文化財保護と寮祭を巡る歴史 連続セミナー「21世紀の京都大学吉田寮を考える」 (2017.07.16)

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15日、京都大学楽友会館で連続セミナー「21世紀の京都大学吉田寮を考える」の第3回が開催された。寮生有志が実行委員会を組織して開いたこのセミナーは、寮自治会と大学当局との老朽化対策交渉が膠着する中、吉田寮の今後のあり方について考えるために様々な立場の人々と意見や情報の共有を行うことを目的としている。今回は、京都市文化財マネージャーの河野康治氏と元寮生の上田実氏がそれぞれ、文化財と吉田寮、吉田寮の祭を巡る歴史について語り、参加者と意見を交わした。
 
河野氏は2012年京都市文化財マネージャーを務める立場から、文化財としての吉田寮現棟の保護の可能性を考えている。今回のセミナーでは、自身の知識を生かして文化財制度を概説した。文化財には、管理における制約の強い順に、「国宝」、「重要文化財」、「指定文化財」、「登録文化財」がある。京都市の文化財保護課のなかでは吉田寮現棟がこのうち「登録文化財」に相当すると認識されているという。ただ、実際に登録するには所有者として総長や施設部の意志表明が必要となる。河野氏は、文化財の価値を持つと認識されていながらも登録に至らず立て壊しになった建築物が少なからずあることを踏まえ、後手に回らない方策を考えていく必要があると述べた。
 
上田氏は寮祭の歴史を取り上げた。近年では毎年5月に行われている吉田寮祭の起源をたどると、京都帝大の寄宿舎時代の1930年12月に始まった「自炊制度記念祭」がある。これは、炊事を担当する労働者を舎生自らが雇う「自炊制度」の開始を記念した祭で、その後毎年12月に開催される寮祭として定着していった。戦後も続けられた寮祭は、72年に一度中止される。きっかけは、同年の卒業生追い出しコンパの後、看護学校寮に集団で押し掛けて大声を出しながら廊下を闊歩する「ストーム」を行ったことだった。この際に差別発言があったことが問題視されたのだ。この問題の根っこにあるエリート意識や女性蔑視の考え方が問い直されるなかで、寮祭はそのあり方が見直されるまで開催しないことになった。しかし、それは実行されないまま、「寮生の素朴な欲求」を名目に80年に寮祭は復活する。復活後には、三条大橋から出町柳まで鴨川を逆走する「鴨川レース」や仮装して授業に乗り込む「仮装決起」といった企画が始まり、現在まで続いている。
 
寮祭ひとつを取り出しても分かるように、吉田寮を巡っては長い歴史がある。寮の建物も同じで、帝大の寄宿舎時代に閉鎖になったことも、現在の薬学部構内にあった西寮が88年に撤去に至ったこともある。こういった事実を踏まえて、上田氏は「いま目の前にある建物だけがすべてではない」という見方を提示する。そして、過去のさまざまな出来事を経験のひとつとして参照し、歴史に学ぶことは今後のあり方を考えていくなかで意味があると述べた。
 
連続セミナーは昨年の9月から開催されており、今回で第3回目となった。実行委員会によれば、第4回は今年の秋の開催を目指しているという。(小)

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