〈ドイツ滞在記第2回〉アルペン地方のクリスマス(2017.01.16)

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私はドイツのミュンヘン大学に9月から留学している。一年間ドイツ「特派員」として記事を書いていくつもりだ。今回は第2回目。

アルプス山脈をまたぐ地域には文化に多くの共通点がみられる。クリスマスが特にそうだ。12月上旬にオーストリアや南ドイツなどのアルペン地方で行われる行事を紹介したい。(束)

聖ニコラウスとサンタクロース
私が現在留学しているバイエルン州のクリスマス関連の行事は12月5日から始まる。この日は多くのキリスト教文化圏で、3世紀前半に南地中海付近で恵まれない人々を支える活動をした聖ニコラウスを讃える日となっている。聖ニコラウスは貧しい子供に贈り物や少しの金品を分け与えていたことからサンタクロースの起源とも言われる。

5日の夜に磨き上げた靴を玄関に用意すると、白いひげに赤い祭服を身にまとい、金の司教杖を持った聖ニコラウスに扮した男性が靴にお菓子を入れてくれる。しかし、お菓子をもらえるのは一年の行いが良かった子供のみで、悪かった子供の靴には小枝だけが入れられる。

お仕置係の怪物クランプス
バイエルン州の聖ニコラウスは、行いが悪かった子供にさらなる仕打ちを用意している。12月上旬にクランプスと呼ばれる怪物を引き連れて街を練り歩き、行いの悪い子供のしつけをして回る。

このクランプスはもともとキリスト教とは関係なく、紀元前の北欧神話が由来と言われている。ドイツ語の krampen (鉤爪)に由来するクランプスは大きいヤギの角を生やし獣のような毛皮を身にまとっており、長い舌を持ち悪魔のような形相だ。キリスト教伝播後では、慈悲深い聖ニコラウスの代わりに人々の行いを正す付添人として畏怖されているようだ。

金属の鐘を腰に巻き、大きな音を鳴らしながら女性や子供に突進し、ときには樺の木で鞭を打つ。クランプスに扮する人の多くは190センチ近くもあるドイツ人男性であり、かなりの迫力である。親の言うことを聞かなければクランプスがカゴに押し込み地獄に連れていくと子供たちに教えることで、コミュニティー全体で子供への教育が行われる。この点は、大晦日に地域の各家にまわり子供を怖がらせる秋田のなまはげ文化に通じるものがある。

町おこしのクランプス
クランプス自体は紀元前の神話に由来するが、クランプスが子供たちをお仕置きするという風習はおよそ500年前に始まった習慣と言われている。しかし長い間カトリック教会から迫害を受け続け、近代では第二次世界大戦前のファシズム体制オーストリア政府に禁じられ、長らく日の目を見ることなく主に農村部でひっそりと続けられていた。しかし近年では、教会によるクリスマスの伝統から少し外れたクリスマスも体験したいと考える人が増え、クランプスの行事が各地で復活しつつある。

私が滞在するミュンヘンでも、2004年から12月に2回クランプス関連の行事が行われている。その名もKrampuslauf 「クランプスが走る」という意味だ。市庁舎の前に広がるクリスマスマーケットで、クランプスに仮装する37の市民団体をドイツやオーストリア各地から誘致し、陽気なお祭りとして毎年多くの観光客を呼び寄せている。

クリスマスマーケットとクランプスで街が賑わう一方で、クリスマスの商業化を批判する人もいるようだ。また、人々をより怖がらせようと追いかけまわし鞭で打つパフォーマンスが過激なあまり、子供にトラウマを抱かせる可能性があるとして鑑賞の年齢規制を議論する市町村もある。復活した「伝統」と今後どのように折り合いをつけていくかが課題となっているようだ。

【参考】
http://www.muenchen.de/veranstaltungen/event/7152.html
http://news.nationalgeographic.com/news/2013/12/131217-krampus-christmas-santa-devil/
http://www.stnicholascenter.org/pages/who-is-st-nicholas/

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