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ゲノムELSIユニット設立 ヒトゲノム運用の倫理的課題を研究

2010.10.25

今年10月より、人文科学研究所内にある「ゲノムELSIユニット」が約半年間の準備期間を経て、本格的に活動を始めた。大規模なヒトゲノム研究を行う上で生じる倫理的・法的・社会的課題(総称してELSI)などの問題を、研究者と様々な分野の人との意思決定によって社会の中で取り組むしくみ(研究ガバナンス)を作っていく。

ゲノムELSIユニットは、文部科学省研究費・新学術領域研究「ゲノム支援」(研究代表:小原雄治・国立遺伝学研究所所長)によって今年4月、京都大学人文科学研究所内で立ち上げられた(管轄は文部科学省)。メンバーは加藤和人・同研究所准教授(生命倫理)ら。まず2010年から14年まで続けられることが決まっている。

ヒトゲノムは人のDNA(デオキシリボ核酸)の担うあらゆる遺伝情報を寄せ集めたもの。現在、それを使って遺伝による病気などの研究が進められている。

しかし今後は、解読されたゲノム情報の多くがデータベースとして収納されるようになり、様々な目的で研究者が利用されるようになると言われている。その際、インフォームド・コンセント(情報を十分得た上での合意)やプライバシーの問題といったゲノム試料を提供した人への対応、データベースを通じたデータの公開や共有のあり方、活発な研究活動するための運営などで問題や困難が生じることが予測されている。

ユニットはこれらのことを解決・支援するために、①課題の抽出と整理、②対応策の検討と提案、③ネットワークの形成、④経験の蓄積と人材育成を行い、研究ガバナンスの構築を目指す。ゲノム研究現場に立つ研究者と、社会の様々な分野の人とのつながりを作ることで、研究者の対話性や社会性を高め、各課題に対する対応策の検討を促すことを考えている。今年末にもユニット初の会議が出来るように準備をしている。