日本学術会議・新卒期間延長を提言 就職活動早期化を懸念(2010.09.16)

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日本学術会議の分科会は、昨今の深刻な就職難に対し、大学卒業生を数年間は新卒扱いにすることを求める提言を文部科学省に提出した。

8月17日付で決定した日本学術会議による提言「大学教育の分野別質保証の在り方について(回答)」では、就職できない若者に対するセーフティネットの構築のために新卒要件を緩和するべきだと述べられている。

大学生の就職活動においては、以前から大学と職業の接続が円滑に行われていない点が問題視されてきた。企業の多くは、採用基準として高度な人間性や常人離れした発想力、困難克服体験などの人間性を重視してきた。これらは大学教育との関係が薄く、教育機関としての制度的な対応が困難である。企業側が学生に対し大学教育を通じて身に付いた職業能力を問う姿勢は依然として厳しい。一方、大学側は教育を職業として結びつけて捉えることを、教育を産業に従属させることとして否定的に捉える傾向にあった。その結果、学生は大学教育を通じて自身が身に付けた職業教育をほとんど主張できない状況で、しかも結果が伴わなかった場合の受け皿もないままに厳しい就職活動に臨むことを余儀なくされてきた。2008年に国・公・私立の各大学協会3団体が就職活動の早期化を留めるよう要請書を提出したが、倫理的な側面への規制には限界があった。

これに加えて、近年は学生に対する企業の要求水準の高まり、就職活動の早期化なども相俟って学生を取り巻く状況は深刻化していると言われる。その一例が「新卒一括採用」の問題である。日本の採用活動では、一度大学を卒業した者は翌年度の卒業予定者を対象とした採用の枠組みに応募することができないという慣習が目立つ。2006年の国民生活白書では、若年既卒者を新卒扱いする企業は調査対象企業のうち22・4%に留まった。採用対象としなかった企業は44・0%、中途採用枠とする企業は29・1%となっているが、職務経験を重視する中途採用枠では就労経験の乏しい大学(卒業)生には厳しい。

今回の提言では、新卒要件の緩和を実施することにより、現在の就職活動で学生が強いられる切迫感が幾分か緩和される他、過熱化する採用活動の沈静化が図られるのではと期待されている。具体的には、大学在学中に学んだ内容と求める人材像との適合性を重視した上で課程修了後に就職活動を開始することを要望している。

この他にも、地方の大学生が大都市圏で就職活動を行うにあたり、各種の公的宿泊機関の低廉な価格での利用をしやすくするなど、宿泊費や交通費の補助制度など負担の低減を目的とした内容も骨子に含まれた。

これに対し、京大キャリアサポートセンター長の鱸淳一氏は、研究室の要望が背景にあると分析する。研究を行っている大学院生にとって、就職活動のために多くの時間を拘束されるのは、研究が疎かになることにつながるとして問題視されている。それを改善するために今回の提言が行われたというのだ。

以前からも、キャリアサポートセンターを利用する卒業生は少なくなかった。ただ、それは旧制度の司法試験受験者が不合格と判明した後に訪れるケースが中心だった。そのため、「今回の提言によって当センターを訪れる卒業生の数は多少増えると予測しているが、事情が好転するほど楽観はできない」と鱸氏はコメントしている。

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