ニュース

同一ドナーから肝小腸同時移植 京大病院 国内初

2023.01.16

京大医学部附属病院は12月28日、脳死ドナーから肝臓と小腸を同時に移植する手術を実施したと発表した。手術は去年8月に行われた。患者は10歳未満の女児で、ドナーは脳死となった10代男性。術後の拒否反応や感染症の併発はなく、患者は12月15日に退院した。これまで2人の生体ドナーからの肝小腸同時移植はあったものの、同一ドナーからの移植は国内初。

患者は出生後から小腸の働きが悪く、点滴などで栄養を摂取していた。去年7月、小腸機能不全が原因となって肝不全を併発し、小腸と肝臓の働きが失われ、両臓器について脳死移植登録を行って待機していた。今回、10代男性の脳死ドナーから肝臓と小腸の2臓器が同時に提供可能となったため、肝小腸同時移植を実施した。

手術は、移植外科の波多野悦朗教授の指揮の下で行われ、16時間39分に及んだ。小腸は、直接外界に接して消化吸収を行う臓器のため、複雑な免疫機能を持っている。そのため移植後の拒絶反応が起きやすく、大量の免疫抑制剤を必要とする。拒否反応を抑制できたとしても感染症を併発する可能性が高く、全ての臓器手術のなかで最も実績が悪い。なお、脳死ドナーからの臓器移植が多い北米からの報告では、同一ドナーからの肝臓と小腸の同時移植は、 小腸単独移植と比べて術後成績が良好だという。現時点でその詳しいメカニズムは分かっていない。

国内では脳死ドナーの不足が顕著で、肝臓と小腸の2臓器が同時に配分される可能性は極めて小さく、今回初めて実現した。その背景として京大病院は、2018年11月から運用されている小児優先制度が寄与したと説明している。これは、肝臓の配分について、ドナーが18歳未満の場合、同じく18歳未満の希望者に優先して移植される制度。

記者会見で京大病院は、同一ドナーによる移植が普及しなかった原因のひとつが、過去の制度にあったと説明。移植治療においては、現行の医療事情が「広く認知されることで、(制度の改正に繋がり)医療がどんどん進んでいく」と述べた。