文化

学生が市政を変える 四條畷市役所インターン

2019.07.16

毎年、各地で様々なインターンが行われる。中でも、四條畷市役所では、学生が主体となって市政の課題に取り組むインターンを実施しており、他の市に類を見ない活動を実現させている。今回、インターン生で京大総合生存学館修士1回生の大木有さんに取材し、その概要をまとめた。

四條畷市では、2017年、東修平・現市長が当時28歳で市長に就任した。これまでに、副市長を公募で選出したり市内を回って市民と意見交換したりと、様々な試みに着手してきた。その一つとして、2017年からこれまでのインターンとは異なる、有給の長期インターン生の募集を開始した。市長はこのインターン事業について、「学生ならではの感性、新たな視点や自由な発想・アイデアを持った人材に活躍してもらい、市役所的な発想から脱却する重要な施策として、始動させた。」としている。

インターン生は、副市長のもとで、市政の課題をふまえて自身の興味に応じた取り組みを考案し、実行に移している。これまでに、親子で利用しやすい店舗や施設をまとめた子育てマップの作成、ふるさと納税の返礼品の拡充などに取り組んできた。このほか、市政への関心を高めることを目的に、インターネット番組「なわチャン!」の立ち上げに携わった。

現在、大木さんは、市における住生活についての課題とその解決への道筋を示す「住生活基本計画(住宅マスタープラン)」の改定のためのデータ整理に取り組んでいる。市の東部では、都市開発が進み子育て支援が求められており、一方、西部では高齢化が進みバリアフリー化が課題となるなど、同じ市内でも各地で事情が異なる。こうした状況は他の市にも当てはまるが、政策の検討に用いられる統計は、一般的に、市全体としてのデータが中心であるため、地域ごとのデータに基づいた課題に対応することは難しい。そこで、四條畷市では、大木さんが主体となり、人口動態のシミュレーションを行い、地域ごとに統計データを整理し、担当の部署と協力して必要な対応を検討している。

このインターンの魅力として、大木さんは3点挙げた。まず、市長と副市長の直轄で働けることである。市の課題について副市長と相談し、考案した取り組みを担当の部署と協力して進めるという過程を通して、市政全体を変えるチャンスがあることにやりがいを感じているという。次に、現場を知ることができる点だ。市の職員と業務を進める中で、多くの気づきがあったという。例えば、空き家の問題である。大木さんは、調査に出向き、空き家があることで地域の雰囲気が悪くなり、近隣住民の住環境も悪化させているように感じた。また、調べた空き家について、単に管理するだけでなく活用することを目指し、データベースの構築を進めている。3つ目は、自身の研究との相乗効果である。大木さんは大学院で、公共政策に用いられるビッグデータの利用について研究しており、細かい地域の状況をリアルタイムでモニタリングする手法を開発することを目指している。インターンを通して、実際にデータを使う政策サイドの視点を知ることで、研究に活かせるという。

インターンの期間は10月からと4月からの半年で、1期に3人ほど採用される。応募は市のホームページなどから可能となっている。