意外と知らない京都の図書館(2013.07.16)

Filed under: 企画類
????????????????????
7月も中盤を迎え、学内の図書館が試験勉強する学生で溢れる時期である。こんな時分だからこそ、たまには普段あまり行くことのない図書館へ出向き、違う雰囲気を味わいに行くのもよい。いつもの図書館で見つからなかった資料との出会いもあるだろう。レポート執筆準備の一環だと思って、ぜひ足を延ばしてみてほしい。(編集部)

京都国際マンガミュージアム~マンガ文化発信の拠点~


活字を拾うのに疲れたら、マンガを読んで息抜きするのはどうだろう。

烏丸御池を少し北に上がったところに京都国際マンガミュージアムは位置する。京都市と日本初の「マンガ学部」で有名な京都精華大学、そして地元住民の協力によって2006年にオープンした。開館にあたっては、京大で長く教鞭を執っていた河合隼雄も文化庁長官時代に後押しをしたそうだ。マンガミュージアムのモダンな建物は、1991年に廃校となった龍池小学校の校舎を改築したもの。歴史ある小学校は、マンガという日本文化を発信する拠点として見事に生まれ変わったのである。

敷地内に足を踏み入れると、人工芝が敷きつめられた開放的なグラウンドが目に入る。この芝生で寝転んでマンガを楽しむ、というのがミュージアムの名物だそうだ。確かに、のびのびと芝生に体を横たえマンガに向き合うのはさぞかし気分が良いだろう。あいにく私が訪れた時は最高気温36・3度という猛暑日だったので、横になっている人はさすがに誰もいなかった。

グラウンドを横目に通り過ぎ館内に入る。驚いたのは外国人客が多いということだ。受付の人も”Where are you from?”と慣れた様子で尋ね、軽い会話をしている。受付で話を聞いてみると、訪問客はフランス、オーストラリア人が多く、開館2、3年あたりから年々外国人客が増えているという。外国人と日本人が同じソファーに座って、マンガに目を落としている光景は、実際目の当たりにすると不思議な気分になる。

書店とは違い、ビニールで封をされていないマンガが来訪者に手に取られるのを待ってズラリと並んでいる。普段は読まないような一冊との出会いがきっとあるだろう。ちなみに、マンガの貸し出しはされていない。(築)

開館時間 午前10時~午後6時(水曜休館)

京都府立図書館~歴史を感じる静寂空間~


京都府立図書館は平安神宮で有名な岡崎地区に位置し、京都国立近代美術館や京都市立美術館といった芸術施設がそばにある中で堂々とした趣で市民に開放されている。この図書館の歴史は古く、1909年に岡崎の地に移転し、レンガ3階建てで設立、開館されている。府立図書館は当時の趣を残そうと図書館の正面にあたる東側前面に、1909年開館の図書館の壁を利用して、2001年に新築、開館された。

中に入ってみると開放的な雰囲気を感じられる。本棚と本棚の間隔が狭すぎずゆとりを持って本選びができそうである。開架は1階と地下1階だ。また地下1階には螺旋階段を使って移動することになっており、ちょっとした高揚感をもたらしてくれるに違いない。さて学生諸君の気になる自習環境はというと、ここ府立図書館では整備されていない。閲覧席なるものは1階・地下1階あわせて100席以上用意されているが、どれも自習禁止と張り紙が張ってある。この理由について事務の方は「できるだけ多くの市民に図書館を利用してもらうため、一人の人に長時間席を専有されることがないようにしています。」と説明している。また「自習室としての役割は京都市総合資料館(地下鉄烏丸線北山駅近く)に担ってもらっています。」とのことである。ところで館内を見回りしている巡回員の方がいるのには驚いたが、彼らは館内マナーの向上につとめているらしい。利用者は彼らにとがめられることはないにせよ、閲覧席の意義を理解して自習は控えた方が良さそうだ。

ここ府立図書館では2010年から京都大学研究者等が運営する「井戸端サイエンス工房」とサイエンスイベントを共催しており、その後も年1、2回のペースで開催している。この団体は誰もが科学を楽しめるように研究者たちを招いて様々な企画を運営しているサークルである。2013年度は9月21日(土)に予定されている。これは科学の視点から新たな本との出会いを探る試みであり、科学に対する興味を深め、図書館をもっと活用するきっかけになるに違いない。まだ府立図書館に訪れたことのない人はぜひこの機会に訪れてみてはどうだろうか。(千)

