5回生からの大学 各学部の留年事情(2008.01.16)

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「大学生活=4年間」おそらく、センター受験生の皆さんはそんなイメージを抱いているのではないだろうか。だとしたら、それは一面的で誤った概念だと、あえて言わせていただきたい。京都大学では(休学等も含めて)2割以上が学部生として過ごす5年目に突入し、いわゆる5回生となる。学部によってはおよそ2人に1人が5回生となるところもある。そしてその理由の多くはいわゆる留年である。この記事を読んでいるあなたは、それは統計的事実であって、自分には関係のないことと思うかもしれない。その気持ちはわかるが、事実から目を背けるのは、よいことだとは思えない。留年とは何なのか、その存在を見つめ、現状を知り、実態に少しでも触れることは、留年しないための最大の対策にもなるだろうし、もしかしたら、自分の人生における価値観について考える機会になるかもしれない。堅苦しいことを言ったけれど、ちょっと読んで、軽く笑って、またできたら少し考えていただければ幸いです。(幸)

◇留年ことはじめ

留年とは何か。言うまでもないかもしれないが(休学等を除いて)4年間で卒業ができないことだ。なぜ、卒業できないかといえば、卒業に必要な単位が取得されなかったからである。だが、これは文面上は高校でも変わらない。では、なぜ高校ではほんの一部の例外的事態ともいえる留年が、大学では5人に1人に該当する事態になっているのか。それは、自由度の違いが原因と言えるだろう。

高校の授業は、基本的に決められたものであり、選択ができても、それは何を受けるかの選択でしかないし、その選択のみによって単位数が足りなくなることはない。だが、大学では、全て良く言えば自由であり、悪く言えば自己責任である。必修や指定の講義も存在するが、受講登録をしたところで出席するしないは、これもまた自己責任である。出席を怠って結果として成績が悪ければ、単位が認定されないだけである。そういうわけで、大学では単位が足らず、卒業できないということが容易に起こりうる。

◇留年の理由さまざま

では、留年をした人は全員、成績が悪いか、もしくは怠けていて単位が足らなかったのか、というとそうではない。前述したとおり、大学生は自由である。卒業したくない理由があるならば、あえて単位を揃えず留年するのも自由なのだ。すすんで留年する理由などあるのか、と思うかもしれないが、実際にある。その理由は失敗である。主に、大学院試験、就職などが挙げられる。先が決まらないまま卒業すると、当然ながら、肩書がなくなってしまう。次の年に就職活動をしたとしても、いわゆる新卒扱いにならないということになる。

また、大学に在籍していれば、図書館などの各種施設も利用できる。そもそも、これは個人的に思っていることだが、大学生という身分はすごく居心地のいいものである。社会人のように毎朝決められた時間に出社しないといけないわけでもないし、高校までのように時間割がすべて埋まるわけでもない。許されるなら少しくらい長くいたいとすら思える。

そういうわけで、留年をするのは、単に単位が足りないという理由だけに限らず、卒業した先が決まっていないというのも大きな理由になり得るのだ。

各学部の留年事情

上の表からは、学部ごとに留年に関する事情が大きく異なっていることが分かる。5回生の割合を見ても、一人から学年の半分まで、大きく異なっている。その違いはどこからくるのか、薬学部、法学部、理学部の3学部について取り上げる。

◇薬学部

%表示を見ると驚くべきは薬学部だろう。その割合の低さは他学部とは比べ物にならない。留年したくなければ薬学部に入ればいいのではないか、とすら思えてくる。薬学部のカリキュラムでは、3回生から実習が始まり、それまでに一定の単位が取れていないと、実習に入ることができない。加えて4回生からの研究室配属でも一定の単位が必要となる。細かい制限によって、はやくから危機意識を持って学習に取り組め、留年は少なくなる。だがこのような制限は理系学部では一般的なものである。他の理由として考えられるのが、人数の少なさである。事務上の管理がしやすいことに加えて、学部内のつながりが強くなる。薬学部では学部の公認団体として学部内サークル(テニスなど)も存在しており、それが横のつながりに加えて先輩後輩の縦のつながりを作っている。そのようなアットホームな雰囲気の中では、周りから離れて留年したくないという意識が出てくるのかもしれない。だが、割合が低いほどマイノリティにはなりづらいものである。休学を希望したり、何らかの理由で留年を望む場合は、他学部以上の心理的抵抗があるだろう。

