文化

〈学生自主管理空間のいま〉 西部新BOX棟編―建設決定以降B連は何をなしてきたのか―

2009.11.20

11月である。2009年も残す所あと1ヶ月と少しとなり、ゼロ年代もいよいよその幕を閉じようとしている。この10年で京都大学の姿は大きく変化した。中でも吉田南キャンパス内におけるA号館の取り壊しや西部新BOX棟計画など、学生の課外活動スペースは劇的な変化を見せた。この10年近く、京都大学内の学生スペースはどのような変化を遂げ、これからはどのような道を歩むのだろうか。そこで、今号より「学生スペースを考える」と題した不定期連載を始め、学内の主な学生の課外活動スペースについて特集していく予定である。連載第1回目となる今回は、先日ついに建設が完了した西部構内の新BOX棟を取り上げる。(全5回の予定です)

 
ついに完成した新BOX棟

西部構内の新BOX棟が完成し、この冬から多くのサークルが移動を行う予定である。老朽化の著しかった旧BOX棟と比べて出来たばかりの新BOX棟はむろん綺麗でいかにも使いやすそうに見える。ただ、公認、非公認をも含めた様々なサークルが自分たちの自治空間を守り、ないしは作り出していけるかは建物を眺めるだけではわからない。目に見えぬものを探るため、冒頭にも述べたように今号は西部構内にあるBOXとそれを使用するサークルが抱える自治空間についての歴史と課題を考察する。

2002年の建て替え計画浮上から2007年1月末までの建て替え計画の概要は本紙2007年2月1日号にて詳しく述べられているので、今回は2007年春からの動きにふれる。



予算承認から建設 合意までの概略  
2002年から課外活動関係施設整備計画関係サークル連合、通称B連(以下、B連)と学生部の間で始まっていた西部BOX棟建て替えの審議であるが、2006年の10月に予算申請を行うことで両者の合意が成立し、新BOX建設の予算申請が行われた。 

約半年後の2007年春にこの予算案が承認され、建て替えが具体化すると、主な懸案事項は各B連加盟サークルへのBOXの割り振りと部屋面積の決定へと移った。また、新BOX棟にはB連加盟サークルが臨時で使用、ないしはB連非加盟の公認サークルが使用するための共用室が設置されることが決まっていたので、その共用室をBOX棟内のどこに作るかも含めた部屋の配置についても考えていくことになり、B連は専門のワーキンググループを立ち上げ、数カ月にわたって検討を続けた。

新BOX棟は3階建てであったが、BOXはできるだけ1階、2階にあった方が好ましいという各B連加盟サークルの要望を受け、共用室はすべて3階に作り、残る1階と2階をサークルBOXにすることが2007年6月30日のB連臨時総会で決まった。

BOXの面積については、基本的には旧BOX棟時代における各サークルのBOX面積に応じて22㎡、33㎡、44㎡のいずれかの面積が割り当てられることになったが、部屋の大きさが足りないというサークルは部屋面積拡大の要求をB連に出し、それを受けたワーキンググループが実際に各サークルの視察を行って拡大の可否を判断するなどして同年7月7日には各サークルのBOXの配置と面積が仮決定された。

仮決定の後は、一部の部屋の天井の高さの変更や、建築基準法にのっとり、西部講堂の新BOX棟に面している側の壁を耐火補修することなども追加で決まり、同年10月26日にB連と学生部及び建設業者との間での建設着工の合意が成立した。

こうして見てみると各BOXの面積や部屋の配置などの重要事項の大部分には学生の機関であるB連の意向が反映されており、新BOX棟はその計画の段階から比較的円滑に学生自治が機能していたと評価していいだろう。



共用室の管理権問題

ただ、その後に翌2008年春まで話し合われた共用室の管理権問題についてはB連側と学生部の間やB連内部でもだいぶ論争があり、必ずしもB連の思惑通りにことが運んだわけではなかった。

先述の通り共用室はB連加盟サークルやそれ以外の公認サークルが臨時で使用するための部屋であり、使用されていない時は空き部屋になるが、空き部屋状態の時の部屋の鍵をB連と学生部のどちらが管理するかが議論になった。

当初、B連側は学生による管理を、学生部は当局側による管理をそれぞれ主張し、しばらくの間議論は平行線を辿った。だが、B連側の委託という形式で学生部が鍵の管理を行うことにしてもよいのではないかという妥協案が後にB連内部でも提起されるようになる。学生側が鍵を管理した場合、学生の負担が大きくなりすぎるのではないか、なにか問題が起こった時に責任の所在が曖昧になってしまうというのではないかという懸念が指摘されたのである。

B連内での検討が続けられた後、2008年12月26日の臨時総会で共用室の鍵の管理を学生部に任せることがB連内部で決定された。

今後共用室の鍵の管理を学生部が行うとしても、それは学生部の一方的な決定などではなくB連と学生部との長時間の話し合いを経てたどりついた結論であるので、鍵の管理を学生センターが行うという点だけをあげつらって学生の自治が奪われたと即断するのは恐らく適切ではないだろう。またBOXを持たない公認サークルにとってのもう一つの主要な課外活動の場である吉田南4号館の鍵も当時から学生部が管理しているため、共用室の鍵の管理を学生部に委ねることでスペース貸し出しのための窓口が一本化され、利便性が増すという利点もある。

しかし実質的な管理を学生部という大学当局の機関が行うことによって、共用室の柔軟な形での利用や学生の自由な活動が妨げられないかという点は今後も注視すべきであるし、仮に今後大学当局による不当な管理強化などが行われ、学生が迷惑を被った場合、B連は学生の代表者たる自覚と責任をもって大学側に主張すべきことを主張せねばならないだろう。



これからの展望とまとめ

新BOX棟の共用室はB棟からE棟まで全てあわせて29室(内、会議室24、音出し練習室2、作業室3)作られた。共用室の実質的な運営は、現在B連が運営規約の素案を検討している段階であり、B連非加盟サークルによる共用室の利用が可能になるのはまだもう少し先になりそうだ。

また共用室使用者の意見集約を行う会議の設立なども含めて、B連加盟団体以外の意見を吸い上げるための体制作りも議論されている。

さらに音楽系サークルなど音出しを行うサークル専用の「音出し棟」(仮)を建設する計画もあるが、これはまだ図案すらなく各サークルの要望を集めている段階だという。

以上、西部新BOX棟について、2007年春の建設予算承認から同年10月の建設合意や、その後の共用室管理問題などの大まかな流れを追った。B連を中心とする学生の不断の努力の成果で、全体的には学生側が主導する形で進めることができた新BOX棟建設計画だが、冒頭でも述べた通り多くのサークルはまだ引っ越しを今年の冬以降に控えている段階であり、本格的な運営はまだこれからである。実際の運営がなされてゆくなかで見えてくる課題も多いと思われるが、西部BOX棟の動向は西部以外での活動をするサークルをも含め、課外活動スペースのあり方を大きく規定するともいえる。今後の西部BOX棟をめぐる動きにも目が離せない。 (47)