新入生歓迎企画 ポケゼミ受講体験記(2015.03.16)

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合格発表も束の間、新一回生は入学手続きや新生活の準備に追われ、忙しい日々を送っていることだろう。そんな新一回生が注意を払わなければならないことのひとつに、履修登録がある。大学では原則的に自分の受けたい講義は学期のはじめに登録しておかなければ単位が認定されない。これをしくじると大変なことになるから、ガイダンスなどをよく聞いて十分注意しておきたい。

なかでも必要な手続きの期限が迫っているのが「ポケット・ゼミ」である。全学共通科目のひとつで、新一回生のみを対象とした少人数制の授業だ。受講は任意で、先生の話を聞くだけのものから、実験を行うもの、宿泊を伴って実地研修をするものまで様々。大学紹介冊子『知と自由への誘い』やガイダンスで既に知っている人も多いことだろう。今号では、このポケゼミについて紹介する。シラバスだけでは伝わらないような、ポケゼミの姿を知ってほしい。

少人数制だから、出来ること


ポケゼミの特徴は、少人数制のため教員との距離が近いことだ。少人数の講義やゼミはポケゼミ以外にもあるが、新一回生のみが対象というものは少ない。国際高等教育院によれば、「教員が学生に直接話しかけることにより、新入生に学問に対する興味をもってもらうこと」がポケゼミの目的であるという。「新一回生向け」であることも、ポケゼミの大きな特徴なのだ。

前期は全部で187講座が用意されている。もちろん、必ず受けなければならいないものでもない。どれを受講しようか、あるいはポケゼミを受講しないでおこうか迷っている新一回生も多いことだろう。4月8日の予備登録締め切りまで残された時間は少ない。ここからは、編集員によポケゼミ体験記を掲載する。新一回生のポケゼミ選びの助けになれば幸いである。 (編集部)

チェーンソーで木を伐採

『森を育て生かす―林業体験を通して考える』

このポケゼミは、夏休みに3泊4日にわたって行われる集中講義だ。主に京大和歌山研究林(注1)での林業体験と、高野山(注2)で行われている林業の現場の見学の2つで構成されている。参加するまではチェーンソーはおろかノコギリすら握ったことがなかった私にとって、たいへん新鮮な体験となった。また、林業のありさまや問題点などが学べて、非常に有意義でもあった。様子の一部を紹介していく。

まず初めに行った実習は、「下刈り」である。これは苗木の成長の妨げとなる雑草を、刈払い機(草刈り機)で刈る作業だ=写真左上。刈払い機には、1.7㍍ほどの棒の先に高速で回転する歯が取り付けられており、肩ひもで自分の体に吊り下げて草刈りを行う。説明を聞いて実際にやってみたが、なんと難しいのだろう! 大量の草が歯に引っかかってすぐに回転が止まってしまう。刈った後の場所も刈り残しがたくさんあって美しくない。その後、職員の方が草刈りの見本を示してくれた。私とは対照的に、慣れた手つきでスムーズに動かしており、見ていて気持ちが良い。そのうえきれいに草が刈られていた。

実習では次に、間伐という作業を行った。植えられた木が成長していくにつれ、森の中が木で混み合う。すると木々に十分な日光が当たらないなどの問題が生じて木々の成長が止まってしまうため、成長途中の木をいくつか伐採する必要があるのだ。まず、木の位置や太さ、枝の広がり方を調べて地図を作成。それを基に間伐の対象とする木々を選び、チェーンソーで伐採した=写真右下。

初めて続きの実習のなかでも特に印象的だったのは、木が倒れる瞬間の雰囲気である。木を伐採するとき、安全を確保すべく「ちょうつがい」の役目を果たす部分を幹に残すようにチェーンソーの歯をいれるため、木はゆっくりと倒れていく。ミシミシと音を立てながら倒れはじめ、他の木の枝とこすれる大きな音がそれに続く。最後に木が地面にから跳ね返る音が響き、同時に細かい枯葉などが光を反射してきらきらと舞落ちるのである。静かな森の中で響く音と輝く光。私はその神秘的な雰囲気に、驚きを隠せなかった。

和歌山研究林には実習生用の宿舎があり、3泊ともそこで寝泊りすることになる。夜は宿舎で長谷川尚史先生(京都大学フィールド科学教育センター准教授)による講義があり、林業の現状や、地方の過疎化に伴う就労者の減少などといった林業の抱える問題点について教わった。また、2日目と3日目の実習後には地元の飲食店や温泉に連れていってくださり、実習で汗を流して疲れた身にはたいへんありがたかった。

