文化

京大雑記 第2回 相次ぐ工事のなかで

2007.12.01

京大のキャンパス内が工事現場と化して久しい。至るところに現場を囲うためのフェンスが設けられ、交通が規制され、作業員用の詰め所が置かれ、工事車両が頻繁に出入りする。

12月1日現在、北部構内で4件、本部構内で3件、吉田南構内で1件ほど大規模な改修工事が行われており、既に終了した工事を含めれば今年度に吉田キャンパス(病院をのぞく)で行われた大規模工事はおよそ10件にのぼる。この時期にこれだけ集中して工事が行われる背景は何だろうか。

現在、構内で行われている大規模な工事の目的はほぼすべて「耐震化」である。数年前の耐震偽装の騒動から、国は「耐震化」及び改修工事に予算をつけるようになった。

京大も例に洩れず、今年度の補正予算で改修費用を獲得し、耐震化推進方針(06年5月公表)に沿って耐震化を進めている。「耐震化」はいま、予算を引っ張ってこれる力強いフレーズなのだ。そしてこれと同時に、以前より各部局から予算申請されていた建物の改修を併せて行なっている。ついでとばかりに内装・外装の改修が行われ、構内の歴史を感じさせる(ぼろい)建物たちは新しく清潔な(無機質な)建物に変わりつつある。 このままいくと京大の雰囲気は数年後にさらに様変わりすることになるだろう。

ところで、改修工事の是非がほとんど議論されず多くの教員や学生がだまって一時移転や通行規制、騒音などの不便を引き受けているのはなぜだろう。単に新しくきれいな建物に移れる、という希望のためか。、あるいは「皆さんの安全のための耐震化工事」というフレーズに思考を停止してしまうためなのか。

農学研究科の生物資源経済学専攻は、この耐震化工事の流れのなかで、短期間に2度も移転を迫られ、研究に大きな障害が生じると抗議してきた。最終的に移転を受け入れたが、研究を進めるなかで度々の移転は院生にとっておおきな負担になると、現在も抗議声明を出している。

こうした事態が他の学生に生じないという保証はない。学生・院生は「耐震化」「安全のため」というスローガンのもとに一方的に進められる工事に、思考停止せずより感心をとるべきだろう。実際に不利益を被る可能性があるのは自分達なのだから。(ぞ)

《本紙に写真掲載》

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