◇法学部

薬学部と正反対の数字を叩き出しているのが法学部である。数字だけ見れば、もはや留年する方が普通なのではないかとも思える。これは、法科大学院試験の影響によるところが大きい。いわゆる司法浪人である。司法試験は2006年度から新司法試験が始まったが、現在も移行期間であり、旧司法試験の合格率は京大でも数%である。新司法試験制度が始まって事情は変わっていくであろうが、少なくとも現在の状況は、表を見てのとおりである。

◇理学部

表を見る限り、何の変哲もないが、理学部のシステムは変わっている。通常、必要な単位を取得して、その他の要件を満たせば自動的に卒業することになる。そのため留年をするためには、意図的に単位を残す必要がある。だが、理学部では必要単位を満たし、その他の要件も満たしていようが、本人の意思表示の必要書類を提出しない限りは、卒業の審査がなされない。古い規約の名残であるため、当初の意図はわからないというが、院試が希望通りいかなかったときや、長期の旅行をしたい時などには都合がよい。この制度を利用して、取得単位を満たしても5年以上学部に在籍する人も数人いるようだが、過去には必要書類を出し忘れ、単位を取得しているにもかかわらず、意図せぬ留年をしてしまった人もいたらしい。

◇全体的傾向

全体として、留年は文系に多く、理系に少ないという結果が見てとれた。単に「成績不良=留年」ということならば、こうはならないだろう。なぜなら一般的には理系のほうが、単位の取得は厳しく、多忙であるからである。むしろ留年の多い少ないは、カリキュラムの自由度が関わっていると言える。

留年してる人 H.Mさん(経済学部経営学科5回生)

◇なぜ留年したのか

何で留年したかっていうと就職活動で希望通りにいかなかったからなんです。目標を1つ決めて、それがだめなら1年ずらしてしまったほうがいいと思ってしまうところがあって、大学受験でもそうだったんですが、京大だけ受けて、だめだったので1年浪人しました。4回の時は商社を希望していて、いろいろ手を尽くしたのですが、うまくいかなくて、留年することに決めました。あまり危機感とかもなく、浪人した時と同じような感覚でしたね。単位もあんまり揃っていたわけではなかったので、それも決断の1つの要因になりました。もし残り2単位とかなら、さっさと就職決めて卒業してたかもしれません。

◇1年間でやったこと

留年を決めるまでは、働いたことがなくて、就職活動をしていても働く自分のイメージができなかったんですけど、留年した1年間、アルバイトを2日だけだけどやってみたり、トルコにインターンにも行きました。トルコでは貿易会社で営業の仕事をして、そこで単なる物の売り買いではなくて、人と会う仕事としての営業に魅力を感じました。今年はその経験をもとに心機一転して就職活動をし、最終的に希望通りの就職を決めることができました。留年していなかったら、トルコでの海外経験もなかったし、英語の能力もいまより低かったと思います。

◇サークルと大学生活

サークルに4つほど所属していて、この5年間はこれまでになく忙しい時期でした。飲み会の数もすごく多くて、お金はかかるんですけど忙しくて働けない、普通はお金がなくて先にアルバイトとかするんでしょうけど、どうもだらけてしまって、典型的にダメな感じで。やりたいことだけやってきた大学生活でした。ただ、それだけサークルをやっていたので、今年に入って同級生が卒業してからも、後輩がたくさんいたのでテストの情報とかはなんとかなりました。

◇おこられたりもしました

この1年間はすごく充実していたんですけど、ただやっぱりマイナス面もあって、就職活動なんかは留年してるのは明白なんで不利は不利ですね。でも、実力でひっくり返せないほど不利ってことはないと思います。後は、おばあちゃんに怒られたのが辛かったですね。どうしても「留年=成績が悪くて落第」のようなイメージがあるのか、その時点では就職も決まってないわけだし、不安だったんだと思います。

◇留年について思うこと

でも、そもそも「留年=成績が悪い」というのは間違ったイメージだと思うんですよ。経済学部の先輩で多留していた人で、すごく勉強していて頭良くて、なのに留年してしまう、っていう人がいたんですけど、なぜその人が留年してしまうかというと、絶対授業に遅刻をしてしまう、それだけのことなんですね。本当に、なにに力を入れるか、それが違うだけであって、留年する人と4年で卒業する人、何も変わらないんじゃないかと思います。

