インタビュー

41年ぶりつかんだ 全国への切符 京大陸上部・第46回全日本大学駅伝出場決定

2014.07.01

6月8日、西京極総合運動公園陸上競技場で行われた第46回全日本大学駅伝対校選手権関西地区予選において京大が4時間11分36秒で5位に入り、実に41年ぶりとなる予選突破を果たした。この予選会では昨秋の関西学生駅伝で10位までに入った大学が出場し、11月に名古屋・熱田神宮―三重・伊勢神宮間で行われる全日本大学駅伝の出場権をかけて各校上位8人の1万メートルの合計タイムを競った。昨年は出場枠として関西地区に4枠が与えられていたが、代表チームの健闘により今年は5枠に増え、京大はその最後のイスに滑り込んだ。今後の成績に期待が高まる京大陸上部。快挙を成し遂げた要因と今後の意気込みを伺った。(国)

取材に訪れた日の農学部グラウンドには、大雨の降る中でも黙々と練習に励む選手の姿があった。早くも予選会から気持ちを切り替え、次の目標に向かって歩みを進めているようだ。部全体を盛り上げた今回の本選の出場権獲得に、長距離チーフの小御門道(たお)さん(工・4)は「新聞や雑誌、ネットでも取り上げられるようになって嬉しい」と喜ぶ。

この快挙の立役者とも言えるのが、予選会で全体トップとなる29分12秒94の記録を出した平井健太郎さん(農・3)だ。平井さんは5月の関西学生対校選手権大会の1万メートルで優勝しており、実績面でチームを引っ張る存在となっている。「前の組の京大の選手が自分の力を出して走れている」ことを確認し、気負わずスタートラインに立てたという平井さんは、2位に40秒以上の差をつけるという自らの目標を見事に達成し、今季の自己ベストを更新した。全日本での目標を尋ねると、「1区で区間賞」とキッパリ。「関西の他チームに恥ずかしくない走りをしたい」と話した。

ただ、こうして出場権を得るまでには数々の困難や苦労があった。上回生は皆「全国出場は1回生からの目標だったが、達成はなかなかできなかった」と口を揃える。特に苦労したのが私大との実力差だという。スポーツ推薦などで豊富な戦力を有する多くの私大に対し、京大など国公立大は関西で上位を争える選手を8人も揃えることは難しく、チーム内で上位の成績を持つ選手とそうでない選手の実力差が大きいのが課題だ。また京大は基本的に指導者なしで練習を行っており、練習時間も他大学と比べて短い。しかし選手が主体的に練習を進めていくのは京大陸上部の伝統でもあり、先輩から代々受け継いできた方法だ。そのため種々の問題はミーティングを重ね、経験を積むことで乗り越えてきた。

さらに、今年は高校時代の持ちタイムの良い選手が入学したことで1・2回生中心のチーム編成となった。1回生としてメンバーに入ったのが、山西利和さん(工)と柴田裕平さん(農)だ。山西さんは昨年の世界ユース陸上選手権大会1万メートル競歩で金メダルを獲得、柴田さんは5000メートルの自己ベストが14分40秒と二人とも優秀な成績を持っている。今回入部後すぐにメンバーとして走り、「本選出場のチャンスが回ってきた世代に入れて嬉しい」「1回生から走れてラッキー」と喜ぶ二人。本選に向けて、山西さんは「競歩と両立させ、とりあえずメンバーに入りたい」、柴田さんも「今までに知り合ったライバルに負けないようにしたい」と決意を語った。

関西地区の枠が4つだった昨年は5位で惜しくも全国出場を逃した。今年も順位は昨年と同じということで、枠が増えた恩恵を受けたという意見もありそうだが、タイムは着実に上がってきている。昨年と比べると今回の予選では合計タイムは3分、つまり単純に考えれば一人当たり20秒以上縮まっており、6位とも6分30秒以上の大差をつけて出場を決めている。このことについて小御門さんは「1・2回生の力で全体の底上げができたことが大きい。また例年思うような走りができない人が何人か出るが、今年は全員が自分の力を出し切って走れたことも要因」と分析する。

とはいえ、伊勢路では厳しい戦いが予想される。実力のある選手は箱根駅伝出場を1つの目標として関東の大学へ進学することが多いため、関東の大学は他地区に比べてタイムが圧倒的に早い。関西の大学は過去10大会で出場25チーム中1度も1ケタ順位に食い込んでいないのが現状だ。またこうした地区間のレベルの差も関係し、この駅伝大会では繰り上げスタート(注)が他の大会と比べてかなり早い段階から始まる。小御門さんが「襷をつなぎきれるかも怪しい」と言うように難しい試合を強いられることは否定できないが、「関西の代表としての京大」という立場になることから、「関東はともかく、地方大学には勝てるように」「次年度の関西地区の枠が減らされることはないように」と意気込む選手は多い。

チームとしての明確な目標はまだ決まっていないが、小御門さんは「夏から走り込みをし、部としての目標を達成できるようにしたい」と話す。全日本で結果を残せば、宣伝効果で実力ある新入生が入部し、部のレベルが上がることで来年も、という好循環が期待される。京大陸上部の更なる活躍に注目したい。

(注)繰り上げスタート…トップとの差が広がりすぎた場合に、一般車両への影響をできるだけ小さくするため、選手が中継所に到着する前に次の走者を出発させる措置のこと。