開館時間 [火~金]午前9時30分~午後7時 [土・日・祝日]午前9時30分~午後5時

文学研究科学術雑誌閲覧室~京大の研究活動を下支え~


京都大学には、本部キャンパス内の附属図書館を始めとして数多くの図書館が設置されている。学部棟などに併設されている図書館はそれぞれ特色ある書物を取り揃えており、京大生・教員たちの日々の勉学・研究活動を影ながら支えている存在だ。しかし必要がない限り、自分の学部以外の図書館を利用したことがある人はあまりいないだろう。特に、文学研究科学術雑誌閲覧室(laj:The Library of Academic Journals)の存在はあまり周知されていない。

学術雑誌閲覧室は、文学研究科図書館の一部としての位置づけである。文学研究科図書掛長の美濃部朋子さんによれば、2009年10月に「図書の増加により新館書庫の収容能力を超えたため」、学術雑誌約10万点を文学部東館へ移転させたとのこと。学術雑誌閲覧室は入り口が3階にあり、そこから雑誌のある書庫に入ることができる。ただし、書庫に入る際は、他の学内図書館に入る時と同様に受付にて学生証を渡してからの入庫となる(書庫内でのルールも同様で荷物の持ち込み等もできない)。

内部の構造については、まず3階の書庫内に新着雑誌が所蔵されている。そこから階段を降りると2階・1階へと書庫が続いていき、2階では洋雑誌の一部と和雑誌、1階では洋雑誌の残りと中・韓文雑誌コーナーになる。ここにある雑誌は主に文科系の研究論文を掲載したものであるが、文学部以外の文系学部生向けの雑誌はもちろん、中には理系学生にとって参考になる書物も見つけることができる。

学術雑誌閲覧室の受付の方に話を伺うと「普段は自らの論文を書くための雑誌を探す院生が多い」とのことだったが、やはりもう一方の文学部校舎内にある図書館よりは訪れる人が少ないそうだ。訪れた時間帯のせいもあったかもしれないが、実際中に入って散策してみてもほとんど人は見当たらなかった。だが、この人のいないことによる静けさがある意味でいかにも図書館らしく、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。まだ論文執筆等の研究活動をしない学部生には難しい本ばかりかもしれないが、京大ならではの豊富な資料を取り揃えているこのちょっとした「穴場」を覚えておくと、将来の研究等に役立つかもしれない。(真)

開館時間[月~金]午前9時~午後6時(書庫は午後5時45分まで)

左京図書館~地域の交流を育む空間~


高野川にかかる蓼倉橋から東鞍馬口通を東へ1分、左京合同福祉センターの2階に左京図書館は入っている。同階には京都市高野児童館、1階には京都市左京老人福祉センターが入っているのもあって、利用者は小学生から年配の方まで幅広い。大学図書館や府立図書館に比べると小さめの図書館ではあるが、館内にはさながら地域の憩いの場のような、なごやかな雰囲気が漂っていた。

左京図書館は1978年に京都市社会教育会館の左京分館として発足、1999年に現在の左京合同福祉センターへ移転した。利用者数は一日850人以上で、20ある京都市の図書館の中でも6番目によく使われている。収蔵数は6万7千冊。取り扱う書籍は漫画や雑誌から近現代の文学作品、行政資料までバラエティーに富むが、とりわけ児童書や絵本の数が市内の他の図書館に比べると多いのが特徴的だ。

図書館に入って、すぐ目に入るのは「出会いの森へようこそ」と書かれたゲート。そこをぬけると、色とりどりな絵本がたくさん並べられた「えほんコーナー」が設けられている。ハウスダスト対策としてコーナーの床にはコルクタイルが敷き詰められ、子供達が安心して利用できるよう配慮されている。ここでは、毎週木曜日に赤ちゃん向けの読み聞かせ会が、第四土曜日には児童向けにお楽しみ会が開かれる。保護者向けには子育てをサポートする本を集めた特設コーナーも用意されていて、子供たちや保護者の交流の場所にもなっている。

館長の古川さんは、左京図書館を学生にもっと使って欲しいと話す。「地域の色んな人びとが利用する左京図書館は、学生ばかりの大学図書館とはまた違った雰囲気があります。たまには学生さんも足を運んでみてほしい。」

左京区には多くの大学生が下宿して生活をしている。しかし、学生の多くは大学というコミュニティーを中心に生活を営み、しかも数年でこの地を離れてしまうから、「地域の住民」として生活を営んでいると感じる者は少数派だろう。むしろ私などは「お客様」として仮住まいしているような感じすらあって、確かに煩わしくは無いけれど、半面寂しさを感じることもある。そんな時、左京図書館は「お客様」の学生が地域とつながる空間を提供してくれる。本の数こそ大学の図書館にはかなわないけれども、地域の子供達からお年寄りまで交流を育む雰囲気がこの図書館にはあるのだ。左京図書館はそういう意味で、とても魅力的な図書館であろう。(羊)