実際に林業の現場を目にし、作業を体験することで新たな発見を得られ、4日間の集中講義はとても充実したものとなった。こうした実習型のポケゼミは、ぜひおススメである。(北)

(注1)京大和歌山研究林
京都大学フィールド科学教育センターの研究林・試験地の一つで、森林などの研究のほか、学生実習のためにも用いられる。標高は低いところで455㍍、高いところで1261㍍まであり、多様な気候が存在する。アカガシ、ブナ、カエデなどによる天然林が存在するほか、スギ、ヒノキによる人工林などがある。京大吉田キャンパスからは車で3時間半ほど。

(注2)高野山
平安時代、空海が修業の場として開いたとされる仏教の聖地のひとつ。100を超える寺院が集まっている。ポケゼミでは、高野山寺領森林組合が行っている木材の伐採の様子などを見学。また、樹齢が500年を超える杉や、伝統的な建築も見学した。


体感する化学の世界

『食卓から学ぶ生命科学』

「食卓から学ぶ生命科学」は、身近なところから食に関する疑問を引き出し、1セメスターかけて研究する自発的学習型講義である。私の受講理由はいたって単純。食に関心があるから。そして、おいしさや栄養といった食の根幹をもっと深く知りたいからであった。そういった食への関心や興味を持っている学生は多くいるに違いない。しかし、「生命科学」と銘打っているからだろうか。集まったのは、理系学部で農学部4名、工学部2名に薬学部1名。文系学部では私を含めて2名しかいなかった。

第一回にテーマを決めて、一人合計3回の研究発表をすることになる。記者のテーマは「加熱と食感」。加熱の方法や程度によって食感がどのように変わるのか、また、それに伴っておいしさにどのような違いが出るのかを調べていった。最終発表は教室で実験を行うことになっており、テーマの選定は迷走もあったが、うどんのコシの違いを調べることにした。グルテン含有量が異なる中力粉、強力粉でうどんをつくるとともに、それらを異なる火力で加熱調理して食感の違いを比較した。結果として微妙な食感の違いを出すことができ、実験に参加してくれた受講生や教員においしく食べてもらった。

他の受講生は、人口甘味料や食品包装剤、お酒と発酵など多彩なテーマを研究していた。実験発表では、食べ合わせの効果を化学的に証明したり、食品添加物による食品の腐敗というテーマでおにぎりの食べ比べをしたり、糖類摂取による血圧上昇を実際に計測するなどした。

最初に想像していたのは、与えられた様々なテーマを全受講生でともに考えていくという受動的なものだったので、初めは少し困惑した。しかし、入学したてから、大学生の基本となる能動的に学ぶ姿勢を培うことができてよかった。また、自分の研究だけでなく他の人の研究にも参加することを通して、身近にある食への関心や理解がさらに深まった。ただし、一つネックだったのは、「生命科学」との講義名からわかるとおり、化学的な研究方法が求められることだ。化学をよく知らないとなかなか研究に深みが出ないし、他の人の発表をフォローするのが難しい。とはいってもそれほど知らないが興味はある世界に飛び出すのも悪くない。あまり気負わず何より自分の関心が高いものを選ぶことをお勧めする。(千)

飛騨天文台で見る天の川

『活動する宇宙』

2012年に文学部に入学した私は、理系の知識も付けたいと思ったこと、漠然と宇宙に興味を持っており、高校の地学でも宇宙について少し勉強したことから、理学研究科の柴田一成先生、嶺重慎先生が担当される「活動する宇宙」を受講した。受講にあたっては、入学式の4月6日までに受講希望理由を書いて提出する必要があった。第1回目の授業では自己紹介と授業の説明があった。受講生は8名ほどで、うち私を含めて2名が文系、女子は1名であった。その年は希望者は全員受講することができた。授業内容は、柴田一成ほか編の『活動する宇宙』と、ウルムシュナイダー著の『宇宙生物学入門』をテキストに、受講生が任意の一章を選んで内容をまとめて発表し、その後先生が詳しく解説するというものであった。

実際に授業を受けてみるととても難しかった。特にテキスト『活動する宇宙』は、学部3・4回、院生向けの本で、私にはほとんど理解できない章もあった。少なくとも、物理の知識が必要である。一方、『宇宙生物学入門』は、私でも大半が理解できる内容で、私ともう一人の文系の人はこの本から発表する章を選んだ。時々、柴田先生や嶺重先生が授業をされる日があった。