◇未来の留年生へ

留年するなら、言い訳を作らないといけなくて、僕の場合はどんな仕事がしたいか、という問いに対する言葉に責任が持てるようになったことでした。そういう言い訳は人に対してだけじゃなくて、自分を納得させてポジティブに生きていくために必要なものです。まぁ、留年なんてしないに越したことないんでしょうけど。(笑)

留年する人 K.S(工学部情報学科3回生)

◇確定した瞬間

今年度前期の成績表が帰ってきて、絶望…とまではいかないんやけど、今までの不安がとうとう具体化してしまったのかなぁ、という感じでした。うちの学科は研究室配属で3回の終わりに108単位必要なところを60単位しかなかったんですよ。あんまりとれてへんなぁ、まぁ後期がんばろう、と思って時間割を組んでみた結果、あれ、これ…全部取っても足りねぇ、と気付いてしまったわけですよ。

◇留年した理由

個別指導の塾でバイトをしてるんですけど、生徒のことをしっかり考えてやらないといけないし、シフトを減らそうとしてもなかなか学年によっちゃ手放せない生徒もいたりするし、なにより第一に働いてて楽しいんですよね。一度、試験の時間割を見る前に、バイトの夏期講習のシフトを組んでしまって、テストが受けられない、なんてこともありました。そもそも普段からバイトが遠いんで、家に帰って寝る頃には3時ぐらいになってたりして、そんな感じで朝起きられないんですよね。できる人は、それでもがんばって起きられるんでしょうけど、起きてみて一限間にあわねぇ、まぁいいか、となってしまうんですよね。あと、サークルに入っていないので、学科の友達しかノートをくれるつてがないっていうものあります。ただ、その周りの友達もあんまり授業に出てない人が多いので、結局ほとんどまともに頼れる人がいないっていう…。

◇今までの経緯

うちの学科は4回に上がる時だけじゃなくて、2回に上がる時にも制限があるんです。それで1回の時は結構頑張れて2回に上がる時点で42単位とれてたんです。そのときは今のことなんて想像もしませんでした。2回に上がると、3回に上がる時に制限がないから、だれてしまったんです。バイトも責任ある立場になっていたし、結局単位はほとんど取れませんでした。でも、まだそのときは、まぁなんとかなるだろうとは思っていたんですよ。それで、まぁ3回前期もだめでどうしようもなくなってます。

◇両親に言えず

毎回、成績表は親に見せるように言われていて、それで毎回見せてはいたんですが、前回の留年が決まったのはもう大丈夫なのかと聞かれて言い逃れできる気がしなくて、結局見せてないんです。やばいけど、がんばったらなんとかなる。そう言ってはいるものの、本当はもう頑張っても何とかならないんですよね。

◇お金は貯めたけど

単位取れてない分、バイトはしっかりやっているので、お金は貯まってはいるんですけど、ただ一浪しているものあるし、これ以上親に必要以上の学費を出してもらうのが申し訳なくて、一年分の学費にしようと考えてます。

◇方向転換

大学院には、いくつもりだったんですけど、いろいろ考えた結果、いまのところ学部卒で就職をしようと思ってます。浪人と留年が重なったし、これ以上親に学費で迷惑をかけられないということと、いま学んでいることにそこまで興味が持てないというのが主な理由ですね。もちろん興味を持って大学に入ったんですが、入ってみると自分の想像していたものと違ったんですよね。それでまぁ、おそらく文系就職ということになるし、浪人留年と2年ひっかかっているので、少し不安ではあるんですけど…。

◇前を向いて

留年が決まったところから、どうせ1年増えるんやったら、普通に過ごすのももったいないし、3回後期にできる限り単位を取ってしまって、4回は余裕を持たせて、いろいろと今まで出来なかったことができたらいいなぁ、とは思ってます。まず免許、できればバイクの免許も取りたいですね、あとは一人旅、いわゆる自分探しの旅ってやつですよ。(笑)いった友達に聞くといろいろと得るものも多いらしいので、国内から始めて、できれば海外まで行きたいですね。ただ、免許も旅もお金と単位次第ではあるんですけど。

◇目標

とりあえず、二留は避けたいですね。(笑)

《本紙に各学部5~12回生在籍人数の表掲載》

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