開館時間 [月~金]午前10時~午後7時30分(火曜休館) [土・日・祝日]午前10時~午後5時

〈京大雑記〉「あの」レポートを書いてみる


7月下旬。徐々に授業も終わり、多くの学生が試験期間を迎える。さて、レポートの時期になると、まことしやかに囁かれる噂がある。すなわち、「『おいしいカレーの作り方』をレポートに書いたら単位をもらった」という噂である。何とも微笑ましい伝説ではあるが、何といってもこの手の話は、世代の何まわりも違う教授たちが学生だった頃から存在するらしい。さらに、日本全国津々浦々の大学において同様の話が伝えられてきたというのだから恐ろしいものである。

ところで、そもそもそのようなテーマでレポートを書く事などできるのだろうか。同じタイトルのレポートを執筆するという思考実験を行った。

一 参考文献を探す
言うまでもなく、レポート執筆の第一歩はテーマに見合う参考文献探しである。ためしに京都大学蔵書検索KULINEを用いて、どれほどの資料が存在するのか確認してみた。「カレー」で検索してしまい憂き目を見るのはレポート初心者の常道である。例えばウンベルト・エーコ著・篠原資明訳『開かれた作品』がヒットするのだから、これではキリがない。知恵を働かせて「カレーライス」と検索してはみるものの、該当件数が6件では心もとない。

かくなる上は論文検索エンジンCinii(http://ci.nii.ac.jp/)にあたってみる。「カレーライス」の検索結果はおよそ70件だが、やはり玉石混淆だ。大学紀要に掲載されたと思わしき「カレーライスの調理研究:短粒米・中粒米・長粒米について」という論文を見つけたものの、こんな専門的内容をスッと理解できるような学生は、そもそもこんな無謀な試みに思い至らないのではないか。研究者の素晴らしき朋輩Google Scholarに意見を仰いだところ、発見できたのは「油脂含量が違う市販カレールーを用いたカレーライスの調理過程における水溶性および脂溶性環境下でのラジカル捕捉活性の変化」という、学会誌の投稿論文であった。助けて。

二 導入を記す
「日本の食卓において、カレーライスが果たしてきた役割は極めて大きかったと言える。『日本人の食生活』(1985)によると、ふだん「よくつくっている」料理としてカレーライスを挙げた人が、2位の「野菜の煮物」を大きく突き放してのトップだという。井上(2000)はカレーを「日本の近代化の成功と挫折のシンボル」(井上 34)と位置付け、その歴史的・社会的意義を強調している。カレーライスはアクセシビリティの高い、いわば万人に開かれた料理なのである。しかしながら、従来一般に普及してきたカレーライスの作り方には、多くの瑕疵が認められる。本稿ではこのような問題意識のもと・・・」あとはそれらしい言葉を添えれば何とかなるのではないだろうか。

三 本文を記す
「本稿がその第一の目的として設定するのは、報告者によって調理されたカレーライスを消費した母集団の60%以上が「おいしい」あるいは「まずくはない」と判断することである。今回は母集団として・・・」あとはそれらしい言葉を添えれば何とかならないとも限らない。

四 結論を記す
「本稿で見てきたように、個人の嗜好は多様であり、「おいしい」あるいは「まずくはない」という感覚を科学的に立証することは不可能であると言わざるを得ない。したがって本稿におけるアンケート結果が期待を大きく下回るものであったのは・・・」などとそれらしく締めれば、中には理解を示してくれる先生もいるかもしれない。

「おいしいカレーの作り方」などというレポートに手を出すくらいならば、おとなしく別のテーマを選んだ方がよほど賢明だ。――もっとも、噂の真偽を確かめたいのであれば話は変わってくるかもしれないが。(薮)

【参考文献】
井上宏生『日本人はなぜカレーライスが好きなのか』(平凡社新書 2000)
小菅桂子『カレーライスの誕生』(講談社選書メチエ 2002)
日本調理学会編『料理のなんでも小事典』(講談社BLUE BACKS 2008)

トップページお問い合わせサイトポリシー著作権について個人情報の取り扱いについて
京都大学新聞社 〒606-8317 京都市左京区吉田本町 京都大学構内 TEL:075-761-2054(直通) 075-753-7531(内線2571) FAX:075-761-6095