〈展示評〉再構築の果ての風景画 小西真奈個展「風景を切り取る / Framing Landscapes」
2026.09.16
《Bay (Summer)》(2025年)(提供)
油絵具を使用した小西さんの風景画は、鮮烈な色遣いと大胆なタッチで印象に焼き付く。中でも目を引くのは、縦1・2㍍ほどの大きなキャンバスに描かれた《Bay (Summer)》である。ごつごつとした岩場に囲われた水辺の爽やかな青色が美しい。何より感嘆させられるのは、簡潔な表現によってむしろ風景のリアルさが伝わってくる点である。コバルトブルーの濃淡のみでその水の透明感がありありと伝わってくるうえ、水面に光が反射しているわけでもないのに、画面からは目を細めたくなるほど眩しい日光が感じられる。小西さんの絵に対面すると、まるでその景色をどこかで見たことがあるような気がしてくる。
そう感じる秘密はおそらく、小西さんの制作過程にあるのだろう。小西さんは実在する場所を写真に撮り、それを基に風景画を描いている。小西さんが本展に寄せた文章には、カメラレンズを通した別の視点が加わることで、「気づかなかった視覚的な面白さ」を発見するとある。小西さんが描くのは現実の場所でなく、小西さんの頭の中で再構築された場所である。この再構築こそ、まさに「ほどいて、束ねる」作業だ。具象と抽象の狭間にある場所、だからどんな人が観ても「見たことがある」気がするのだろう。小西さんの風景画は、人々の思い出の中の風景だ。
入口右手に飾られた《Untitled》(2025)では、濃緑に交じって蛍光色のような目を引くピンクが植物を縁取る。小西さんの風景画では、よくこのピンクが登場する。自然界では滅多に見ない色だが、その絵の中では不思議と調和し、鮮やかな水の青や木々の緑をさらに輝かせる。リアルに描こうとするのではなく、あくまで小西さん自身の受けた印象や感覚を描こうとしていることがよくわかる。
8月19日、ギャラリーでは小西さんと作家・原田マハさんのトークイベントが開かれた。本展は、美術に通暁した原田さんが千總ギャラリーの年間テーマを受けて小西さんを推薦したことで実現した経緯を持つ。原田さんは、小西さんの作品には「描かれていない空間を脳内で補完する日本美術の特徴を感じる」とした上で、「真奈さんの作品の優しい磁力に取り込まれていくのは安らぎの時間」と語った。小西さんは再構築というテーマについて「色や形がおもしろくて、ここら辺気持ちいいな、と思ったところを説明しすぎずに描くことが大事」と述べた。
会期は10月6日まで。休館日は水曜。入場無料。(燈)

