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松本総長、SPS(宇宙太陽発電所)語る 京大サロントーク

2009.06.23

6月9日、時計台百周年記念館1階の京大サロン内で「生存学と太陽系文明の礎―宇宙太陽発電所―」と題して、松本紘京大総長による、スライドショーを用いたサロントークが行われた。

冒頭に松本総長は、このまま人口爆発、経済発展、食糧不足、環境悪化、資源枯渇が進むと、人類の文明が維持できなくなることを具体的なデータと例を用いて説明。人類のますます増加する需要に応えるためには太陽系の開拓、ひいては新しい宇宙文化と宇宙生存圏の建設が必要であると訴えた。

次いで総長は,自身のプラズマ宇宙学における業績で、GEOTAIL(ジオテイル)衛星(1992年)による静電孤立波の研究や,MINIX(ミニックス)ロケット実験(1983年)による世界初のマイクロ波送電の成功について、金銭面や当時の若さゆえの苦労話や、観測者の立場から(ことわざ「百聞は一見にしかず」になぞらえ)「百考は一践にしかず」及び「理論家のいうことは(必ずしも)信用してはならない」という自論を交えて語った。その上で、宇宙にソーラーパネルのついた衛星を打ち上げてマイクロ波によって地球に電力を送るというSPS(宇宙太陽発電所)の構想を示し、その打ち上げの実現性や有用性、さらに経済などへの波及効果について述べた。加えて総長は、この研究で昔、テレビに出演したときのビデオを流した。SPSは、昼夜・気候に左右されず多くの電力が供給できる発電方法であり、投資回収の可能な宇宙開発である。さらに資金投資や最新のロケット開発によって宇宙への打ち上げが可能になるという。

最後に、月面開発の計画や6月2日に日本政府が打ち出した『宇宙基本計画』を取り上げて評価し、日本人がまじめであり、調和的であることを生かして、人類の生存基盤をよく議論して築いていくことを訴えて締めくくり、幕末に活躍した教育者である、吉田松陰から引用した、総長の大切にしている言葉「高志・気迫・究智」を紹介してトークを終えた。