文化

〈雑記〉カラス襲撃、適切な対応は 尊攘堂裏で工事業者襲われる

2017.06.16

5月26日朝、附属図書館西側にある尊攘堂の裏手で、工事業者がカラスから攻撃を受けた。同日、報告を受けて現場に立ち入った警備員も同様の被害に遭った。両者とも目立ったケガは無かったという。京大は、付近でカラスが営巣している可能性があるとして、近付かないように注意喚起した。

28日夕刻、記者が現場を確かめに行ったところ、傷ついたヒナらしき個体が地面にいた。左脚が折れ、羽は乱れ、飛ぶこともできないらしい。見つけた当初はじっとしていたが、そのうちによろめきながら羽ばたいたり歩いたりもした。10㍍ほど距離を取って観察していた記者の頭上では、2、3羽のカラスが盛んに飛び回っては鳴き交わし、いかにも警戒している様子だ。ただ、巣のようなものを確認することはできなかった。

今回の件についてカラスの専門家である松原始氏に聞いたところ、「地面に落ちている巣立ち雛を、親が守ろうとしていたのではないか」という。カラスが人を攻撃するとしたらそれは巣やヒナを守るためだと考えてよいそうだ。また松原氏によると、カラスが最も攻撃的になるのはヒナが巣立つ時期だ。折しも5月から6月にかけてのこの時期に、京大周辺のカラスは巣立ちをする。攻撃を受けた工事業者も、この時期は襲われることが多いと話していた。

実際に人が攻撃されたせいか、今回の件は、大学が全学に向けて注意を促すというちょっとした騒ぎとなった。しかし、その対応は果たして適切だったと言えるだろうか。野生動物だって人と同じく、わが家や子供に近づく不審者は警戒して当然だ。巣が人通りの多い所にあったのなら危険だからまだしも、あえてそんな所に営巣するはずもなく、現場は道も通らぬ建物裏だった。それなのにわざわざ不特定多数の人間に対して周知をしてしまうと、むしろ野次馬を呼び、要らぬ被害ばかりが増えるかもしれない。カラスの方もその都度警戒する必要がある。今後、こうした場合にはそっとしておく方がお互いのためになるのではないか。(賀)