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熊取原子炉が一般公開 抗議・反対派 締め出される

2011.11.18

10月1日に京都大学熊取原子炉実験所で原子炉一般公開およびアトムサイエンスフェアが開催された。当日はフェアでの講演会をめぐってこれに反対する学生有志と原子炉研のあいだで混乱もみられた。同実験所では一般公開を毎年4月に行っているが、今年度は福島第一原子力発電所事故の対応等で延期され、10月のアトムサイエンスフェアと同時開催となった。

フェアでは放射線医学総合研究所の教授・島田義也氏の講演会が行われたが、これに対して「島田氏は御用学者であり、一般向け講演への登用は認めがたい」と主張する学生有志が講演会の中止を求め抗議行動を行った。事前に学生有志から原子炉研に宛てて、講演会の中止を求める申し入れが提出されていたためか、当日朝の実験所入口には「ビラ配布・座り込み等をされた場合は直ちに退去してもらいます」の立て看板が設置され、「ビラや横断幕が見つかったら即没収」を明示した持ち物検査も実施されるなど物々しい雰囲気に包まれた。

また抗議行動を監視するため公安警察や大阪府警10数名が敷地外に待機し、来場者へビラを撒く学生らを撮影していた。さらに原子炉研側は「駐車場がなくて困っている」という警察側の要望に応えて警察車両を敷地内に駐車させていたが、学生らが抗議したところ原子炉研側が撤収を要請し警察車両はいなくなった。

その後、原子炉研側は「島田氏講演会は一般市民向けの企画である。抗議行動に参加したと思われる者または講演会に反対するであろうと判断した者は、講演会を混乱に陥らせる可能性があるので入場禁止にする」とし、「反対派」と認定されたり整理券を配布されなかった学生ら約20名が講演会場入りを拒否された。

約100名収容できる会場に、70名程埋まった講演会で島田氏は「放射線の人の健康への影響」と題して講演。「日本人は西洋人に比べて(海草を食べているので)ヨウ素の摂取量が多くガンになる危険性は低い」、「自然界の放射線量は岐阜県の方が神奈川県より多いが、ガンの発生率は神奈川の方が高い」と述べ、最終的に「大きなことに集中し、小さなことで心配しない心構え」の必要性を説いていた。

一方講演会の最中から終了後にかけて、会場の外では学生有志による高橋千太郎副所長を囲んでの追及がなされた。講演会中止を求めた申し入れについて副所長は「教授懇談会の場で検討したが、一度実施を決定した企画であるし、わざわざ中止にする必要はない」と判断したと述べた。また「学問が政治に利用される危険性があるとの認識はあるが、われわれは淡々と科学の世界で議論しているので一つの考えとして(島田氏を呼んだ)」と答えた。

原子炉施設の一般公開も

当日は原子炉研の研究者・院生に案内されるかたちで実験用原子炉への立ち入りも出来た。放射線医療用の研究器具の説明などがされ、見学者は普段見ることのない巨大設備に興味津々の様子。原発事故前のものと思われる「地球温暖化防止に原子力発電!」のポスターがそのまま掲示してあったのも目に付いた。抗議行動などには見舞われたが、会場には近隣住民ら約300名が来場し盛況に終わった一般公開日となった。

《本紙に写真掲載》