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京大病院 脳手術で誤摘出 自発呼吸不能に 執刀医 検査結果に従わず摘出継続

2026.09.16

京大病院 脳手術で誤摘出 自発呼吸不能に 執刀医 検査結果に従わず摘出継続

記者会見で謝罪する荒川科長(左)、髙折病院長(中央)、松村部長

京大病院は8月7日、脳腫瘍の摘出手術中に誤って正常な部位を摘出する医療事故があったと発表した。患者は通常の生活を送っていたが、手術後に自発呼吸や手足の運動が困難になった。手術中に摘出部位が腫瘍ではないとの検査結果が出たものの、執刀医は自らの判断で摘出を継続した。病院側は、執刀医が経験則による思い込みから判断ミスを犯したとの見解を示しており、外部の有識者を加えて事故調査委員会を設置し、再発防止策を策定するという。

患者は50代女性で、小脳や脳幹の隣接部位である「小脳橋角部」に直径3センチほどの腫瘍があった。腫瘍は増大傾向にあり、放置すると命に関わる危険があったため、外科手術で摘出することになった。手術前の時点ではふらつきやめまいが見られたものの、問題なく生活を送っていたという。執刀医は脳腫瘍を専門とする40代男性で、手術経験は2千件以上、特に小脳橋角部の腫瘍摘出手術は約100件の経験があった。これまで医療事故を起こしたことはなかったという。

手術は7月下旬に、執刀医を含めて医師3名で実施した。全身麻酔後に頭蓋骨を開き、腫瘍と思われる部位から組織を採取した。検査では「腫瘍ではない」との結果が出たが、執刀医は「腫瘍の端部を採取したため、腫瘍が含まれていなかった」と考え、摘出を継続したという。その後、2度目の検査でも同様の結果が出たが、執刀医は「腫瘍周辺の組織を検査に提出した」と判断し、摘出が完了したと考え、約10時間で手術を終えた。立ち会った医師2名も、摘出部位の誤りには気づかなかった。

手術後、患者の意識や呼吸が回復せず、MRI検査を実施したところ、腫瘍が残存している一方、脳幹の呼吸中枢が大きく損傷していることが発覚した。これを受け、病院は行政や警察へ事故を報告したという。会見の時点ではまぶたの開け閉めで医師の問いかけに反応していたため、意識があるとみられる一方、自発呼吸は確認できず、人工呼吸器による管理を行っていた。また、手足を動かすことが困難な状態だった。

会見で、荒川芳輝・脳神経外科診療科長は「2度検査をしても、腫瘍ではないという結果が出ることはよく経験する」とし、その場合「肉眼所見や周辺の構造から腫瘍かを判断する」と述べた。その上で、今回の執刀医については「判断ミスがあったと考えている」との見解を示した。「経験から来る慢心があったのか」という記者の問いかけに、荒川科長は同意した。また、過去に執刀医が医療事故を起こしていないことを念頭に「これまでの手術と何が違ったのか、非常に不思議だ」と述べた。

松村由美・医療安全管理部長は、患者の家族に対し「切除部位の誤認は想定外の大きな事故だと説明した。ご家族としては到底許せないことだと理解している」と述べ、家族への説明を続けていく方針を示した。また、髙折晃史・病院長は外部の有識者を含めた事故調査委員会を設置し、手術時のビデオなどを確認して事故の原因を明らかにした上で、再発防止策の策定を進める考えを示した。当面の間は執刀医単独で判断せず、複数人で確認した上で腫瘍を摘出する対策を講じるという。

本紙は9月4日、▼患者の現在の容体▼障害が恒久的に残る可能性▼今後の治療の展望▼事故調査委員会の調査の経過、などについて尋ねた。病院は16日に「個別の回答が難しい」と返答した上で、適時ホームページ上で情報を公開する方針を示した。