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経済の元院生、ハラスメントで教授提訴 部局内での対応に問題か

2010.09.17

経済学研究科の50代男性教授からハラスメントを受けたとして、同大学院生だった女性が、7月14日付で教授と京都大学に損害賠償を求め提訴していたことが分かった。原告女性は修士課程修了後も教授のもとで時間雇用職員として働いたが、そこでもハラスメントを受けたと主張。院生時・職員時の教授の行為について、全学の調査調停委員会が「懲戒」相当と判断していたにもかかわらず、経済学研究科は「訓告」処分に留めた、と主張している。

訴状によると原告女性の主張は以下の通り。経済学研究科修士課程在籍時に指導教員だった教授から暴言を受けた。また、修士論文執筆を断念するよう迫られ、題目届けへの署名・押印を拒否された。その翌年度、修士課程を修了したゼミ生のうち原告女性だけを呼び出し、学外で2人だけの飲食につきあわせ、その後自宅に来るよう誘うといったアカデミックハラスメントを受けた。その後同研究科で時間雇用職員として勤務したが、引き続き教授から飲食につきあわせる等のハラスメント行為を受け、08年3月に同研究科を退職したという。

原告女性は退職直前の08年2月、全学ハラスメント相談窓口へ教授を被申立人として調査・調停手続を申し立てた。経済学研究科長が調査・調停委員会で成立した調停内容ないし調査・調停委員会の提示する対応案に従うことを確約したので、人権委員会ハラスメント専門委員会で調査・調停委員会の設置が決定された。同委員会は09年9月10日、教授による7つの行為をハラスメントと認定し「経済学研究科においては懲戒の手続きを開始するのが相当である」との対応案をまとめたという。

しかし経済学研究科は今年3月、全学の調査・調停委員会が認定した7つの行為のうち2つのみをハラスメントだったとして、教授の処分をより軽い訓告に留めたという。

この教授については「学生との間であった不適切な行為」を理由とする訓告処分が下されていたことが、既に報じられている。

原告女性は「経済学研究科の対応は全学の調査調停における事実認定を覆し教員をかばうもので、ハラスメント防止・対策の組織のあり方についてその期待を著しく裏切られた。長期にわたって被害救済が行われずそのことによって著しい精神的苦痛がもたらされた」と訴状で主張している。

京大全学ハラスメント窓口は本紙の取材に「個々の事案に関しては回答しかねる」とコメントしている。

教職員への処分は「注意」「厳重注意」「訓告」「懲戒」の順に重くなり、「懲戒」のなかでも戒告・減給・停職・解雇と軽重がある。