連載第三回 タンザニア滞在記 タンザニアの結婚式その1(2011.12.16)

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私の調査のアシスタントをしてくれている男のひとりが結婚することになった。結婚式は2011年6月18・19日の二日間、それぞれ花嫁の村と花婿の村で行われた。

結婚式当日のお昼頃。タンガニーカ湖に浮かぶ大きな木船が、青色の旗を船首に掲げて、騒々しいまでの太鼓のリズムや鈴の音や、それに負けない歌声を乗せてこちらへやってくる。そのとき私は別の小船で同じくタンガニーカ湖上にいた。結婚式の会場だと教えてもらった場所で朝から長いこと待っていたのだが、誰も来ず、しびれを切らして花婿の家まで船で向かっている途中だったのだ。その音色と大きな木船はどこかおとぎ話の一場面のようでもあり、また不格好なちんどん屋が近づいてくるようにも見えた。

こちらへ向かってゆっくりとやってくる大きな木船が、花婿を乗せて、花嫁の住む村に向かってタンガニーカ湖を南進しているのだということは、船に乗っていた知り合いを確認してわかった。男たちは子どもから大人までみな、スーツやイスラミックな白装束に身を包み、各々の考える「正装」をしているようだった。いつもの着まわされた古着ではなかったので、一瞬、本当に私の知っている人か疑ったほどである。運転手に頼んで小船を寄せてもらい、花婿の船へ、ふらつきながらも乗り移ってみて、またさらに驚いた。船底にはカラフルな衣装に身を包んだ女性たちがぎっしりと集まり佇んでいたのだ。太鼓と鈴の音に合わせて彼女たちは歌い、男たちは船べりに腰を下ろしてそれを眺め、あるいは流れていく山並みを見つめていた。

花嫁の住む村が見えてきた。別にこれまでがサボっていたわけではないだろうけれど、歌声にも力がこもってきて、女性たちはもはや叫ぶような声で歌っている。そして船がそろそろ岸に着こうかというとき、村の方、つまり岸の方からも歌声が聞こえてくることに気が付いた。見ると少し丘になった場所から緑の旗を掲げた集団が歌いながらこちらへ向かってきている。船は岸へと着いても、両集団は歌を止めない。あちこちから歌声が響く中、私も一緒に船を降りた。青旗の集団と緑旗の集団は互いに歌いながら浜辺で混ざり合い、そのまま、歌いながらゆっくりと結婚式の会場を目指して丘の上へと歩き出した。私の拙いスワヒリ語の語彙ではほとんど歌詞を聞き取ることができなかったが、花嫁の村の人々の歌う、「ようこそ、お客さま」という歌詞は聞き取ることができた。異なる村同士、歌で挨拶を交わしていたのかもしれない。

そんな歌の中心、花婿は白装束にイスラム帽子の出で立ちで、こちらは黒装束に黒スカーフの姉妹数人に囲まれながら、少し硬い表情を作っているように見えた。なんだかいつもと雰囲気が違うので、緊張しているのかな、と思ったが、私と目が合うと、彼はニヤリといつもの悪戯っぽい笑顔を覗かせた。緊張ではなく、花婿らしいきりりとした表情を演出していたのだろう。

青ビニールを張って御座を敷いた会場に、200人近い村人が集まり、式典が始まった。男女が別に座っているのはわかったが、仲の良いタンザニア人に聞くと花嫁と花婿の村に分かれて集まって座っているらしい。会場中心に設置されたマイクで司会が経典らしい本を読み上げ、式は進行していく。花婿が宣誓文を読み上げる場面も見られた。間を埋めるように、子どもたちの踊りが入る。イスラムの教えに則った、比較的厳かな式だったと言えるだろう。

そのうち、大皿に乗った米と豆の煮ものが運ばれてきた。こういった人の集まる場面ではよく見られる食事である。豆の煮ものを米に豪快にぶっかけ、みんなで車座になって手で食べる。少し握って食べやすくするのがポイントだ。初めて米を手で食べたときはぼろぼろとこぼれてうまく食べられなかったが、指の動かし方のコツを掴めば多少は改善された。ただし、タンザニアの人たちもかなりの量を地面にこぼしながら食べているのがわかってきたので、そこまで気にせず食べることにしている。

2時間ほどで式がひと段落した様子だったが、花嫁はまだいない。隣の人に聞くと、本来なら花嫁が出てきても良いころなのだが、恥ずかしがってなかなか家から出てこないらしい。このまま解散か、と思っていたが、どうやら花婿が花嫁の家まで迎えに行くという運びになったらしい。会場からぞろぞろと、丘のさらに上の花嫁の家を目指す。そのころにはすでに私は「外国から来たらしいカメラマン」と周囲からぼんやり認知されていたらしく、「新郎新婦の写真を撮ってやってくれ」と優先的に花嫁の家に入れてもらうことができた。

花嫁は白のドレスに綺麗なお化粧を施されており、薄暗い部屋で世話役の女性たちに囲まれて座っていた。花婿が花嫁の手を取り、立ち上がらせる。そこからは写真撮影会さながらの状況になった。あちこちでフラッシュがたかれ、「次こっち撮りまーす」というジェスチャーで視線を奪い合うカメラマンたち。さらにふたりを一目見ようと会場の人たちが入ってきて、狭い室内はすぐにいっぱいになってしまった。熱気がこもる部屋で、私は一応カメラマンと言われた手前、写真を撮ろうと必死になって、途中で靴を片方失くした。

こうして式自体は夕方までに終わった。花婿の村の人たちはまた例の大きな木船で帰る。私も花婿の村の人に宿を借りようと船に乗り込もうとしたのだが、アシスタントの一人に乗らなくてもよいと止められた。詳しく聞くと、花婿花嫁はいったん花婿の村へ挨拶に行くが、また戻ってきて、夜にディスコでパーティをするらしい。それなら待とうかと、近くのバーへ向かおうとしてまた止められた。

「今晩ディスコで、新郎新婦のために、僕と君ともうひとりの3人で、ダンスショーを披露するからね」「えっ」

次回へつづく。(侍)

《本紙に写真掲載》

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