参照基準 是正の声受け修正 経済学の多様性を尊重(2014.05.01)

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「経済学分野の参照基準」が2014年2月に「経済学分野の参照基準検討分科会」で修正され、修正前の原案で「日本の経済学の教育や研究の画一化につながる恐れがある」と多くの学会から是正を求められていた、新古典派経済学に重点を置いた記述が削除あるいは緩和された表現となった。4月24日に最終案としてまとめられた同参照基準は、今後日本学術会議内で査読を経た後に、日本学術会議がWeb上で公開する予定。

「経済学分野の参照基準」は、2008年に文科省からの依頼で日本学術会議が進める「大学教育の分野別質保証」の一環として、2010年から専門分野ごとに作成している参照基準の一つ。「経済学分野の参照基準」は、2013年2月から「経済学分野の参照基準検討分科会」で審議がはじまり、10月までに3度にわたって素案が提出された後、11月には素案を修正した原案が出された。素案および原案の内容を巡って、社会経済学などの科目を教える一部の教員から批判の声があがった。10月28日には、岡田知弘氏(京都大学経済学研究科)らが呼びかけ人となって素案の是正を求める署名活動を開始。12月31日までに1139筆を集め、日本学術会議に提出した。また、経済理論学会や進化経済学会など10を越える学会も意見書や要望書を提出し、日本学術会議へ参照基準の修正を求めた(本紙2013年12月16日号参照)。

「参照基準の是正を求める全国教員署名運動」が2013年10月28日に公表した署名呼びかけ文によると、原案の内容が「経済学の教育と研究における自主性・多様性、および創造性を制約するものになりかねない」との懸念を示している。その根拠として、ミクロ経済学・マクロ経済学・統計学などの科目を中心とする新古典派経済学が主流派として位置づけられ、社会経済学・政治経済学など、制度や歴史を分析対象とする経済学に関する記述が極めて少なく、原案の内容では偏ったカリキュラムを想定させるため、日本の経済学の教育や研究の画一化へつながる恐れがあること等を指摘した。

日本学術会議側も12月にシンポジウムを開催するなど、参照基準に関する意見を募った。その後、2月12日には分科会を開き、シンポジウムで出された意見などを踏まえて修正を行い、「第1次修正案」を作成した。また、2月25日には再び分科会を開催し、同修正案では十分に対応できなかった各学会の意見に配慮した修正を行い、「第2次修正案」を作成した。

「第1次修正案」では、日本学術会議による参照基準の「趣旨の解説と作成の手引き」にある、参照基準は各大学がカリキュラムを作成する際の参照となるものであって、強制となるものではないとの旨に従って、ミクロ経済学・マクロ経済学などの具体的な科目の記述を削除した。また、新古典派経済学を国際的に標準的なアプローチと位置づける記述や新古典派経済学の想定する、稀少な資源を効率的に配分する合理的な人間像についての記述も削除あるいは譲歩した表現となった。ただし、具体的科目に関する記述を避けるという方針から、政治経済学的視点を経済学教育の中に位置づけることは回避された。

続く「第2次修正案」では、新古典派経済学的手法の限界も述べられた上で、制度や歴史を分析対象におく重要性が随所で強調された。

署名活動をとりまとめる宇仁宏幸氏(京都大学経済学研究科)は、今回の二度にわたる修正で、是正すべき箇所の多くが訂正されたことを認めた。また、「社会科学である経済学は多様な切り口や考え方が共存する中で進歩しうるとの見解から、日本の経済学会界には主流派・非主流派など多様な意見を持つ者同士で議論する場が維持されていることが確認できた」と、参照基準を巡る一連のプロセスを評価した。

分科会は3月末を締め切りとして「第2次修正案」に関する意見を募った。4月24日には分科会が開かれ、ここで集約した意見をもとに「第2次修正案」へ修正が加えられて最終案がまとめられた。この最終案は、日本学術会議の査読委員会に提出され、そこでの査読を経た後「大学教育の分野別質保証委員会」に提案され、承認が得られれば公開される。「経済学分野の参照基準」は日本学術会議のWebサイトに掲載され、閲覧・ダウンロードが可能となる。

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