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京都地裁 京大に約2800万円賠償命令 患者が京大病院を抜け出し自殺

2023.05.16

京都地裁 京大に約2800万円賠償命令 患者が京大病院を抜け出し自殺

京都大学医学部附属病院

京大医学部附属病院の精神科に入院中の男性が病院を抜け出し自殺した事案について、遺族が京大に損害賠償を求めていた訴訟の判決が4月26日、京都地裁で下された。池町知佐子裁判長は京大に対し、約2800万円の支払いを命じた。

判決によると、男性は2018年10月、うつ病により京大病院に医療保護入院した。男性には当初、家族同伴で外出可能とする制限がかけられていたが、入院初日にトイレの窓から外に抜け出したため、外出には医師・看護師の同伴が必要になった。

11月5日、男性は医師2名と外出することになった。医師A(仮名)は精神科での研修初日で、医師B(仮名)はAを指導する立場にあった。Bが上着を取りに行っている間に、男性はトイレに行きたい旨をAに伝えた。しかしAは男性に付き添わず、トイレの出入口が見えるホール内のソファに座って待機し、男性はその隙にトイレの窓から抜け出して外に出た。5日後、琵琶湖で男性の遺体が発見され、死因は溺死、自殺と判断された。

遺族は、医師らには男性に付き添う義務があったのにそれを怠ったなどとして、京大に対し約9300万円の損害賠償を求めていた。

判決は、カルテの記載、各種マニュアルの記述、男性が入院初日に無断離院を試みたことなどから、医師らには付添義務があったと認定した。そして、「無断離院をして自殺に至る可能性は十分に認められ、予見することは可能であるし、予見すべきもの」として、付添義務違反と自殺との間に相当因果関係を認めた。

ただし、男性の妻が病院に対し具体的な自殺の危険性を報告していなかったことなどを考慮し、医師らが男性の症状を把握することは困難だったと認定して、賠償額を減額した。

なお京大は、男性が復職することは困難だったとして、復職後の収入についての賠償は認められないなどと反論していた。しかし判決は、男性がうつ病を発症するまで他の人と同様に働いていたことなどから、復職も可能だったと認定したうえで、賠償額を算定した。

京大は本紙の取材に対し、「判決文を精査しているためコメント及び控訴方針に関しては差し控える」と回答したが、地裁によると、原告と京大の双方が控訴した。

医療保護入院は、本人の同意がなくても入院させることができる制度の一つ。現行法では、指定医の診察、家族らの同意などが要件となっている。