれば「戦争から平和への移行期にある国や地域を支援すること」であり、「紛争を平和的に解決し、一般市民を保護し、人権の尊重を保障する能力を持つ国家」を新しく建設することがその中心である。しかし現実には、内戦で荒廃し、国民が敵味方に分断された国において、外からの支援によって短期間のうちに、一から国家を建設することは極めて困難だと栗本氏は指摘する。
 
南スーダンでは、1983年に第二次スーダン内戦と呼ばれる内戦が勃発した。2005年の内戦終結後、11年には南スーダン共和国が独立した。この年国連はPKOとして、国連南スーダン派遣団(UNMISS)を派遣した。日本政府も翌年1月から、今年5月の撤退まで、11次に渡って自衛隊を派遣している。しかしこの間、13年に内戦が勃発し、15年に一旦は和平合意が成立したものの、翌年7月には再び内戦に突入した。
 
人類学者として南スーダンのパリという民族を調査した栗本氏は、南スーダンに派遣されたPKOは現地の人々とは無縁の存在であると言う。内戦により、パリの人々は周辺の民族との交流が途絶えてしまっている。また学校や井戸など、生活に必要な設備は不足したままだ。こうした現状を改善することが本来平和構築のはずだが、PKOはほとんど役立っていないという。
 
次に、栗本氏は自衛隊の南スーダン派遣について述べた。日本では、PKO参加5原則など日本の内部事情を中心に議論されることが多く、南スーダンでの日本の役割について論じられることがない。また、PKOについて基本的な事実が理解されていないという。例えば、派遣された自衛隊が日本政府ではなく国連の指揮下に入ることや、13年の内戦勃発以降、PKOの最重要任務が平和構築から住民保護に変わったことなどだ。そのため、自衛隊の新任務「駆け付け警護」で現地の日本人を保護するといった、本来PKOの任務ではないことが議論されている。また、自衛隊派遣の意義そのものにも疑問を呈した。自衛隊が軍隊でないと現地の人に理解してもらうのは不可能であり、また南スーダンでの自衛隊の任務だった道路整備は、ODAで十分可能だという。
 
結論として、南スーダンの平和構築では、国家建設やインフラ整備ばかりが重要視され、地域社会の再生といったことは軽視されている。平和構築の主体はその地域の住民であり、日本の果たす役割もそれを踏まえて検討されなければならないと結んだ。
 
後半は、京都大学人文科学研究所の石井美保准教授が講演に対してコメントし、リベリア内戦を例にアフリカの内戦や難民の問題について語った。日本では、アフリカでの紛争の原因がアフリカの人々の民族対立にあるとされることが多い。しかし、それらの民族は本来は互いに交流する流動的なもので、対立し合うものではないという。リベリア内戦で難民化した人々がコートジボワールに逃れ、元は同じ民族だった人々に受け入れられているなど、実際には国境を越えて民族が交流し、相互に依存している。石井氏は栗本氏の講演内容も踏まえ、内戦を本当に解決するためには、民族の歴史や本当の姿を知ること、地域の人々にとって何が必要なのかを考えること、また内戦の原因として、民族対立よりも大国の利権争いの代理戦争という側面があることを知ることが必要だとまとめた。(雪)

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