6月は、東山の花山天文台に見学に行ったほか、京大農学部グラウンドで行なわれた、地域の人々を招いて金環日食を見るイベントにボランティアスタッフとして参加した。

夏休みには、飛騨天文台に2泊3日の合宿をする。最新鋭の観測施設のほか、晴れていれば星や天の川などを見、また自由に宇宙について調べたことを発表する。食事はすべて自炊。楽しいイベントのようである。私は他の用事があり(中国に語学留学をすることになった)参加できなかったが、単位には支障がなかった。

柴田先生、嶺重先生ともに世界的な天文学者であり、一回生が両先生の少人数の授業を受けることができるのは、非常に貴重な機会だといえる。また、花山天文台や飛騨天文台という、実際の観測施設を見学することもできる。だが、内容は高度であり、受講を決める際はある程度の覚悟を持つべきだろう。(智)

江戸時代をとらえ直す

『新しい「江戸時代史」像』

「江戸時代史」。この言葉を見て、歴史が好きな私は、この授業を履修することに決めた。ポケゼミだということはあまり意識しなかった。

事前の抽選の結果、運よく私は10人の定員に入ることができた。教育、経済、法、文学部など文系の人が多かったが、農学部の人もいた。初回は自己紹介と発表の担当決めで終わった。

2回目からは本格的な授業となった。最初に担当者が本の指定された部分を要約したものを発表し、最後に疑問点を挙げる。発表が終わると、フリートークだ。発表者が挙げた疑問点を中心に教授が学生に問いかけ、議論した。

教材としては、2冊の本を用いた。一冊目は、『「学び」の復権』という本=写真。江戸時代の寺子屋における教育に日本本来の学びを見出し、日本的教育を現代に復権させることで、行き詰まっている教育の現状を打破しようと説いている。教育というとっつきやすいテーマだったこともあり、この本を扱った前半の授業では、学校や塾での自身の経験に基づいて多くの人が積極的に発言していた。

後半は『江戸時代とはなにか』という本を使った。全体としては江戸時代について書かれた本ではあったが、授業で議論したのは新しい日本史の時代区分の仕方や日本の宗教、近代天皇制などを論じた部分だった。江戸時代における「役」の観念など、抽象的なものを扱うこともあったため、前半と比べると発言は少なかったように思う。

私は,この授業をとっていてよかったと感じる。一回生のうちから教授と直接話せたからだ。また、他の学部の人との議論も、全学共通科目でなければできないものだ。

ただ、あまり興味がなかったり詳しくなかったりするものを扱う場合、出席するのが苦痛になるかもしれない。面白くないポケゼミに出るくらいなら、好きなものを扱う普通の講義を受ける方がいいだろう。ポケゼミだからといって無理に履修する必要はなく、受けてみたいものがあれば抽選に応募してみるくらいの気持ちでいいのではなかろうか。(B)

「輪読」とはいうが…


りんどく【輪読】 数人が一つの本を順番に読んで解釈をし、問題点について論じ合ったりすること。(デジタル大辞泉)

私は英語の科学雑誌の記事を輪読するというポケゼミを取ったが、シラバスを読んで思い描いていた内容とは、少し違った。

先生が持ってきた記事を、受講者で分担して和訳する。そして自分が担当した箇所の訳を皆の前で読み上げる。全員の読み上げが終わると教員による解説が挟まり、また別の論文に取りかかる――。これが退屈であった。自分の担当分が終わったら、他の人が読み上げるのを延々と聞くだけである。だんだん眠くなってきてしまい、教員の真横で船をこぐ始末だった。「輪読」と謳うので、おのおのが論文の内容をまとめて発表し、その上で議論でもするのだと思っていた私には、ただ訳して読み上げるという作業を繰り返すスタイルは物足りなく感じた。

通常の講義と違って、ポケゼミは一度登録すると変更は出来ない。じっくりと選びたいところだ。(築)

ポケゼミ受講までの流れ


まず初めに行うべきは予備登録だ。シラバスから受講したいポケゼミを選んでクラシス上で登録する。締切は4月8日で、入学式の翌日ということもあって忘れやすいので注意しよう。無作為に抽選が行われる講義は8日に抽選結果がメールで送られてくる。教員による選抜がある講義は指定された期日までにメールなどで結果が発表される。抽選に運よく受かればよいのだが、第3希望まですべての抽選に落ちてしまった人も少なからずいるようだ。講義内容だけでなく、「抽選の受かりやすさ」も考慮に入れてポケゼミを選びたい。

ポケゼミは4月15日から順次開講される。忘れてはならないのが、その後に行われる履修登録だ。他の全学共通科目と同じように、クラシス上で期間中(4月17日から21日)に履修登録をしておこう。

※本記事の情報は、3月16日現在のものです。登録などにあたっては、必ずクラシスで最新の情報を確認してください。

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